20.鈴木凪という少女2<魔女の眷属との戦い フェイズ2>
「え、ちょっと待って、なんでそんな勝負になるのよ、神矢ものらないでってば」
「あの僕もう帰っていいかな? ソシャゲしたいんだけど……」
なにやら外野がうるさいがもう勝負のゴングは鳴ったのだ。黒竜の騎士の力をみせてやろう。
「先行は譲りますわ。どうぞ」
「では俺から。料理が美味い。しかも食べる人の好みにあわせて味を調整する気配りがある。魔女の絶技だよな」
「それわかりますわ! 紅姉さまの手作りクッキーは食べました? 絶品なんですのよ。私あまり甘いものは好きじゃないんですけれど、そうしたらわざわざ甘くないクッキーを作ってくださったんですの、自分は甘いもの大好きなのに」
「まじか、いいなー。食べてみたい」
「ふふ、では次は私ですわね、クールぶっているわりにぬけているところがあって可愛いですわね」
「あ、それすっげーわかる。水族館に言った時も冷静ぶってるくせにペンギンみてすっごい興奮してて可愛かったなぁ。実は写真撮ってるんだがみる?」
「紅姉さま可愛い!! しかも満面の笑みですわね。なんて素敵なんでしょう」
そうして約10分ほどの応酬が続いた。お互いネタは尽きてきたが俺と朱の間に謎の連帯感ができた気がする。
「く、中々やりますわね……」
「お前もな……」
俺達はお互いをライバルと認めたかのように称えあい思わず握手を交わす。こいつ紅の眷属を名乗るだけあってかなり手ごわいな。
「ふぁぁぁぁぁ。殺して……お願いだから殺して……」
「お、ここはこっちの編成にした方が周回が楽になるなぁ。他人を自爆するシステムは画期的だねぇ」
周りをみると何故か紅はテーブルに顔を突っ伏している。よくみると顔が真っ赤だ。沖田は完全に興味ないのか、ソシャゲの周回をしているようだ。
「紅大丈夫か、敵の呪いでも受けたのか?」
「紅姉さま、具合悪いんですの? 呪い……かつて受けたティアマトの呪いがまだ……」
「あんたら実は仲いいでしょ!! てかそんな褒め殺さないでぇぇぇぇぇ。目の前でひたすら褒められるとどう反応すればいいかわからなくなるのよ!!」
照れて怒っている紅も可愛いなー、と俺はにやにやしていると紅が睨んできた。とはいっても顔を真っ赤にしているので迫力はない。朱とも目を合わせると彼女の目も「紅姉さまかわいいですわ」といっていた。
「これで、俺が紅の事をどれだけ大事におもっていたのかわかってもらえたかな?」
「そうですわね……確かにあなたの紅姉さまへの想いはうけとりましわ。でも私はあなたが他の女と歩いていた姿をみたのでまだ信頼はできませんわね」
「ちょっと、朱ちゃん……それは言わないって約束じゃ……違うんだよ、田中さん。神矢と歩いていたのは斎藤さんなんだよ、二人は幼馴染だから二人で歩くこともあるわけで……」
「ええ、大丈夫よ、知っているわ。その埋め合わせとして彼の家にお邪魔したもの……時とめ……」
「お前絶対俺のあれをみたな!!」
俺の部屋でみたものの事を思い出したのか紅の顔が一気に赤くなった。俺のが恥ずかしいわ!! しかもあれは安心院から借りただけなのに……
「そうですわね、ではあなたには紅姉さまを大事にするとここで誓ってもらいましょうか。そして最後に誓いのキスをしていただきます」
「はぁぁ?」
「ちょっと朱何をいって……」
朱の言葉に俺達は動揺する。え、キスって何言ってんの? あれだよな。カップルがやるやつ。紅の方をみると目があったがすぐにそらされた。つい、顔を真っ赤にした彼女の唇に注目してしまう。リップクリームを塗ったであろうつややかな唇がなまめかしい。
「ちょっと朱悪ふざけが過ぎるわよ」
「お二人は契約をしているのですよね? ならばキスくらいはしても大丈夫なのでは?」
「それはそうだけど……」
紅が俺に助けを求める目をむけてきた。どうする? さすがに本当にキスをするわけにはいかないだろう。俺にとってはファーストキスだしな……紅もファーストキスなんだろうか……などと思っている場合ではないな。もちろん紅にキスはしたいが、ちゃんと告白してからキスをしたい。
『ソシャゲやってないで聞いてくれ、俺と紅でキスするふりをするから、いいタイミングで中学生には早いとかなんとかいって朱の目を隠してくれ』
『いいよー、付き合ってるなら普通にしてもいいとおもうんだけどなぁ』
うるせー、俺はお前と違ってそんなことできないんだよ。沖田がうなづくのを確認して俺は紅の耳元に囁く。
「とりあえずキスする演技をするからのってくれ、絶対に本当にはしないから安心してほしい」
「え? ええ、それならいいけど……」
