33.文化祭実行委員の訪問<権力の犬達の襲撃>
「はぁー」
部室で二人っきりな中、俺は目の前の紅に気付かれないように溜息を溢した。ダンスのオーディションは結局中村達の優勝だった。俺達のダンスは白石さんの評価こそ最高だったのだが、もう一人の男の方には不評だったようだ。
でも中村達の優勝っておかしくない? 男と男だよ、お前ら優勝したけど付き合うのかよ? ジンクスはどうなるんだよ!! ちなみに学校内ではそこそこ話題にはなっており、注目を浴びているようだ。恵理子が二人のカップリングのイラストはそこそこ売れるとか言ってたしな。
でもなぁ、俺は優勝して紅に告白をしたかったのだ。今の関係も心地よいけれど俺は一歩進みたかったのだ。告白するきっかけとかないだろうか……またデートに誘ってみるしかないのかもしれない。
「ん、どうしたの、私をそんなに見つめて……あ、これはあげないわよ」
俺の視線に気づいた紅は弁当を俺から隠す。確かに紅の弁当は美味いが奪ってまでは食べないぞ。てか弁当を食べてる紅も可愛いな。
「いやー、美味しそうにご飯を食べてる紅も可愛いなって思って」
「ふん、私が可愛いのは当たり前でしょう、煽てたってなにも出ないわよ、あ、実はクッキー作ってきたんだけど食べる?」
「食べるー!!」
満更でもなさそうな笑顔を浮かべた紅から、蝙蝠とペンギンの形をしたクッキーを貰う。スマホの通知に気づいた俺は少し甘めのクッキーの味を楽しみながらスマホに目をやった。
レディパール:オーディションぶりー!! 先輩が如月君の事を探してるんだけど今どこいるのかな?
俺:え、天文部の部室だけど……
レディパール:オッケー、今から行くね、文化祭の展示の事で話があるんだってさ。このままだと天文部がなくなっちゃうよ。なるべく遠回りして行くから、展示物の提出が遅れた言い訳考えておいてね。
「うげ……」
俺はライン画面を見ながら呻く。そういや、去年の展示物じゃだめだって警告されていたのをすっかり忘れていた。ダンスの練習で忙しくすっかり後回しにしていたのだ。
「一体どうしたのよ、魔女狩りにでもあったような顔をして……」
「これをみてくれ……部室がなくなるかもしれない……」
俺のスマホをみた紅の表情はなぜか険しくなっていき、拗ねた顔になった。え? なんでだよ。この文章に不機嫌になる点あった?
「さすが騎士様ね、えっちゃんといい、女の子の友達が多いみたいでうらやましいわ。私なんて同世代の男性の友達は神矢くらいしかいないのに……」
「いや、違うって。俺もそんなに多くないし……紅だって沖田や、安心院とかと話してるだろ」
「沖田は中学生の後輩といつの間にか仲良くなっているロリコンな不審者で、安心院は黒い覆面を被って襲ってきた変態ってイメージしかないんだけど、友達って言っていいのかしら……」
「やめろよ……俺の友達が変態ばかりみたいじゃないか……」
あれ? よく考えたら俺の男友達ろくでもないやつしかいなくない? 他の連中も中村は女装癖があるし、妻田はこの間398人目に告白してふられたっていってたな。666人目は悪魔に告白しようっていったらまじで怒られた。
類は友を呼ぶっていう言葉が浮かんできたが頭を振ってかき消す。違うな、凡人では黒竜の騎士である俺についてこれないだけだ。決して俺は変態ではない。
「それで……このレディパールっていうのは誰なの?」
「紅も会ったことあるぞ、この前のオーディションで審査していた白石さんだよ」
「白石……白い石……真珠……パール……? でも真珠って貝の体内から生成されるから石とは違うんじゃないかしら」
「中学の頃の俺は無知だったんだよ……」
それにしてもさすが紅である。当時の俺の思考を一瞬で見抜きやがった。最高過ぎない? このままでは好感度がカンストしてしまう。
「何よ、気持ち悪い笑みを浮かべて……」
「いや、紅と再会できて本当によかったなって喜びをかみしめてるんだよ」
「何言ってんのよ……私だって再会できたのは嬉しいけど、なんでこのタイミングでそんなこと言うのよ……」
顔を真っ赤にした紅をみて可愛いなぁと思う。やべえな、このまま勢いで告白してしまいそうだ。俺の想いはノックの音によって打ち砕かれた。げっ、あいつらか、紅が可愛すぎてすっかり忘れていた。
「文化祭実行委員の天草だ……ってなんじゃこりゃあ。魔女の屋敷かよ」
「わー、すごい。この部屋だけファンタジーの世界みたいですね、先輩!!」
扉を開けて入ってきたのはダンスオーディションの時の審査員をしていた男の先輩と白石さんである。目をキラキラと輝かしている白石さんと違い、天草先輩のこの部屋の評価は最低なようだ。しかし、一目で魔女の領域とわかるとはこの男中々やるな。
久々の投稿になってしまいました。
よろしくお願いします。




