23.恵理子と幸子<腐界の女王と黄泉の魔女の邂逅>
「これには色々事情があるんだよ」
「ふーん、女の子にキャーキャー言われてにやにやしてていいご身分ね。どんな事情かしら。まあ、私には関係ないんだけど」
うおおおおおお、なんだこれ、なんだこれ。別に写真撮られただけで特に悪いことをしたわけではないのにむっちゃ罪悪感を感じる。あと単純に紅がこわい。こいつ魔眼でも使えるのかな。目力がやべえよ。沖田に手助けを頼もうかと思ったがいつのまにか姿を消している。あいつ肝心な時に使えねえ……
「それより紅はなんでここに?」
「話をごまかしたわね……まあ、いいわ。朱の趣味に付き合ってここに来たのよ……買い物を手伝わされているの……」
紅の姿をみるとメモを片手に何冊か本を買ったようで大きい袋を持っている。心なしか顔に疲れも見える。こいつもこいつで苦労してるんだな……そんなことよりこれだけは言わなければいけないことがあった。
「今日恵理子がブース出してるから気をつけろよ」
「げっ、えっちゃんもいるの……今日は絶対会いたくないわね……」
今日の紅はワンピースという服装こそまともだが朱が一緒だからな。三人が遭遇したところを想像すると地獄絵図である。紅も同じ想像をしたのか顔をみあわせてお互い渋い顔をした。そして笑いあう。少し機嫌も直ってきたかな。もう少し話をしていたいが、そろそろブースに戻らなければいけない時間だ。紅に別れを告げ去ろうとすると服の袖を引っ張られた。
「その……さっきは意地悪な事いってごめんなさい。なんか胸の中がもやもやしちゃったのよね……」
うおおおお、上目遣いで謝ってくる紅可愛すぎない。これで許さない。なんて言える奴は人間じゃねーよ。もちろん俺は黒竜の騎士とは言え人間なので即座に許すことにした。
「大丈夫、気にしてないよ、俺も知らん女の子ににやにやしてみてて気分悪いよな。ごめんな」
「ありがと……でも悪いと思ってるのね、じゃあ、今度のお弁当作るとき私の好物作ってよ、血の滴るものが食べたいわね」
さっきの恐ろしい顔とは反転して意地の悪い顔を浮かべおねだりをする紅。なんか今日の紅小悪魔みたいに揺さぶってくるな。可愛い。好物はトマト料理か……なんか簡単なやつにできそうなやつを調べておこう。ちょっとがんばってみるぞ。
紅が「お姉ちゃんの言う通りにツンデレ作戦をしたけど効果あったかしら」とかつぶやいていた気がするが気のせいだろうか、俺は改めて紅に別れを告げブースに戻った。ちなみに沖田は紅に気づいたので俺達のやりとりを遠くでにやにや見ていたそうだ。ぶっ殺してやろうかと思った。
「あと一冊ね。あんた達のおかげよ、ありがとう」
「もうちょっとだねぇ。なんだかんだ疲れたなぁ」
ブースに戻った俺達はあれから後も売り子を続け、だいぶ終了時間が迫ってきてこともあり一息ついた。
「すいません、読ませてもらってもよいかしら」
「はい、どうぞぉぉぉぉぉ!?」
うおおおお、朱じゃねえか、なんでここに? いや、紅と一緒にきたっていったなー。やばいやばい。絶対くるじゃん。紅絶対くるパターンじゃん。
「あれ……もしかして黒竜の騎士と不審者さん? FG( ピー)の坂本( ピー)馬と岡田( ピー)蔵のコスプレですか、中々似合いますわね。真ん中の方は( ピー)竜さんですわね」
「一応ぼかす程度にしてるんだからキャラ名とか明言しないでほしいなぁぁぁぁ!! あと僕の名前は沖田だよぉぉぉぉ」
「やはり竜( ピー)と以( ピー)のカップリングは最高ですわね」
「あなたが話がわかるわね」
恵理子と朱が二人して沖田を完全に無視して、腐腐腐と笑いながら顔をあわせている。なんか異様な風景だ。にしても正体が速攻気づかれたな。まあ、コスしてても気づくよな。紅にもすぐばれたし……あっ、ピー音は中身はご想像にお任せいたします。
「この子知り合いなの……? かわいいし話のわかる子じゃない。もしかして、この子が沖田のガールフレンドかしら。それにしても黒竜の騎士とはまた懐かしいわね」
恵理子が楽しそうに笑っている。黒竜の騎士という単語に中学時代の自分たちを思い出しているのかもしれない。まだ平和だ。紅来るなよ来るなよ!!!
