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無能姫

今朝、子供たちが凧揚げをしているのを見かけました。風情があってよかったですがしばらく飛ばした後飽きたのか3DSで遊びだしたのを見ると時代の流れを感じます。


大きな音で開かれた扉を見るとそこには見た目はいかにも王女、というような少女がいた。

服装は宝石などが装飾されたゴテゴテとしたものではなく、白を基調としたシンプルなデザイン。綺麗な金髪でどこか幼さを残す人形のように繊細な顔つきの少女で見る人を魅了する妖艶な雰囲気を持っている。 だがズカズカと大股でこちらに向かって歩き、怒りで顔を真っ赤にしてこちらを睨んでくるのはいただけない。ぶっちゃけかなり怖い。


「父上!私が魔王を討伐すると言ったではありませんか!何故勇者などと信用出来ない野蛮な者を召喚したのですか!!」

「シャルよ。お前もわかっているはずだ自分では魔王は愚かその幹部でさえ倒せないことを。お前はもう少し身の丈に合った生活をすべきだ。そんな()()なことを言うのをやめるのだ」

「ッッ!で、ですが父上!その者たちを信用することができません!その者たちもいつか裏切るかもしれないのですよ!でも私なら「もうよいシャルロット!お前はもう下がって頭を冷やすのだ」……わかりました」


シャルと言った少女は最初の威勢が嘘のように静かに扉から出て行った。





親子喧嘩の後、微妙な空気の中王様が口を開いた。


「…すまんな勇者たちよ、気分を悪くしただろう。あの子も別に悪気があったわけではないのだ。…ただ少しばかり()()がたたっているだけなのだ。許してやってくれ」

「大丈夫ですよ、俺たちは別に気にしていません……こんな空気の中アレですがこれから僕たちは何をすれば良いですか?」


お、それは俺も気になってたとこ。結局どうすんの?今から魔王を討伐しに行くの?


「そうじゃな。まあ、もちろんおぬしらが勇者だとしても今すぐ魔王討伐に行かせるつもりはないぞ。ひとまず今日は身体を休め、明日からそれぞら担当の教官をつけて訓練をさせるつもりだ。あと、この世界の常識を知ってもらうためにいろいろと勉強してもらう」

「わかりました、そうします」


周りからは「ええー!異世界来ても勉強すんのー」「別に訓練だけでいいじゃん!」と聞こえてくる。王様は苦笑いをしながら叫んだ。


「それでは皆のもの、勇者たちの部屋と道具や衣服を見繕え。それと明後日は勇者の披露宴を開く、しっかり準備し最高の宴にするのだ!!」

「「「「「はい!!!」」」」」







さて、ひとまず解散となったが、正直あの子が気になる。…あの子が扉から張って来た途端近くの兵士やメイドたちが嫌そうな顔に変わったし、そして王様も何か含むような物言いだった。面倒事に巻き込まれそうだがこの好奇心を抑えられない。


「あの…少し良いですか?」

「は、はい!なんでしゅか!?」


俺は部屋を案内してもらっているメイドさんに話しかけてみたのだが…緊張して噛みまくっている。でもそこが可愛い!!ドジっ子メイド、ポイント高いわ〜


「えっと、さっきの子って結局なんだったんですか?『私が魔王を討伐する』とか言ってましたけど…。あの子が討伐するんだったら俺ら別にいらなくないですか?」

「あ、ああ…そのできれば内緒にして欲しいんですがシャル様は『無能姫』と呼ばれて少しばかり特別なんですよ」

「『無能姫』?なんですかそれ」

「本当はこれを話すとメイド長に怒られるのですが、特別ですよ?シャル様は王女なのにスキルを何一つ持っていないのですよ」

「王女なのに?何が違うんですか?」

「王家の一族は魔王を討伐した勇者と結婚し、自分たちの子供の能力を上げています。ですがシャル様はスキルを何も持っておらずそれどころかステータスもあまり高い方でもないのですよ。全て平均以下であまり評判が良くないです。そのことでシャル様は周りから『無能姫』や『不幸な王女』と呼ばれ、そのストレスから少しわがままな性格になったのですよ。昔は元気な女の子だったのに少しばかり可哀想に思います」



なるほどな、つまりあの魔王を討伐するという発言は周りから認められたい一心だったのか。よくある展開だな。しかし、理解することはできるが納得はできない。


「スキルが無いとダメなんですか?」

「とんでもない!誰しもが何かしらのスキルを持って生まれてくるのにその中で王女という立場でスキルが無いなんてもってのほかですよ!私は戦闘系のスキルは持っていませんが『上級作法』や『裁縫』があります。ですがスキルを使わないと針に糸を通すことさえできません。スキルというのはその人が持つ能力と一緒で使わないと効果を発揮しません。スキルを持っていないイコール何もできない無能ということなんです!」

「……そ、そこまで言います?」

「スキルを持っていないのにわがままばっかり、少しくらい()()してくださいよ!……あ、ここ、、この発言は!内緒にしてください!またメイド長に怒られてしまいます!先週皿を割ったばかりな次は殺されてしまいます!」



