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【25】ひらめき

◇前回までのおはなし◇

視点主人公の脳裏にちらつく不安の影は、事実を信じる事でなんとか克服した様だった。

しかし、別の胸騒ぎは今もなお・・。

ボクはココロを愛している、ココロだってそれは同じだ。

今はその事実を信じて歩いてゆこう。


「それにしても

 君達って本当に仲が良くて羨ましいなぁ」


「え?そ、そうかな?」


「最初はココロちゃんと君って

 変な組み合わせだと思ってたけど

 今は凄くいい組み合わせだと思うよ」


『そう思う?

 やっぱり〜?』


ココロはいつもの様に、口に両手を当てて喜んで長い耳をくりんと回した。

それを見て、ボクとネルビーは笑った。


確かに、宇宙ネコと人間の組み合わせっておかしいんだろうけど。


「にしても…

 ココロちゃんが探してたものって、意外だったなぁ

 僕も別の星の何かだとばかり思っていたよ」


『ふむふむ?

 どう意外だったの?』


ボク達は博士の帰りを待ちながら、ネルビーが用意してくれた紅茶を飲みくつろいでいた。


「だってね〜

 話の流れからすると

 普通この星のものとは思わないもん

 君もビックリしてた位だしさ」


「うん、ボクもそう思ってたよ

 それまで別の星で待ってた訳だしね

 でも、いつ分かったんだい?」


そう、ボクも本当に意外だった。


『うーん…とね』


「ココロから依頼を受けた時かな?

 それともその後?」


『あのね・・

 わたしが捜し物をしてたのを思い出したのって

 とっても最近なの』


ココロは少し困った様な顔をして、申し訳なさそうな声で言った。


「あ、ごめん、そうだよね

 記憶がなかったんだからしょうがないよ」


『でもね

 覚えてなかったけど

 分かってたみたいなの

 よく階段で弾いてたの見てたから』


「階段で?

 なんだいそれ?」


階段で弾いてた?


ボクって階段なんかで弾いた事あったっけ?


「ふぅ〜!」


そこに、勢い良くドアが開き博士が戻って来た。


「あっ、博士!

 どこに行ってたんですか〜!

 工場長もとっくに帰っちゃいましたよ」


「すまんすまん!

 博士ね、ちょっと閃いちゃったんだよ

 ごめんね?」


博士は片目をつぶってウィンクしながら、左手の人差し指を立てキメのポーズを取って言った。


「…あの…何をですか?」


「ふふん、キミはわしがひらめいたものが

 なんだと思うかね?思うのかね?」


出たな、博士が二回くり返して言う時は、何かしたくてしょうがない時に決まっている。


「まぁ、引力の事ですよね

 あのタイミングですし」


ネルビーはそっけなく答えたが、


「そうッ!

 さすがネルビーくん!

 今日も冴えまくってるね〜!」


博士はこんな調子だ。


「わしの仮説はこうだ


 引力とは、川の流れの様なものであり

 宇宙船やロケットは、まさにその流れに逆らう魚である」


「はぁ‥魚ですか」


当然の様に、ボクには全く理解出来ない話だった。


「なるほど

 引力が流れる川の水って素晴らしい表現ですね」


ネルビーは理解してるらしい、それを見て博士はうんうんと頷いた。


「あッ、博士もしかして!

 川に行ってきたんじゃないですか?」


「おぉ、よく分かったね!

 やっぱ冴えてるなァ!」


博士の足元を見ると、膝あたりまでびしょびしょに濡れていた。

一体、博士は川で何をして来たんだろう。


「じゃぁね

 今すぐ実験してみようと思うんだ

 とりあえず、ネルビーくんの実験室に移動しようかね」


ボク達は言われるままに、ネルビーの実験室に移動した。

そこには、いつもの機材が置いてある、博士の実験はこの機材で出来るものらしい。


「ネルビーくん、

 あの仮説を実証する為には

 どう繋げばいいと思う?


