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16.不機嫌な田中さん<黄泉の魔女の謎かけ>

 うーん、俺は何かやってしまっただろうか、紅と一緒に登校してきたのだが何かあったらしい。ちょっと機嫌が悪いのか、考えごとをしているのかわからないが話かけても様子が変なのだ。昨日は学校では普通だったのだが……



「何か不機嫌じゃない? 何かあったのか?」

「女の子には色々あるのよ……強いてあげればあなたのせいなのだけれど、わからないみたいだからヒントだけあげるわ」



 彼女はそう言って黄色いバラの押し花がついたしおりと一緒にラノベを俺に渡した。え、一体なんなんだろう? 何かの秘密の暗号か何かなのだろうか……



「わからなかったから聞きなさい、でも黒竜の騎士であるあなたならわかってくれると信じてるわ」



 そうと言われたら意地でも自分で答えたくなるものである。本気でブチ切れてるならこんなまどろっこしい事はしないだろうしな。俺は紅の謎解きに挑戦する事にした。



      



「神矢ーーちょっと来てもらっていいかな。話がある」

「ん、どうしたんだ? またガチャで爆死したのか?」



 クラスに入ると同時に沖田が声をかけてきた。それ自体はいつもの事なのだが、なにやら様子がおかしい。すっごい深刻そうな顔をしている。



「なんかあったのか?」

「なんかあったのかじゃないよ、昨日の夜、斎藤さんと二人でいただろう? 田中さんっていう彼女がいるんだからまずいよ!!」

「あー、なるほど……確かに異性と二人はまずいか……」



 沖田の言うことももっともである。俺達は偽装カップルとは言え付き合っていることになっているわけで、そんな中で女友達と仲良くしすぎるのはまずいかもしれない。恵理子がうちにくるのは当たり前の習慣のようになっていたので気が回らなかった。確かに俺も紅が男と仲良くしていたら嫌だもんなぁ。

 紅に聞いてみるか、でも、こっちが変に意識しすぎていると「偽装カップルなんだから気にしなくていいのよ、神矢ったら意識しすぎよ」とか言われたら嫌だなぁ……



「そうだよ、あんまり軽率な事はしないほうがいいよ、さもなくば君は死ぬことになる」

「はっ、死ぬ? 何言ってんのお前、ソシャゲのしすぎで頭おかしくなったのか?」

「ふふふ、君も近いうちにわかるよ…魔女の眷属の厄介さがね……」



 この男は何を言っているんだろう。沖田はやたらうつろな目で笑うだけだった。しかし、魔女の眷属か……何かテンション上がる言葉だな。

 授業中に紅から借りたラノベを読んでみる、普通の少年がゲームの世界に転生したが主人公ではなくかませ犬の貴族に転生するものだった。まあまあかな……ただ小説の内容は彼女の不機嫌とは関係なさそうだ。となるとなんだろう……俺が色々考えていると恵理子からラインがとんできた。



『さっちゃんと喧嘩でもしたの? 何か話しかけてもうわの空なのよね……』

『俺もわからないんだよな、でもヒントはもらってるからもう少しで解決すると思う』

『ならいいんだけど…私の方でもそれとなくきいてみるわ』



 恵理子とのやりとりで俺は余計に頑張らねばと思った。俺だけでなく他の人も様子がおかしいと思うならば思ったより重症なのかもしれない。

 しかしこれがヒントねぇ……やはり小説に何か理由が書かれているのか……? 再度小説に目を通すが特におかしな点はない。俺は再度考える、特に本貸してって話はしてなかったよな……あ、わかったかも。俺は気になったことをスマホで調べることにした。授業? 全然聞いてないが仕方ない。授業より大切な事があるのだ!




 お昼ということで俺達はいつものようにアジトで食事をしていた。何やら不機嫌でもお弁当は作ってきてくれているようだありがたい。



「で、紅は何に嫉妬しているんだ?」

「あら、気づいたの?」

「ああ、これだろ、確か花言葉は嫉妬だよな」




 俺の言葉に彼女は少し楽しそうに笑った。俺はそのまま押し花のされたしおりを差し出す。黄色い薔薇の花言葉は『嫉妬』だ。小説の中身自体は関係がなかったのだ。



「その……風の噂で聞いたのだけれどえっちゃんはあなたの家に行った事あるらしいわね」

「ああ、両親が仲良しっていうのもあって定期的に来るよ、でも偽装とはいえ彼女がいるのに軽率だったな、ごめん。紅が嫌な気持ちになるなら恵理子と話し合うけど……」

「別にそれはいいのよ、私はあなたたちを信用しているもの。ただ、幼馴染のえっちゃんが神矢の家に行ったのに偽装とは言え彼女であり、盟友の私が行ったことがないのはおかしいんじゃないかしら?」

「いや、あいつは幼馴染だから昔からうちに来てるだけなんだけど……」

「ふーん、黒竜の騎士にとって盟友である黄泉の魔女は幼馴染より親愛度が下ってことかしら」



俺の言葉に紅はツンとしながら唇を尖らせた。え、嫉妬してる紅可愛い! てか嫉妬してるって脈ありなのか? でも盟友って言ってるからようは幼馴染より仲良くないと思われてるのが不快なだけなのかもしれない。てか、盟友ってどれくらいの仲なんだ…親友以上家族未満だろうか? まあ、今の俺にできることはただ一つである。



「あー、じゃあうちくる?」

「ええ、招待させてもらうわ、エスコートよろしくね。黒竜の騎士の基地がどんなものか楽しみにしてるわ」



 そうして紅が放課後にうちに来ることになったのだった。やっべえ、色々隠さないと……でも紅結構大胆だよなぁ。男の家に来るって……でも俺の意識のしすぎかなぁ……





            ---------------------------------------




 ふわぁぁぁー! 私めんどくさ! 私めんどくさ! 素直にあんたの家に行ってみたいって言えばいいのになんでこんなめんどくさい事してしまったのかしら……でも素直に言うのってなんか負けた気がするのよね。

 しかし、さすが我が盟友黒竜の騎士ね。こちらの意図を見抜いて質問してくれたおかげであっさり本音を言う事ができた。

我ながら花言葉で伝えるっていうのはロマンチックだったのではないだろうか。やっぱり花言葉とか魔女っぽくてよくない?

しかし、神矢の家か……え? 待って冷静に考えたら男の子の家に行くのって結構すごいことじゃない?

でもあいつは私の家にきたことあるしこれで対等ってことよね……それに部屋に行けばあいつの事もっとよく知る事ができるのだ。うん、盟友の事は色々知らないといけないものね。

 私は気づく、心の中のもやもやが消え、すごいわくわくしている事を……なんなんだろう。あいつの一言で気分がすっごい変わる。魔法か何かしら。

 とりあえず一回帰宅したら制服からお姉ちゃんに買ってもらった服に着替えて神矢の家に行こう。私は幸せな気持ちになりながら帰宅するのであった。







 

個人的に三角関係とか苦手なんでそっちへは行かないです。

自分でも書いててもちょっとテンションが下がってしまいました……


明日も更新いたしますのでよろしくお願いします。



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