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【26】純白の汽車

◇前回までのおはなし◇

宇宙船の出発まで、なんと後3日しかなかった。


ボク達がネルビーの入れてくれた紅茶でくつろいでいると、少ししてグレサトが帰ってきた。


「あー疲れたー」


そう言ってグレサトは椅子にドサッと座ると、どこから取り出したのかもうお茶をすすっていた。

あの人だけ紅茶じゃなくて、いつもお茶なんだな。

今日の服は妙に赤かった。


『いいなぁ〜

 グレサトちゃんって赤が似合って』


「へへ〜ッ、似合うでしょ?

 ココロちゃんに1つ教えてあげようか」


『なぁに?』


「服に自分を合わせるんじゃなくて

 服を自分に合わせるんだよ?

 合ってるって思えば自然と似合って来るもんなの」


『そうだったの?

 わかったの!』


ココロって本当は赤い色が好きなんだろうな。

でも、赤は似合わないんだって言ってたっけ・・。


あの赤い風船はよく似合ってたなぁ。


「それで

 どんな感じかね?

 グレサトくんの方の作業は」


「そだねぇ

 大体は塗り終わったから

 後は細かい所やって完成だね」


「でもペンキって

 乾くのに結構時間かからない?」


ペンキ塗り立ての紙を見たら、ボクは3日は触らない事にしている。

3日後に触っても、結局は手についちゃうんだけど。


「普通のペンキならね

 あのペンキは宇宙船用の特殊なペンキでね

 結構すぐ乾くんだ」


「へぇ〜

 そうなんですか

 まさかあれも博士の?」


「そう博士の!

 アレにはね〜宇宙船の外装と同じ素材の

 目には見えない位のこまか〜い粉が入っててね

 伸縮性にも耐久性にも優れ

 更に熱にも強いんだよ〜!」


博士って本当に、どこにでも出てくる人だな。


「大きな顕微鏡でそれの粉を見るとだな

 なんと蜂の巣の様な構造をしとるんだよ

 作るのには光る石を使わないと無理だったけど」


「なるほど〜

 僕も蜂の巣構造を顕微鏡で見てみたいです」


博士とネルビーは楽しそうに専門的な話しを始め、ボク達はまた取り残されてしまった。


またはじまった・・博士達も油断出来ないな。


「そうだ

 ネルビーちょっと」


グレサトがネルビーを呼び、博士との会話に割って入った。


「え?お茶?

 あ、もうない?」


「お茶はまだ、

 昨日の蛍なんだけどさ

 まだ取れないんだけど」


グレサトのあのお茶はネルビーが用意したのか。

いつも飲み物はネルビーがいつの間に持ってくるんだけど、さっきのグレサトへのお茶のタイミングって人間技とは思えないな。


「そっかぁ

 やっぱり吸い取らないとダメなのかな」


「これ、持ってきたから

 吸い取っておいてね」


そう言って、グレサトはネルビーに大きな袋を突きつけた。


「あ、うん・・」


ネルビーって、まるでお手伝いさんみたいだな。

ふと博士を見ると、あからさまに見ない様にしているのがおかしかった。

好奇心の塊の様な2人にも、グレサトは苦手な様だ。


「よし

 じゃぁ行こっか」


唐突にグレサトはボク達に言った、行き先はもちろん旅館ねじなのだろうけど。


「えっ?もう行くの?

 でも・・」


ボクはそう言って博士を見ると。


「もう大丈夫だよ

 グレサトくんをよろしくたのむ」


何が大丈夫なのか分からないけど、恐ろしい反応速度でよろしくされてしまったな。


『わかったの〜!』


ココロはそう言って敬礼をした。


グレサトは建物の入り口に、真っ白い汽車をつけた。

その汽車はグレサトの拘りの如く、全て白系の色で塗られていた。

ただやみくもに白いだけではなく、ちゃんとメリハリがあるのはさすがだと思った。


『わぁ〜まっ白いね』


「これって

 ネルビーの乗ってた赤い汽車と同じの?」


「どこが?