俺と紅はお互いみつめう。彼女の目はうるんでいてとても魅力的だった。紅が目をつぶるのを確認し俺は徐々に唇を近づける。やべえ、どきどきしてきた。ああ、本当にキスできたらなぁ
「破廉恥ですわ!!」
「神矢あぶない」
うおおおおおお、本当にあぶねえよ!! 俺と紅の間になんかとんできた。壁にフォークがぶっ刺さってる。当たったら洒落にならねーぞ。朱をみるとこちらをみて息を荒げながら睨んでいる。今にも襲い掛かってきそうな勢いだ。というか沖田が抑えてなかったら襲ってきただろう。
「お前なにすんだよ!! お前がキスしろっていったんだろ」
「何を言ってるんですの、私は誓いのキスをしろっていったんですのよ、騎士が忠誠を誓うときにするのは手の甲にキスに決まっているでしょう!! 口にキスをしてもし紅姉さまが妊娠したらどうするんですの?」
ああ、そっちのキスか、すっかり勘違いしていた。確かに普通に考えたら公共の場でキスを強要はしてこないよな……いや、まてよ。そんなことより気になること言ってたな。
「てかキスじゃあ、子供はできないぞ……」
「そんなはずありませんわ、昔紅姉さまがおしえてくださりましたもの。中学の教師がよくわからないことを言ってましたがすべて忘れましたわ」
「おい……紅」
俺達の目線を紅が冷や汗を流しながらそらす。こいつ適当な事を教えて……
「だってしょうがないじゃない……小学生に説明できるわけないでしょ、あんたみたいに時とめのDVDとか持ってないし……」
「それは忘れてくれ……」
ついにDVDとかいいはじめやがったなこいつ……まあ、手の甲にキスくらいなら……いや、十分やばいけど……俺がどうしようか悩んでいると沖田が朱にスマホをみせていた。彼女は興味深そうにスマホの画面をみていたがやがて顔を真っ赤にして沖田をにらみつけた。
「不審者さんの変態!!」
「ごはぁ……」
沖田が顔を真っ赤にした朱に顔面をグーパンされていた。え、何見せたの? こいつ……そしてそのまま朱はカフェから出て行ってしまった。
「ちょっと、朱!! 私が追いかけてくるわね。神矢はぶっ倒れている生理的に無理な人をよろしく頼むわ」
「おー、了解。生きてるかー」
俺は顔を抑えている沖田に声をかえる。おちたスマホをみてみると『子供の作り方』というサイトが書いてある。え、まじかよ、こいつ。中学生にこれをみせたのか? 勇者かな?
「ふ、少女もいつか大人にならなければいけない時があるのさ」
「おまえ本当に変態じゃねーか。にしても結局何だったんだあいつは……」
かっこつけている沖田だがやっていることはセクハラである。そうして魔女の眷属との戦いは終わった。結局何にも解決してないなと思いつつ俺は気づいた。あれ、俺達が偽装カップルな理由ってクラスの連中に紅の厨二をごまかしやすくするためだから朱や沖田にばれてもいいんじゃ……
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「破廉恥ですわ、破廉恥ですわ……」
「まあ、大人はそういうことをして子供を作るのよ、かつて神が大地から人を作ったようにね」
カフェから出て朱に追いついた私はようやくなだめ終わった彼女をみてほほ笑む。
「紅姉さまは黒竜の騎士とああいうことをするんですの?」
「してないわよ!!」
そりゃあ、いつか私も彼氏ができたらそういうことをするかもしれないが今はそんなことは考えられない……まだ時もとめれないし……しかし、もっと雰囲気のいいところでキスを神矢が本気で迫ってきたら私は断れただろうか……
ふぁぁぁぁぁぁ、自分で考えて恥ずかしくなってきた。今は違うことを考えたほうがいいわね。朱にも悪いし……
「紅姉さまとこうしてお会いするの久しぶりですわね」
「そうね、懐かしいわね」
朱が甘えるように私に抱き着いてきた。胸の感触が柔らかい!! ちょっと悔しいなと思いつつ、私は眷属との久々の再会を楽しむのであった。
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ご感想も一言でもうれしいです。「にゃーん」って書いてもらうのがブームと聞いたことありますので、特に書くことなかったら「にゃーん!」もしくはコキュートスの「キュー!」って書いてください。
あと新しい短編を投稿してみました。こちらも読んでくださると嬉しいです。
イベントで推しキャラの可愛いコスプレイヤーがいたから声をかけたら隣の席の口うるさいけど美人なクラスメイトだった件について
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