26.ハロウィンパーティー3<魔女たちと騎士の饗宴>
「トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃいたずらをするわよ」
「いたずらでお願いしますわ、紅姉さま!!」
「だからあんたもお菓子持ってきてるでしょ、なんでみんないたずらを選ぶのよ!!」
猫耳をした紅にゾンビメイクの朱が甘えている。ごめん、ゾンビメイクがリアルすぎてまじで食欲うせるんだけど。それにしても朱め、あえていたずらを選ぶなんて情けない奴だな。これだから所詮眷属どまりなんだよ!
食事も終わりみんなが持ってきたお菓子と魔女鍋を食べながら部屋を真っ暗にしてホラー映画をみることにした。恐怖の感情が悪霊を呼び寄せる力になるそうだ。映画館ほどではないが紅の部屋は髑髏などもあり、ちょっと怖いな。
「これ入れたら結構おいしそうね、神矢が持ってきたお菓子を魔女鍋にいれてもいいかしら」
「おお、確かにクッキーだからあうな」
「黒竜の騎士ばかりずるいですわ、私の持ってきたお菓子も入れてください」
「お前、チョコ鍋にチョコ入れんじゃねーよ、わけわからなくなるだろ」
「映画の声が聞こえないでしょ、二人とも静かにしなさい。あとチョコ鍋じゃなくて魔女鍋といいなさい」
俺と朱がギャーギャー騒いでいると紅があきれたように言った。紅の声に大量のウイスキーボンボンを鍋に入れていた朱が少ししゅんとする。黙っていれば可愛いのに……いや、可愛くないなゾンビだからな。俺達はお菓子をつまみながら映画に集中する。隣に座る紅をみていると複雑な顔で画面をみている。朱はゾンビで表情がわからねえわ。お約束の怖がって抱き着いてくるというパターンは望めなさそうである。俺達は魔女鍋を食べながら映画をみる。なんか酒臭いんだけど。朱がウイスキーボンボンいれまくったせいだろうか、これ酒弱い人だと酔ってしまうのでは? いや、酒飲んだ事ないけど。
画面が暗転して、そろそお化けが出てきそうだ。
「きゃーーーーー」
「うおおおおおおお!!!!!」
朱が抱きついてきた。ゾンビ顔で……俺は映画より朱の顔のほうが怖くて悲鳴を上げてしまった。暗闇からいきなりゾンビに抱きつかれたらびびるわ。やわらかい感触があるがいまは嬉しくない。
「おーい、離れろよ」
「……」
返事はないただの屍のようだ。いや生きてるけど。うっそでしょ、恐怖で気絶する人はじめてみたぞ。ためしに頬をぺちぺち叩くが反応しない。
「紅ベット借りてもいい? 朱を寝かせるわ……」
「むーーーー」
え、何だって? 紅がいつも発しないような声を上げた。しかもすっごい唇を尖らせている。え、どうしたの? 俺なんかやった。てか拗ねてる猫耳紅可愛い。
「ねえ、神矢さっきから朱ばっかり構ってない? 今も抱き合ってるし……私も構いなさいよ。」
「え……紅さんどうしたの……?」
そういって紅は俺の正面で上目遣いに甘えるように俺をみつめた。いつもとは違う紅の様子に俺は思わず敬語になってしまった。映画のシーンはちょうど登場人物がエッチな事をしている。多分こいつらしぬんだろうな……いや、今はそんなことはどうでもいい。
「この前私がしてあげたように膝枕をしなさい。それで許してあげるわ」
「え、別にいいけど……」
「やったー」
そういうと紅は俺の膝に寝転がった。一瞬香るのはいつもの甘い匂いと酒の匂いだ。ん? 酒の匂い? まさか紅のやつウイスキーボンボンと魔女鍋で酔ったの? 酒に弱すぎない? 朱の持ってきたウイスキーボンボンの箱をみるともうなくなっていた。
「紅お前ウイスキーボンボンどれくらい食べたんだ」
「あなたはこれまで食べたパンの数を覚えているのかしら」
なんか時を止めそうな悪役みたいな事を言い始めた。やめろ、時止めネタは俺に効く。自分で言ってて死にたくなってきたぜ。
「お前まさか酔ってる?」
「よくはわからないけどちょっとフラフラするけど気持ちいいのよね。てかあんたのひざ硬いわね。やっぱり男の子って感じがする……」
完全に酔ってるじゃねーかよ。てかひざの頭ぐりぐりしないでくれ……俺の内なる黒竜の力が暴発してしまう。いや、本当にやばいって。素数を数えるか? いや、朱のゾンビ顔をみて心を落ち着かせられる。俺は内なる黒竜の力が収まった事に安堵した。
それにしても紅は酔うと甘えん坊になるようだ。せっかく酔ってるんだし、ちょっとためしてみよう。
「紅ちょっとにゃーって言ってみて」
「別にいいわよ、にゃー。これでいいの ?」
ノリノリである。ちょっと調子に乗ってみるか。くっそ可愛い、だけどおちつけ黒竜!!