 こっちの方がずっとスリムじゃない

 さ、乗って」


そう言われるとこれは少し小さいな、よく見ると椅子も1列しかないし。

赤い汽車は椅子が2列あって、大勢乗れる様になってたっけ。


グレサトはゴーグルをすると、勢い良く白い汽車を走らせた。


街の中を走るひときわ派手なこの白い汽車は、とにかく人目を惹いた。

研究員に汽車を乗らせるのは宣伝の為もあるんだろうけど、ボクはこう注目を浴びるのはちょっと恥ずかしいな。

グレサトは全く気にしてない様だけど。


「この汽車の名前だけど

 エレガント号とエレガンス号とどっちがいいと思う?」


「えーと・・」


ボクはどっちでも似合わない気がしてちょっと困った。

ガント号、もしくはガンス号の方が彼女にはむしろ似合う様な。


「ガント号かガンス号の方が・・」


「え?なに?」


しまった、うっかり声に出ていた様だ。


「あ、そうだ

 ホワイトチョコレート号なんて言うのもおいしそうだよね

 ココロちゃんはチョコ好き?」


『あのね〜

 わたしチョコ食べられないの

 目が回るから』


「え?そうなんだ

 おいしいのに〜

 もったいないなぁ」


そう言うグレサトは、汽車の横についているダイヤルをグリグリと回転させて何かを調節していた。


「ネコ族やイヌ族は

 チョコって体質的に食べれないらしいんだよ

 ボクも知らなかったんだけどね」


『うん、食べれないの』


「へぇ〜、そなんだ

 知らなかったなぁ」


白い汽車はボクとココロがいつも乗っている赤いバスを追い抜きにかかった。

バスの後ろで薪をくべているいつものおじさんが、ボク達に気が付き手を振ってくれた。

ボクとココロは手を振り返した。


「じゃぁチョコはダメだなぁ

 エンジェルとかは?」


「いいんじゃない?

 ローズとかリリーとかコスモスとか花の名前も悪くないかもね」


「花か〜

 それもいいなぁ」


「メイル、ライトニング、ムーン、スターとかも綺麗な感じがしない?」


「いいねぇイメージもピッタリな気がする

 うーん…悩むなァ〜」


『びーだまは?

 きれいだよ?』


「ビー玉は綺麗だけど、ちょっとイメージが違うんだよなァ

 コロコロしてるし」


『あぅ…ココロはコロコロなのに…』


ココロはガックリした。


「明日多数決でも取ってみようかな

 エレガントやチョコレートも含めてね

 わたしに一番似合うのはどれ?って」


旅館ねじの前に到着すると、ボク達の乗ったガンス・・じゃなかった「白い汽車」にはさっそく近所から見物人が集まった。

子供達は「すげぇ〜」とか「乗っていい?」と言い、大人達は良くも悪くも好き勝手な事を言っていた。


当のグレサトは


「壊さないでね」


と、だけ言って旅館ねじに入って行った。


「あの赤い人

 あんた達の知り合いかい?」


恰幅のいい男性がボク達に声をかけてきた。


「え、えぇ・・

 ボク達は別件で来た外部の人間ですが

 あの人は大学の研究員で

 この汽車は今開発中の試作機だそうです」


詳しい事を聞かれても分からないので、ボクは外部の人間と言うのを強調した。


「へぇ〜

 こんな汽車なら欲しいなぁ」


「まだ未完成だそうですよ

 えっと、自動なんとか装置がまだだとかで・・

 博士はもっと良い物にするって言ってました


 あ、他に椅子が2列になってて

 たくさん人が乗れる汽車もありましたよ」


「ほぉ〜

 じゃぁ、今度大学に問い合わせてみようかなぁ」


「そうですね、詳しい事が聞けると思いますよ」


『してみるといいの』


博士の宣伝は一応成功そうだけど、グレサト自身は宣伝しようって気は全くなさそうだ。

まだ人だかりはあったけど、ボク達も隙を見て旅館ねじに入って行った。


あの汽車、何て名前になるのかな?

ボクの中では既に「ガンス号」と既に命名されているのだけどな。

TVで見たのですが、ついに宇宙エレベータを作るそうですねビックリです。

そのエレベータのケーブルの素材には、日本で開発された「カーボンナノチューブ」と言う素材を使うそうです。

今回のお話の素材に早速使わせてもらいました。

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