「朱ー、置いてかないでー。あっ……」
「紅姉さま、黒竜の騎士と不審者さんいましたよ。奇遇ですわね」
「あれ、さっちゃん……え、紅……姉さまって?」
俺達の時が止まった。紅はどうしようっていう顔で固まっているし、恵理子は意外な出会いに面食らっているようだ。沖田は逃げようとしている。ここは黒竜の騎士たる俺が助けるしかない。
「紅っていうのはハンドルネームなんだよ、な、田中さん」
「ええ、そうなの。そうなのよ。あははははは」
「ジキルとハイド!!」
だめだ、紅のやつてんぱって口調が素に戻っている。暗号を言っても通じてないようだ。まあいい。このまま勢いでごまかすしか……
「何を言ってるんですの? 紅姉さまとは黄泉坂紅の事ですわ!! 黄泉の魔女としての真名ですのよ。ハンドルネームなんていう偽りの名前ではありませんわ」
「お前まじ口閉じろぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「朱今はやめてぇぇぇぇぇ」
俺と紅が何やらほざいている朱の口を必死に閉じる。とっさに朱の体の一部に触れてしまう。あれ、なにこの柔らかい感触……紅と全然違う。いやいやい、不可抗力だよ。いやマジで。
「詳しく話を聞かせてもらえるかしら、黒竜の騎士さんと黄泉の魔女さん」
『はい……』
にっこり微笑む恵理子に俺達はうなづくしかなかった。
「そういう事だったのね……さっちゃんも私にも相談してくれればいいのに……水臭いわねぇ」
恵理子に紅の正体をばらしたのだが思ったより普通の反応である。やはりある程度予想していたのかもしれない。まあ、ボロは出てたしな。俺達は会場の近くのファミレスで色々話していた。ちなみに朱がいると話がすすまなそうなので沖田にどっかにつれていってもらった。
「それにしても中学の頃の想い人と付き合えてよかったじゃない」
恵理子が意地の悪そうな笑みを浮かべながら俺をからかう。
「うっせー、それよりも……」
「わかっているわよ、このことは誰にも言わないわ。誰にだって秘密はあるものね」
「ありがとうございます……」
恵理子の言葉に紅がほっとした表情でお礼を言う。
「でも、えっちゃんは私が厨二でも引かないんですね」
「まあ、近くにやばいやつがいたからね。あとはさっちゃんもそういうの好きなんだろうなってうすうす感づいてたのよね。まあ、他の人には内緒にするから安心して」
「ありがとう。えっちゃん……」
紅はほっとした様子でため息をついた。思ったよりわだかまりはないのか二人は仲良さそうにおしゃべりをはじめた。紅のことだからやはりボロが出ていたんだろう。逆にそれが功を奏したようだ。紅がポンコツでよかったぜ。
「あ、でもこれならクラスでも素をだしても大丈夫かしら」
「それはやめとけ」
「それはやめたほうがいいわ」
「なんでよーー」
紅の言葉を俺達は声を合わせて否定した。恵理子と沖田はよくもわるくも俺で慣れているからな。素を出すなら徐々に出したほうがいいだろう。そうして俺達は三人で食事を楽しむのであった。
予約投稿していたつもりができてませんでした。すいません。
小説家になろうってFGOとか明言しちゃっていいんでしょうか? だめそうならすぐ直します。
腐界の女王編終わりです。次の更新は月曜日になります。よろしくお願いします。
本当にモチベあがるので面白いなって思ったらブクマや評価で応援くださると嬉しいです。
よろしくお願いします。また気になったことや、面白かったところ、こんな話がみたい、このキャラの話が読みたいなどあったら感想くださると嬉しいです。