「語尾ににゃーってつけたまましゃべってみて」
「わかったにゃ、これでいいのかにゃ」
「うおおおおおおおお。やばい、俺の黒竜が暴走してしまう」
なんていう破壊力だ。これが黄泉の魔女の魅了の魔法なのだろうか? やばすぎる。しかし、紅は本当に正気ではないようだ、だから俺は気になっていた事を聞いてみる。
「なあ、紅は俺の事をどう思っているんだ?」
「どうって……頼りになるし、気があう盟友だにゃ。本当に神矢と再会できてよかったとおもってるにゃ。転校して早々友達もできて楽しく過ごせて感謝してるにゃ」
「そうか、なんか改めて言われると照れるな……そういってもらえると嬉しいよ」
「うん、だから大好きなんだにゃ」
「はっ!?」
え、今紅は俺の事を好きって言ったのか? いや、待て、好きといっても種類はたくさんある。盟友として好きなのかもしれない。異性としてとは限らないのだ。でも今なら聞けるんじゃないのか? 俺は紅の無防備な横顔をみる。その顔は俺を本当に信頼しているかのようで……
だから俺は聞かないことにした、決定的なことは聞かないことを選んだのだ。おそらくこのまま聞けば紅は答えてくれるだろう。だがそれはちゃんとした方法で聞いたわけではない。間違った方法で彼女の答えを聞いて俺は胸をはれるだろうか? 答えはノーだ。黒竜の騎士として、男としてそれは絶対やってはいけないことだと思う。
「料理美味しかったよ、紅」
「……」
話をふったら寝ていた。このままでは心臓がもたなかったからちょうどよかったか、でもどうすりゃいいんだよ。身動きとれないんだけど。俺が途方にくれてるとドアの隙間からこちらをみつめている目と視線があった。え、誰? 本当に悪霊がきたの?
「あ、ばれちゃった。忘れ物とりにきたんだけどおもしろかったんでつい……」
そこにいたのはスマホで動画をとっているらしき紅の姉さんだった。え、まって。どこから聞かれてたの?
「あ、続けてていいよ。その年でハーレムとは末恐ろしいね」
「違うんです、これには色々事情があるんです。てか助けてください」
「本当にきにしなくていいのに……後、君のは黒竜っていうよりワイバーンだと思うよ」
この人俺のどこをみていってるんですかね? さすがに女性二人が寝ているところにいるのは申し訳ないのでベットに寝かせて俺は帰宅することにした。片づけを任せてしまったが人の家のものを勝手にいじるわけにはいかないしな。こうして紅のコスプレと可愛い紅の姿をみて俺のハロウィンは終わったのだ。しかし、大好きか……酔った状態だったがどんな気持ちでいったんだろうな……
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『紅ちょっとにゃーって言ってみて』
『別にいいわよ、にゃー。これでいいの?』
『語尾ににゃーってつけたまましゃべってみて』
『わかったにゃ、これでいいのかにゃ』
『うおおおおおおおお。やばい、俺の黒竜が暴走してしまう』
『なあ、紅は俺の事をどう思っているんだ?』
『どうって……頼りになるし、気があう盟友だにゃ。本当に神矢と再会できてよかったとおもってるにゃ。転校して早々友達もできて楽しく過ごせて感謝してるにゃ』
『そうか、なんか改めて言われると照れるな……そういってもらえると嬉しいよ』
『うん、だから大好きなんだにゃ』
『はっ!?』
目を覚ましたらいつのまにか神矢は帰っており、何故か隣に寝ていた朱を帰し、片づけを終えて一息ついていたのだが、私は帰宅してきたおねえちゃんに突き出されたスマホの動画をみて絶句した。なんなのかしら。この地獄絵図……
「お姉ちゃんこれ……嘘よね……」
「これは全て真実にゃ、ノンフィクションにゃ」
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私は顔を真っ赤にして絶叫した。え、確かに途中から記憶があいまいだったし、神矢の先に帰宅してすまないっていう内容のラインも何かよそよそしかったのが気になってたけど……え、何これ? にゃーって何よ。馬鹿じゃないの?
「てか私告白しちゃってるじゃないの!!」
「まあ、いいんじゃないかにゃ? もう付き合ってるんでしょ? 彼氏君も嬉しそうだったしあんたの好感度上がったと思うにゃ」
「その語尾やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ハロウィン……なんて恐ろしいの……これは悪霊の仕業に違いないわ。死者の力を手に入れようとした私への天罰に違いない……というかそうでも思っていないと羞恥で死ぬ。
「お姉ちゃん、ちょっとお祓い言ってくるわ」
「いや、あんたの場合はお酒にかかわらないようにするのが一番じゃない」
「あ、この動画を彼氏君に送ってもいい?」
「いいわけないでしょぉぉぉぉぉ!!」
そうして私のハロウィンは終わった。翌日の一緒に登校は神矢の顔をみる勇気がなかったので無しにしてもらったのだが、気を悪くしてないかしら……でも、少し時間を置かないと恥ずかしくって神矢の顔をみれないのよね……
ハロウィンパーティー編いかがだったでしょうか? 紅が猫なのは別にFGOのイベントでタマモキャットが出ていたのは関係ないです。ゲームしていてニャってかわいいなとか思ってないです。
面白いなって思ったり紅可愛いなって思ったらブクマや、評価、感想いただけると嬉しいです。
あとはレビューとかももらえるような作品を頑張って作りたいと思います。これからもよろしくお願いします。