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プロローグ

「はっ、Eランクがなんか言ってるぜ」


 放課後の校舎裏。紅蓮の夕日が白い壁を紅く染め上げている。


「あぁ? もう一回言ってみろやクズ共」


「何度でも言ってやる、Eラン野郎。 クズはお前らだろ? まだ分かってねぇの?」


「おい、バルト、そんくらいにしとけって。 ココが足りてねぇ奴にそんなこと言ってもどーせ分かんねぇよ」


 壁から少し離れた所に立つ男子が、こめかみを人差し指で指しながら言った。その白い制服の胸元の【S】の紋章が光る。


「確かに言えてるわー。 んじゃーな、Eラン。 お前らにはレベルの高すぎる話ばっかでごめんな」


「あぁぁん? SランもEランも変わんねぇだろーが、バーカ。 とっととどっか行きやがれ」


 対して【E】の紋章をつけた大柄の男子が声を荒げた。傍に鋭くそびえるスギの木の影が、彼らの間を黒く埋めていた。今にみてろ、と、Eの男が吐き捨てた。


 ここは魔法学園。15歳から19歳の生徒達が、日々自己の魔法力を磨き続けている。この学園の生徒は、成績順に、R、S、A、B、C、D、Eの7グループに振り分けられている。成績が飛び抜けて良い生徒はRへ、悪い生徒はEへ入れられる。

 今日は始業式。中庭は大量の桜の花びらで溢れている。長かった冬が明け、また新しい時間(とき)が始まろうとしていた。



 ♢ ♦ ♢ ♦ ♢



 最強の転生者はここにいる ~魔法学園の最低ランク、「Eクラス」にいたのは、歴代最強の能力を持つ転生者でした~



 ♢ ♦ ♢ ♦ ♢



 新クラス。見たことのない顔が29個、縦に5、横に6で並んでいる。俺の席は左下、教室の隅らしい。どうやら成績と座席はシンクロしているようで、入試の成績が悪かった俺は、左の後方の角へ追いやられているようだ。対して右上、俺と真反対に座る赤髪の男は成績が良かったのだろう。晴れやかな顔で先生の話を聞いている。


「えー、では、自己紹介をしましょうか。 皆さん今日から同じクラスメートです。 皆で仲良くしていきましょう。 えー、じゃぁ、右端から順番に、どうぞ」


 ガタ、と音を立てて赤髪の男子が立ち上がった。


「えーっと。 僕はノア・カーターといいます。 みんなと仲良くできたらな、と思ってます。 趣味はアールライトです。 宜しくお願いします」


 パチパチと拍手が起こった。アールライトとは、昔から絶大な人気を誇る国民的なスポーツのこと。誰にでもできるものではなく、プレイも容易ではない。ノアは椅子を丁寧に引き、席についた。そして、その左隣の女子が立ち上がった。


「私はグレタ・バトラーです。 グレタと呼んでください。 私もみんなと仲良くしたいです。 よろしくお願いします」


 こうして自己紹介が続き、最後に俺の番が来た。特に話すこともない。簡潔に済ませよう。

 席を立って、教室を見渡す。俺を抜いた29の視線が俺を貫く。

 Eクラスの、30位。見下ろすような彼らの目が、俺への蔑みの感情を物語っていた。


「えー、レイト・ヴァルツです。 よろしくお願いします」


 最下位の自己紹介なんて聞きたくもないだろうと思い、名前とあいさつだけにした。案の定、拍手は起こらなかった。


「はい、皆さん、ありがとうございます。 私はEクラス担任、ミゲル・アルバートです。 私もカーター君と一緒でアールライトが好きでーー」


 このクラスでの、新しい4年が始まる。みんなと一緒に楽しい高校生活──という風にはならなさそうだ。







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