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28.赤坂さんの悩み相談<射主の苦悩>

「大丈夫だよぉ、もうわかったよぉ……」

「そうだよな、安心院はいいやつだよな」



 赤坂さんを部室に連れて行き俺達はまず安心院のどこがいいかを聞いたのだが一時間ほど延々と語られたのだ。なにこれ……気が狂うかと思ったわ……この子は重症だぁ……



「くっそこんな拷問だとは思わなかったぜ……」

「君が言うかなぁ、カフェで朱と一緒に紅さんに関して同じ様なことしてたの覚えていないのかい……」

「何言ってんだ、俺の言う紅の良いところは事実だが、赤坂さんの言う安心院の良いところは虚実の混じった妄想だろう?」

「五十歩百歩って言葉知ってるかなぁ……」



 俺達はこそこそと話しながらげんなりとした顔で赤坂さんをみる。彼女は安心院の話をして満足そうな顔をしている。好きなものを語るとテンション上がるよな。安心院の良さは理解できないけど。



「まあ、それで赤坂さんは安心院と付き合いたいんだよね? なのに異性としてみてくれないと」

「ええ、まあそうなるわね……できれば付き合いたいし、その……文化祭とか一緒にまわってみたいし、クリスマスだって一緒に過ごしたいし、なんなら結婚して素敵な家庭を築きたいし、将来的には子供も二人ほど欲しいわね。男の子と女の子一人ずつがいいかなって思ってるの」

「あ。そうなんだ……」



 そういうと赤坂さんは可愛らしく頬を赤らめた。普段しっかりしてそうな人だからギャップがすごい。でも愛が重いな、もう一生添い遂げるつもりじゃん。将来設計完成しているじゃん。



「そうだなぁ……じゃあ、王道だけど嫉妬作戦とかどうかな。僕が安心院の目の前でダンスに誘うよ、安心院を焦らせよう」

「お、さすが沖田、汚い事を考えさせたらナンバーワンだな」

「さすがね、沖田、剣道部の人から聞いた手段を選ばないクソ男の異名は伊達じゃないわね」

「素直に褒めてくれないかなぁ、神矢にも協力してもらうからね、あと赤坂さん。あとでそれ言ってたやつ教えてもらっていいかなぁ。話し合うから」

「まあ、乗り掛かった舟だしいいぜ。その……赤坂さん一生懸命だしな」

「二人ともありがとう。私がんばるわ」



 俺達の言葉に赤坂さんは頭を下げる。ちょっと気まずいところをみてしまったし、多少手伝うくらいならいいだろう。あと放っておいたら暴走しそうじゃない?

 俺達は沖田の作戦を成功させるために軽い打ち合わせをしてからRzK会が勝手に使用している教室へと向かう。紅にもラインを送ったし、あとは安心院と赤坂さんにペアを組ませるだけである。



「だから早く脱げといっているんだ!! これは王の命令である!!」

「なんでだぁぁぁぁぁ、その発想はおかしいよぉ」



 何がおきているんだ? 俺達が急いで教室の扉を開けると涙目の中村が安心院に無理やりズボンを脱がされていた。そして机の上には女子のスカートが置いてある。ここは魔界かな? 俺と沖田、赤坂さんはお互い顔を見合わせうなづいた。何もみなかった、俺達は何もみなかった。あまりのもてなさに男でもいいやってなってしまったんだろう……



「今日は確かコンビニのポテトが半額らしいよ、放課後に行かないかい?」

「いいな、その……赤坂さんも行こうぜ?」

「男に負けた、男に負けた……そうよね……男がいいなら私に勝ち目なんて……」



 安心院のやつは股間蹴られて頭まで悪くなってしまったのだろうか、まあどうでもいいや。とりあえず紅にはラインしておこう。



「ちょっとまてぇぇぇぇぇ」



 俺が閉じたドアが乱暴に開けられた。何やら息を荒げている安心院が現れた、お楽しみを邪魔されたから怒っているのだろうか? どうでもいいけど学校でそういうことするなよ、やべえやつだな。



「貴様ら何か勘違いしているだろう? 我々はダンスを踊ってくれる相手がいないから、中村に女装をして男同士で踊ることにしただけだ。何もやましいことはしていないしルール違反もしていないだろう!!」

「うう……汚されたよぉ……」

「確かにルール違反じゃねえけど、気が狂ってるって自覚はないのか?」



 何かつっこんだら負けな気がしたのでズボンを握りしめながら泣いている中村は無視をしよう。それにしても男同士でダンスとかさすが安心院だ。正気の発想じゃねえ。確かにルール違反ではないがそんなんで勝てるはずないし、運営もそんなあほが現れることは想定していないんだろう。

