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22.恵理子の趣味<腐界の住人の宴>

「なんかこの衣装落ち着かないでござるよー」

「ごめん、神矢そのキャラそんな口調でしゃべらないから黙って。もしくは土佐弁でしゃべって」

「土佐弁なんてわからねーよ」

「あはは、神矢どんまい。斉藤さんもコスプレするんだねぇ。似合ってるよ」

「あんた呼吸をするように口説くわね」

「ナンパ師の呼吸、一の型ほめ殺し!!」

「神矢それも違うわ。私たちは鬼を狩ったりしないの、沖田悪いけど神矢にこのキャラの説明しといて。私は最終チェックしとくから」

「了解ー、ついでに運用方法も教えておくよ」



 恵理子の手伝いで俺達はとあるゲームのオンリーイベントにいっていた。なにやらセーラー服っぽい格好をした恵理子はブースで本の最終チェックをしていた。緊張しているためかいつもより口調も厳しい。まあ、余裕ないんだろうな。今日のために無茶苦茶がんばっていたし……

 本の内容は男同士がエッチな事をする本だ。昔原稿を手伝わされたのを思い出す。男キャラのあれにペン入れをして修正して消すという事を淡々と繰り返す地獄のような時間だった。二人っきりでエッチな本書いてて、エッチな雰囲気にならなかったのかって? なるはずねーだろ。しばらく漫画のキャラのあれが夢にでてきてうなされたわ。

 ちなみに今日の俺は和装のである。沖田はなにやら白い軍服のような格好で今日のキャラの事を詳しく説明してくれている。しばらくたつと開始の合図が聞こえた。まあ、恵理子はそこそこ上手いが有名というわけではない。そこまで忙しくはないだろう。



「でもこういうのって別に黒字が出るわけじゃないだろ? なんでやってるんだ」

「そうね、みんなと私の萌えを共有したいからかしらね……ふふふ、黒字どころか赤字よ。でも楽しいのよね」

「へえー、お前すごいな」



 恵理子は自分が好きなものを形にしているのだ、素直に賞賛の言葉が出た。するとなぜか彼女は一瞬びっくりした顔をしてから俺に向かって微笑んだ。



「ありがとう、でもね、そういうことをしようっていう勇気をくれたのはあんたよ」

「え……それって……中学の時のあれか……」

「そうよ、あのときあんたが私を肯定してくれたから、好きでいいんだっていてくれたから私の好きを誰かと共有したいなって思えたのよ」


 恵理子は真剣な表情で俺に言った。なんかむず痒いな。自分の行動が彼女を変えたのだと思うと嬉しいが少し恥ずかしいものがある。



「すいません、新刊みせてもらってもらってもよいですか?」



 俺たちはお客さんが来たので会話を中断した。ページをめくる音が聞こえる。恵理子の視線が目の前のお客に集中している。そのときの彼女の表情は本当に真剣でかっこよかった。



「ありがとうございました」

「いえいえ、読んでくださってありがとうございます」



 残念ながらお客さんの性癖にはささらなかったようでそのまま本を置いていってしまったが、恵理子は読んでもらった事が嬉しかったのだろう。終始にこにこしていた。

 そのあともまばらだがお客さんがブースによってくれる。中には買ってくれる人も現れてそのたび恵理子は嬉しそうにお礼を言うのだった。ああいう風に一所懸命になれるのはいいな。俺は改めてうらやましく思う。



「ふー、こんなもんかしらね。二人ともちょっと休憩していいわよ」

「了解!! トイレでもいってくるわ」

「斉藤さん飲み物とかいるかな? ついでに買ってくるよ」

「ありがとう、じゃあなんか適当に飲み物頼んでもいいかしら」



 俺達はトイレに行くために席を立つ。俺達は客寄せパンダ程度にしか役にたってないようだが、一緒にいるだけでも安心するものなのかもしれない。考え事をしていると一人の少女に声をかけられた。



「あの、すいません。そこのお二人写真いいですか?」

「え、俺たち?」

「ええ、いいですよ。僕たちで良ければ」



 そういうと沖田はなれた手つきで俺の肩を抱いた。え、なんなのこいつきもいんだけど。しかし写真を撮りたいといった人の感想は違うようで「キャー」といいながら写真を連写していた。なんだこの世界。



「あのもし、よかったらお二人の真ん中で写真を撮らせて貰っても大丈夫でしょうか?」

「え……?」

「はい、大丈夫ですよ」



 よくわからない俺と違い沖田はすぐに反応する。こいつ場馴れしすぎてない? 少女は俺と沖田の間にはさまるようにして写真を撮った。近い近いよ!! やわらかい体の触感と女性特有の甘いにおいがする、やべえ、顔がにやける。



「お二人ともかっこよいですね。ありがとうございました」



 お礼を言うと少女は戦利品を探しにいったのだろう。また戦場へと旅立っていった。お世辞でもかっこいいといわれると嬉しいな。



「そこのかっこいい人私も写真いいですか?」

「ええ、いいですよっって、うおっ……」


 後ろからの声に振り返るとそこにいるのは不機嫌そうに冷たい目で俺をみている紅だった。なんでいんの? てか顔がこわい!! 


「うおって何よ、私にみられてまずい事でもしてたのかしら」

「あの……紅はどっからみてたんだ……」

「女の子にくっつかれてにやにやとイヤらしい顔をして写真を撮ってるところかしらね、あとはかっこいいとか言われてだらしない顔をしていたのもみたわね」



 天国から地獄とはこの事である。なんだろう……まるで浮気現場をおさえられた間男の気分である。





明日も同じ時間くらいの時間に更新する予定です。弱音を吐いたらブクマが増えました。気を使わせてしまったら申し訳ないです。ありがとうございます。

面白いなって思ったらブクマや評価で応援くださると嬉しいです。




 短編を投稿してみました。こちらも読んでくださると嬉しいです。ヤンデレっぽいヒロインを書こうと思ったら結局ツンデレになってしまいました。安心院君の話です。なんかこっちに書くのもなんだかなぁって感じだったので短編で投稿してみました。


「イベントで推しキャラの可愛いコスプレイヤーがいたから声をかけたら隣の席の口うるさいけど美人なクラスメイトだった件について」


https://ncode.syosetu.com/n5047fv/

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【催眠ごっこで結ばれるラブコメ ~初恋の幼なじみの催眠術にかかった振りしたらムチャクチャ甘えてくるんだけど】 こちらが新作です。 催眠術をきっかけに、素直になれなかった幼馴染達が結ばれるラブコメです。
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