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17.彼女が部屋に来る<黄泉の魔女の襲来>

 俺は母親に今日これから彼女が来るということを伝え急いで帰宅した。紅がいきなりくることになっため色々準備したり、隠すものがある。



「ただいまー」



 玄関の鍵をあけ声をかけたが返答はない。母親がいないのは珍しいな。まあ、いいや、とりあえず自分の部屋へ直行した。

 まずは軽く掃除をすませる。幸い親がいつもやってくれているのでそれはすぐ終わった。問題はここからである。まあ俺とて厨二とはいえ高校生だ。そのエッチなDVDくらいあるわけで……どこに隠すかなぁ……一応棚の扉をちゃんとした手順を踏まないで開けると同時に燃やす装置など作っているのだが、そこに入れた場合、装置が発動した際はDVDが燃えてしまう……DVD高いし借り物もあるんだよなぁ……

 結局本棚から数冊ファンタジーの設定集を取り出してそこに出来た空間にDVDを隠し再び本をしまう事にした。まあ、漫画やラノベならともかくファンタジーの設定集を手に取ることは中々ないだろう。



「あとはなんか甘いものとかないかなぁ」



 自分の部屋を出てキッチンへと向かう。なんだろう、テーブルの上に書置きと共になんか置いてある。



『神矢、あなたも大人になるのね。色々きをつけなさいよ。冷蔵庫にケーキが入ってるから彼女さんと一緒に食べなさい。私とお父さんは晩御飯を一緒に食べる事にしたからしばらくかえらないわ』



 書置きと共においてある四角い箱を見る。ん、0.02mmなんだこれ……ってコンドームじゃねえかよ、なに考えてんだよ。俺と紅はそんな関係じゃ……

 俺がちょっとエッチな妄想をしているとチャイムがなった。やっべえ、紅がきた!!



「お邪魔します……どうしたの顔が赤いわよ」

「いや、これはその……紅の私服があまりに可愛いからさ。まるで美の神イシュタルのようだ。」

「でしょ、お姉ちゃんと一緒に選んだの、ただでさえ美しい私がこれを装備することによりさらにステータスがあがるのよ」

「ああ……本当に綺麗だよ。ああ、その美しさ、まさにスペース級だぜ……」

「だから自分で美しいとかいうなとかつっこみなさいっていってんの!!」



 自分で言っていて恥ずかしくなったのか紅は顔を真っ赤にした。恥ずかしくなるなら言わなければいいのにと思うが紅が可愛いから言わないでおく。



「へえ、意外と綺麗にしてるのね」



 紅は俺の部屋を見回しながら感心したようにつぶやいた。部屋にあるのはテレビ、それにテーブル、壁に立掛けられている二振りの魔剣、ラノベや漫画が入った本棚、ベットなどわりかし普通の高校生っぽいものだけだと思う。



「あ。これ気になってたのよね。ちょっと読んでもいいかしら?

「うおおおお、ちょっと待ってそれよりアニメみない? お勧めがあるんだよね」



 この女真っ先にファンタジー設定集に手を出そうとしやがった。さすが紅だ……俺達は気が合いすぎる。俺の言葉に紅は素直に従ってくれた。よかった、九死に一生を得たぜ……そして俺はラブコメを再生する。なんか沖田に恋愛系の映画とかを流すと雰囲気が良くなると聞いたのだが、恋愛系の映画の録画なんてないんだ……



「ねえ、私ってめんどくさくない?」

「ん、なにがだ? なんかあったっけ?」

「ふーん、気になってないならいいわ」



 二人でアニメを観ていると紅がポツリとつぶやくように言ったが、俺は何の事か良くわからなかったので思ったままを答えた。気になって紅の顔を見てみるとなぜか満面の笑みを浮かべていた。よくわからないけど可愛い顔が見れたからよしとしよう。

