【6】汽車の歌姫
えりまき ねぅです。
工場裏の宇宙ネコをごらん下さりありがとうございます。
◇前回までのおはなし◇
廃工場の光る石を追って、宇宙ネコと私は歯車市へと向かった。
†汽車の歌姫†
汽車が動いて暫くは大変だったが、
少ししてココロが落ち着いた頃合いを見て、私は話しかけた。
「ココロ
朝言ってた夢なんだけど」
『そう!
宇宙ネコはまた<白い夢>を見たのだった』
「その<白い夢>がどんなか聞かせてくれるかな?」
ココロは夢の話を詳しく話してくれた。
所々が白く抜けた風景の事
夜空を見上げていた事
周りには誰かがいた事
音楽を奏でてくれて、そのメロディーで歌った事
そして、切なく夢から覚める瞬間までを
私はココロの夢の中に出てきた人物が言った、
<この星>という言葉が気になった。
<この星>って言うのは、、?
今いるここの事ではなく別の星の事なのだろうか?
話からすると何か事件が起こった様だけど、
今のこの星でその様な事は起こってはいないだろうし。
念のため過去の歴史を調べないといけないか・・
「ココロの夢の中に出てきた人の言ってた<この星>って
もしかして、
今居るここじゃないって気がする?」
『ん〜・・
よくわかんないの』
「そうかい? ならいいんだ
そういえば
ココロは歌が好きだったよね
よく歌うのかい?」
『歌! 大好きだよ
前いたとこでよく歌ってあげてたの』
「工場の人に?」
『ん〜ん?
もわ〜ってしてた光にだよ
とっても悲しそうだったの、
歌ってあげるとね
もわ〜って光が悲しくなくなるみたいなの』
「へぇ〜
どんな歌なんだい?」
『聞きたいの?
歌おうか! 歌!』
ココロは歌ってくれた、
心が癒されていく優しく美しい歌声だ
少し不思議な歌詞とメロディーは初めて聴く種類の曲に思えた。
その歌声は遠くまで届く様で、
気が付くと隣の車両にいた乗客もやって来ていた。
私も乗客達も静かにココロの歌声に聴き入って行った。
歌が終わると乗客達の拍手がわき上がり、
ココロはみんなの笑顔がとても嬉しそうだった。
「へぇ〜
ココロちゃんって言うのかい?
本当にいい歌聴かせてもらったよ」
歯車市に着く間にココロはすっかり人気者になった。
私は光る石と歯車市の事を知ってる者がいるか聞いてみた。
「光る石?
あぁ、聞いたことあるな」
一人の高齢の紳士が言った。
「その石が歯車市に運ばれてたらしいんですが、
どこに運ばれてたか聞いたことありませんか?」
「どこっていう話は聞いた事ないけどな
大分前・・
そうだ息子が出先から一度戻ってきた時だったから
10年位にはなるかな?
その頃に光る石の噂を息子から聞いたんだよ
今度光る石を研究してる人に会いに行くってさ」
「その研究者が誰かわかりますか?」
「んぁ、あぁそれなら覚えてるさ
歯車市にある大学の教授でな、
あそこらでアサン・ナファイル博士と言えば知らない人はおるまい」
―― アサン・ナファイル博士 ――
知っているぞ・・・!
若い頃に蒸気機関を発明したという天才じゃないか。
この汽車も彼の偉業の1つって事か・・
これはかなり期待出来そうだ。
私は博士の事を教えてくれた紳士に、
今朝市場で買ったチョコレートをお礼にあげた。
実は、ココロの分もと思って多目に買ったんだけど、
ネコ族はチョコレートが食べれないらしく余らしていたのだけど。
ココロはリュックサックから煮干しを出して食べていた。
次回から歯車市でのお話になります。
光る石とはなんなのでしょう?
えりまき ねぅ