 沖田が俺に視線で合図してきた。煽れという事か。



「無様だな、アーサー。俺は彼女とダンスに出るというのに、お前は男同士でダンスか? モテない男は哀れだなぁ」

「モードレット!! 裏切った上にこの俺を侮辱するか!! 絶対に許さんぞ。中村女装のレベルをあげるぞ!! メイクもするんだ」

「いやだぁぁぁ、どうせならお金をはらってでもいいから女の子と踊りたいよぉぉぉ」



 そっちじゃねー、なんであくまで女装にこだわるんだよ、赤坂さんにもう一回頼めよ。俺が頭を抱えていると絶叫している安心院が哀れだったのか赤坂さんが声をかけた。



「安心院君、大丈夫? ウチが一緒に踊ってあげようか?」

「安心院が赤坂さんと踊らないなら僕が踊ってもらおうかなぁ」

「本当か赤坂!! この借りは必ず返すぞ!! 正直、中村の女装とか気持ち悪かったんだ」

「君がやれっていったんだろ。ぶっ殺すぞ!!」



 ちょっと待って? 赤坂さん口調が変わったんだけど、表情もいつものクールな感じからなんか元気溌剌っていう感じになっている。まるで別人である。

 あきらかにおかしいのに、周りをみてもみんな気にしていないようだ。何なのこれ? 違和感感じてるの俺だけなの? もしかして二重人格なのか? かっこいいじゃん。悪くないな……むしろいい。俺の中の赤坂さんの好感度が上がった。



「スイッチって知ってるかい? スポーツ選手に時々いるんだけど、自分を落ち着かせるためにもう一つ人格を作って落ち着かせるのさ。それが『コート上の射主』たる彼女の才能だよ、どんなピンチでもスパイクを決める強さがそこにある。今回はダンスに誘うのによっぽど緊張したんだろうねぇ」

「本来はすごいことをしているはずなのに、今は才能の無駄遣い極まりないな」



 当初と予定は多少変わったが、まあいいんではないだろうか、このままでは地獄すぎるし、中村がかわいそうすぎる。

 赤坂さんのセリフに安心院が嬉しそうな笑顔を受かべ感動のあまりか手を握った。赤坂さんは握られた手をみて顔を真っ赤にしている。なんでこれで赤坂さんの好意に気づかないんだよ……

 俺のポケットの中でスマホがなって紅から返答がきたようだ。俺もダンスたのしみだなぁ。







               ---------------------------



 昼休みに私はえっちゃんと教室でお弁当を食べながら談笑していた。今日は神矢と絡まなかいようにしたからか、だいぶ落ち着いてきた。あれは悪夢だもの。覚えていないふりをすればいいわよね。ちょっと悪いことをしてしまったので、放課後クレープでもおごってあげよう。私は携帯が鳴ったのでラインを確認する。



 黒竜の騎士:後夜祭でダンスを一緒に踊ってほしい。一緒に代表を決めるオーディションに参加してほしいんだ。



 そういえばそろそろ文化祭か、偽装カップルなのだしそれくらいしないと怪しまれるものね。決して神矢と踊れて嬉しいというわけではない、ううん、ごめん嬉しいです……



「どうしたのよ、にやにやしながらスマホみて。神矢から何かきたの?」

「別ににやにやなんてしてませんよ。神矢に後夜祭のダンスを一緒に踊ってほしいって言われたんです。なんか代表を目指したいって」

「へー、あいつ積極的ねえ……」



 私の言葉にえっちゃんはなぜかにやにやとからかうような笑みを浮かべる。え、だってダンス踊るだけでしょ? カップルなら当たり前じゃない? それともダンスに何か魔術的な要素でもあるのかしら。



「あー、さっちゃんは知らないのね。後夜祭でのダンスには特別な意味があるのよ。代表に選ばれると付き合っていない二人はカップルに、付き合っているカップルは結婚できるっていうジンクスがあるのよ。つまり神矢からプロポーズをうけたってことね」

「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ」



 え、ちょっと待ってどういうことかしら。私は軽い気持ちでオッケーのスタンプ押しちゃったんだけど……この前の動画のやり取りが思い出される。これはまさか私の「大好きだにゃー」への返答だったりするのかしら、それとも考えすぎなの……?

 そのあとえっちゃんが何かいっていたが頭に何も入らなかった。私は胸をどきどきさせながら放課後を迎えるのであった。


 


サブキャラの恋って報われるかどうかわからないから好きなんですよね。

というわけで安心院と赤坂さんの話です。


イシュタル爆死した作者頑張れよって思った方、作品面白いなって思った方ブクマや評価、感想いただけると嬉しいです。最近感想くださる方いてすごいモチベがあがります。ありがとうございます。

もう少しで3400ポイントなのでがんばります。


次回の更新はちょっとバタバタしており月曜日になってしまうかもしれません。よろしくお願いいたします。



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― 新着の感想 ―
[良い点] アーチャーはアーサーを射止めることができるか? ですかw いいやつなんだと思うがちと気がおかしいもんなw [気になる点] 今回「時止め」が無かった件w [一言] 沖田とえっちゃんは腐界で踊…
[気になる点] 赤坂さん、不遇過ぎませんか… [一言] 大丈夫。 あといちまんえんつっこめばでるかもしれない。 出ないかもしれない
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