 アニメを観てると主人公がヒロインに膝枕をされていた。膝枕をされている主人公は本当に幸せそうだ。



「いいなぁ……」

「神矢もこういうことしてほしいの?」



 やっべ、無意識に声に出ていたらしい。俺が答えに窮していると紅はからかうような笑みを浮かべた。



「神矢がやってほしいっていうならやってあげてもいいわよ。あんたにはご褒美を上げようと思ってたし」

「え……マジか? でもご褒美って何のご褒美だ?」

「わからないならそれはそれでいいの、それでしてほしいの? してほしくないの?」



 紅は少し恥ずかしそうにはにかみながら催促するかのように自分の膝をたたいた。俺はお言葉に甘えることにした。うわ、やわらかいってか、紅のからだ暖かいな……自分の心臓が早鐘のように鳴り響いているのがわかる。ああ、この時間がいつまでも続けばいいのに……





     ----------------------------------------------------------





 私は膝の上で寝ている神矢の頭をなでる。アニメも終わり手持ちぶたさになってしまったが彼は疲れていたのか寝てしまったようだ。彼の言葉が嬉しくてつい大胆なことをしちゃったけどひかれてないわよね……なんかドキドキしてしまい、アニメの内容なんて全然入らなかったわ……流石に膝が痛くなってきたので神矢を起こさないように気をつけながら彼の頭をクッションに乗せてあげた。



「とはいえちょっと暇ね……何か起こすのも申し訳ないし」



 本棚に目をやるとさきほど気になっていた本がある、勝手に読む事になるが起きたら言えばいいだろう。私が本を取ろうとするとなにやら奥のほうにひっかかるものがあるようだ。私は本を傷つけないよう細心の注意を払いながら本を抜き取った。なにがひっかかってたのかしら? 奥になにか四角いものがあるようだ。なんかわくわくするわね、黒竜の騎士の秘密アイテムでもあるのかもしれない。私は他の本も本棚から抜き取り奥に隠されていた秘宝を手に取る。やたら肌色が多い……これってあれよね……

 まあ、神矢だって男の子なわけで……こういうのがあるのが当たり前なのだろう。私は顔が赤くなっているのを自覚しつつ内容を見てみることにした。別に興味があるとかそういうんじゃないのよ、その……まあ、今後もしかしたら……本当にもしかしたらだがそういうことをする事になるかもしれないのでそうなったときに神矢の性癖を知っておくのは大事だと思うのだ。



「ちっ……」



 私は思わず舌打ちをしてしまった。『巨乳女子高性』と書いてあるDVDで神矢を軽くたたく。やっぱり大きいほうがいいのだろうか……なんかむかつくわね。まあいいわ、もう一枚もみてみましょう。



「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ」



 え、なにこれ、なにこれ、『時間停止』とか書いてあるんだけど……え、何で時間止めるの意味わからない……黒魔法はできても時魔法はできないわよ!!

 見てはいけないものを見てしまった気がして私はあわててDVDと本を元あった場所に戻す。



「うーん……悪い寝ちまったか」



 私が本棚に戻し終わるとちょうどいいタイミングで神矢が目を覚ましたようだ。私は彼の目をまっすぐ見る事ができず目をそらす。寝起きで寝ぼけているのか神矢は特に気にしなかったようだ。



「そろそろ夕方だし帰るか? てか顔赤いけど大丈夫か?」

「だ、だいじょうぶよ、夕方は魔女の領域ですもの、むしろ調子がいいくらいだわ」



 私のよくわからない言い訳にも神矢は大してきにしなかったようだ。そして神矢におくってもらい私は家に帰ると同時にリビングにいるお姉ちゃんに声をかける。



「お姉ちゃん、時間ってどうやって止めればいいの?」

「え、何言ってるの? また厨二病の話?」



 私が事情を説明するとお姉ちゃんは爆笑するだけだった。こっちは真剣に相談してるのに!! 結局お姉ちゃんの中で神矢が『時止め君』というあだ名が定着しただけでなにも解決しなかった。







紅の御宅訪問終わりです。

次回更新は月曜日になります。よろしくお願いします。

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