はあ、この駄メイドは置いといて、あの子結構なハードモードな生活してんな、少し同情するわ。スキルもなくステータスも低い、そして誰からも認められない。だけどなこいつらなにもわかってないだろ。



「あの子は努力していないわけでは無いですよ。ただ不器用なだけです」

「は、はい?」



やっぱわかんねえかこの駄メイドには



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



召喚された日の夜、俺は用意された部屋のなかで今後の方針を決めていた。


「このまま帰っていいけど、アイツらを残していくのは少し不安だなあ」


この世界が魔王に支配されようが、アイツらが魔王を討伐しに行こうがどうでもいいが俺がこのままアイツらを残して元の世界に帰ったことをジジイに話したら鉄拳制裁を食らいそうだ。しばらく様子を見て考えよう。


「あと、出来れば俺が元の世界で魔術師だったことは知られたく無いな。絶対トラブルの元になりそう」


俺は今まで魔術師だということを隠して生きて来た。もしここでクラスメートや王様に魔術師だという事を知られると率先して魔王討伐させられるに違いない。それに元の世界とこの世界には()()()()()がある。


「俺たち現代魔術師が使っているのは『魔術』でこの世界の魔法使いが使っているのは『魔法』」



魔法と魔術、似ているようで本質はかなり違う。


魔法は一言で表すと『奇跡』のようなものだ。特定の呪文を言うことでこの世界の真理に干渉し、あらやる事象を引き起こすことが出来る。しかし、それには単純に才能が必要で稀に全属性者(オールキャスター)がいるそうだがそいつらは本当に選ばれた奴だけだ。並みの人間だと一つか二つだけのあまり効率のいい代物では無い。


次に魔術は威力的に魔法より劣っているが努力次第では誰でも扱える。そして、魔術の最大の利点といえば応用性が高いことだ。魔法は決まった呪文にしか反応せず決まった範囲でしか作用しない。だが、魔術は術式をいじったり与える魔力を調節することによって無限に作用することが出来る。これもある程度のセンスが必要だがほとんどの奴が自分だけの戦闘スタイルを身につけていった。かく言う俺も一緒だが。


「魔法と魔術、言うまでもなく魔術の方が優れているけどこの世界の人々は魔術の存在すら知らないんだろうな」


元の世界とこの世界の常識は違う。もしも仮に俺が魔術を大衆の前で堂々と使おうとすれば、英雄扱いか化け物扱いのどっちかになる。

この世界では魔法を中心に使えば解決なのだが、俺には魔法の才能は一切ない。魔術は問題なく使えるのだが生まれつき世界に干渉する力が弱く、できたとしても実戦では使えない。半ば中途半端なところでやめた。



「多分、俺以外にも魔法が使えない奴がいるはずだから、それに混じって武器での戦闘に参加。幸いジジイから、剣術仕込まれたか基本剣での戦いができるし、剣を使う奴がたくさんいるからあんまり目立たないくてちょうどいい」



これで今後の方針が決まったな。あとはこのステータスをなんとかすれば大丈夫だ。



「魔術操作【スペルアナリシス】。対象術式の変更、数式を全体の平均に固定、表示スキルを隠蔽。能力調整、自身の能力を20%に制御。術式継続」


おっけい、いい感じになった。


=========================================


坂井 侑斗(さかい ゆうと)

Lv1

HP100/100

MP 50/50

AP30

DP50


スキル

剣技能(ソードスキル)


=========================================


とこんな感じでいいだろう。最初の方と比べてだいぶ下がったが今のところは特に問題ないはずだ。


一応ジジイにはこのこと連絡するつもりだが、俺は一人でなんとかする。今回の事は俺が大きく関わっているためある程度責任はとるがアイツらは自分の意思で魔王討伐をするのだ、手助けしたり邪魔をするつもりは一切ない。あくまで傍観者の立ち位置でいよう。


「さて、もう遅いし寝るか。あ〜明日からめんどくさいわー。サボっていいかな?」


俺はぐちぐちと呟きながらカーテンを閉めるため窓のそばに行った。お、夜空が綺麗だな。都会ではなかなか綺麗な夜景が見れないからこの世界に来て得した感じ。

あー、昔のリア充貴族は「月が綺麗ですね」って言う意味のわからない告白をしたんだろ?俺もそんなキザなセリフ言ってみてえよ。言う相手いないけど。どうでもいい一人ツッコミをしながらカーテンを閉めようとした時風を切る音が聞こえた。窓の外を見ると俺の部屋の近くの庭から素振りをしているあの王女がいた。夜遅いのに汗を流しながら必死に木刀を振っている。やはり、今日王様から言われた言葉が流石にキツかったのか目に涙が浮かんでいるようだ。



『少しくらい努力してくださいよ』



「…何が努力していないだよ」



少なくとも、俺が見た奴らで一番こいつが頑張っているのに…誰も気づいてやれないのだ。こいつが扉を開けて入ってきたときの足さばきは習慣的に身についているものだ。また、ドレスの長い袖に隠れた手には剣を振り続けた結晶のタコがついていた。これを見て誰が努力していない、無能だと言えるのだろうか。




必死に素振りをしている王女を後に俺は眠りについた





同じような言葉を使って書いているのが悩みどころですね

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