24.ハロウィンパーティー<魔女たちの祝宴>
天文部の部室で俺達はいつも通りお昼を食べる。今日は俺の当番だったためあんまり美味しくはないが紅は本当に幸せそうに俺のが作ったトマトたっぷりのミートソースのパスタを食べている。やはり、恵理子に料理を習うべきだろうか……
紅をみてると彼女がニコッと笑い口を開いた。
「明日はちゃんと覚えているわね」
「ああ、もちろんだ。紅の家でハロウィンパーティーをするんだろ?」
「ええ、ハロウィンですもの、住処を追い払はらわれた悪霊たちがたくさんいるはずよ。だから私はその悪霊を迎え入れようと思うの。私もしないし、仮装はしなくいいわ。でも、お菓子はもってきてね。いたずらされるわよ」
「えー、紅仮装しないの?」
紅になら悪戯されたいなぁと思うが素直に言ったら引かれそうな気がしたので黙っておくことにした。ハロウィンパーティーか……ここ数年で仮装のイベントとして有名になったが、元はケルトの祭りである。確か秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事との事だ。
紅は追い出された悪霊の自分の部屋に集め魔力を高めたいとの事である。魔女っぽくていいな。黒竜の騎士たる俺も念のために悪霊対策の愛剣とお菓子を持っていこうと思う。ああ、でも仮装は無しかぁ。紅のコスプレみたかったな。魔女とか絶対にあいそうなのに……
「何よ、その目……仮装してほしいの? 『どうしてもみたいです、紅様』って土下座したらいいわよ」
「どうしてもみたいです、紅様」
「はやっ!! 黒竜の騎士としてのプライドはどうしたのよ!?」
俺はすぐに土下座をした。好きな子の仮装だぜ。騎士のプライドなんぞ即座に捨てたわ。そんな俺を紅はあきれたようにみつめた。
「まあ、いいわ……それで食べたいものとかあったら教えてね、できる限りリクエストは受けるわよ」
「そうだな、ユグドラシルの葉に、血の滴るドラゴンの肉、神に祝福されし小麦の塊と、聖女の生き血、ジャックオランタンの残滓がいいな」
「ふんふん、サラダにステーキ、パンにトマトスープ、最後はパンプキンパイでいいかしら。それくらいなら作れそうね。楽しみにしてなさい」
やったー、紅の手料理だー。そうして俺は紅の仮装を楽しみにハロウィンパーティーへのモチベをあげるのであった。すっげえ、楽しみ!
お土産のお菓子は持った、失礼のないようにそこそこしっかりした服できたし、悪霊除けに黒竜の騎士の剣も持ってきた。準備よしだ!! 俺は気合を入れて紅の家のチャイムを鳴らす。この前は紅に連れられてほとんど流れできたが今回は正式な招待だ、緊張する。
「はーい、いま出ます」
「あの、本日は田中さんにお呼ばれした。如月と申します」
堅苦しかったかなと思いつつ、俺は玄関を開けて出迎えてくれた女性にお辞儀をする。確か紅がおねえちゃんとか呼んでいたな。まるで紅が大学生になったらこうなるんだろうなぁ、と想像つくような綺麗な女性だ。胸以外……いや、別に巨乳が好きというわけではないよ、いや、まじで。この前のDVDも知的好奇心
からだしな。時止めだって別にえろい目的じゃなくて、そう……魔法を探して黒竜の騎士としての力を高めるためだしな。いや、まじで。
「あ。君は確か時……じゃなかった、幸子の彼氏君だね。色々話は聞いてるよ。上がってー。あ、その剣は邪魔だから傘立てにでも置いといてね」
待って、あの人、今俺をみて時って言わなかった。俺の名前には時って文字はないんだけど……話を聞いているって何を聞いてるんだよ。俺が聞きてえよ。あと俺の呪剣<ファフニール>は傘じゃないんだけど……
「お邪魔しまーす」
「もうちょっとで準備が終わると思うからここで待っててね。コーヒーでいいかしら」
家に入った俺は紅の部屋ではなくリビングに通された。綺麗に手入れがされている普通のリビングだ。厨二要素は一切ない。魔女の屋敷であることの隠蔽は完璧だな。俺は素直に出されたコーヒーに手を付ける。
「それで二人はどこまでいったのかしら?」
「はは、お互い奥手なもので何にもしてませんよ」
「へぇー、結構冷静ね」
にやにやと意地の悪い笑みを浮かべているお姉さんに俺は余裕をもって答えた。ふっ、黒竜の騎士たる俺は何冊も読んだラノベによってこういう会話が来ることくらい想定しているんだよ。
不敵な笑みを浮かべながら返答する俺が不満だったのかお姉さんは少しつまらなそうな顔をして唇を尖らせた。ここらへん紅と似ているなぁと思う。
「お姉ちゃんここに入れといた、私の黄泉の魔女<ハロウィンVer>の衣装知らない? 代わりに変なの入っているんだけど」
「ああ、あの変な服ならこっちにあるわよ。返してほしかったらその衣装きてこっちに来なさい」
「また変な事を言って……早くしないと神矢が来ちゃうじゃない。」
「そうね、あんた朝から料理とかがんばってたもんね。早く愛しの彼氏が来るといいわね」
「うっさい、お姉ちゃんの馬鹿!!」
廊下の方から紅の声が響く。あれ、紅は俺がいるってしらないのか? お姉さんをみると意地の悪い笑みを浮かべながら口元に人差し指を立てている。
「もー、これで満足……えっ……えっ……」
「やあ……こんにちは……」
やってきたのは頭に猫耳のカチューシャをして、ビキニの水着のような体のラインがピタッと出る胸のみを覆う上着にしっぽ付きショートパンツを着た紅だった。ちょっとエッチだ。
俺をみると瞬時に顔を赤らめた自分の部屋に戻っていった。
「ふぁぁぁぁぁぁ、なんでもういるのよ、馬鹿!!」
「あー、面白かった」
唖然としている俺と慌てて出て行った紅をみてお姉さんは大爆笑していた。
「改めてようこそ。うちの妹は可愛いでしょう? あの子は言ってないかもしれないけど今日両親はいないし、私も友達の家のハロウィンパーティーに行くからって誰もいなくなるけど変な事したらだめだからね、彼氏君」
魔女の姉はもっと意地の悪い悪魔のようだ。彼女はまるで英雄を破滅に導く悪魔のような笑みで俺にいった。これどう考えても俺をからかってるじゃねーか。でも紅のちょっとエッチな恰好がみれたから悪くない……むしろいいな!!
ハロウィンパーティー編です。日程は少しずれてしまいましたね……
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