 キミの思う通りにやってみてくれないかい?」


「えっ?

 うーん‥そうですね」


ネルビーは、考えつつも機材の接続を変え始めた。


「いや、ここは違うな

 えー…っと」


博士は試行錯誤しているネルビーの様子を、ニコニコしながら見守っている。


「博士?

 こんな感じでどうでしょう?」


「うん

 それじゃ実験をはじめようか」


台の上に置いてあった、あの羽をネルビーは手にとってボクに渡した。


「ちょっと手伝って

 これを付けて

 羽でここらをかざしててくれないかい?」


「あ、うん

 わかった」


ネルビーの示した机の上には、前に実験で使った折り紙が置いてあった。


ボクが折り紙の上にかざすと、ネルビーはメーターを見ながら、丸いつまみを少しずつ回転させて行った。

少しして、折り紙がカサッと動いたかと思うと、全ての折り紙がわさわさと羽に吸い付いた。


『うわぁ〜、面白いの!』


「びっくりした〜」


「やった…!」


「うん、いいね!

 ネルビーくんよくやった!」


「ありがとうございます!

 博士の仮説のおかげですよ

 ボクはただ逆にすればいいだけだと思ってましたから…」


博士はもしかすると、ネルビーが引力の解決の話を持ちかけたから、実験をネルビーにやらせたのだろうか。


二人の様子を見て、ポカンとしているボク達に博士は言った。


「おや?

 キミ達には、今の面白いのがわかったかな?」


『折り紙がくっついた事が面白いの?

 笑った方がいい?』


「いや、凄そうなのは分かりますが…」


「それじゃ、詳しく説明しようか?

 今のは何が面白いのかと言うと…」


「いぇ、せっかくだけど遠慮します」


「うそうそ

 実を言うとわしもまだ、よく解ってはいないんだよ

 こりゃ楽しみがまた増えたわい」


ふぅ、解ったとしても詳しい説明は遠慮したいな。

変な情熱をぶつけて来ようとするあたりは、ちょっとグレサトに似てる気がした。

やっぱり、彼らは同じ種類の人間なんだろう。


「ネルビーくん

 大至急、宇宙船の底に貼り付ける分を工場に特注してくれ」


「わかりました

 ちょっと行ってきます!」


ネルビーは、急ぎ足で研究室から出て行った。


「ネルビーって今から工場まで行くのですか?」


「いや、あの通信用の箱があっただろう?

 試験的に通信室を作ったんだけど

 連絡はそれで全部出来るんだよ

 おかげで超便利!」


「そ、そうなんですか

 早速活躍してますよねぇ

 やっぱ凄いなぁ…」


博士は表向きはふざけた人だけど、この世界への貢献度は大きい。

こういう人達が世界を作ってるんだろう、この博士に関しては、素直に関心すべきか悩む所だけど。


『ねぇねぇ

 どこまで声が届くの?』


ココロももうあの箱を理解した様だ。

つい最近まで<箱の中に誰か入っている>と、思っていた様だけど。


「うん、そうだなぁ

 今のとこ、届かなかった所はまだないんだけどね

 計算上はこの星なら、どこにでも届くんじゃないかな?」


「じゃぁ、宇宙にも届くんですね?」


「うん、方法と条件次第でね

 ネルビーくんが、宇宙船の位置をここに報告してくれる事になってる

 こっちはその方角に、アンテナを動かして送るんだよ

 別の星に行く場合は、1日の半分は届かない時間があるけどね〜」


「大丈夫かなぁ・・」


「何かあったら降りて来ればいいし

 今回はずっと、この上にいてもらう予定だから

 まぁ、大丈夫だと思うよ」


そう言って、博士は天井を指差した。


断定ではなく「思うよ」なのが気になったけど、ロケットは作りなれてる博士だしきっと大丈夫だろう…と思うことにした。


そういえば、ボク達は予定がどうなってるかを聞いてなかったな。


「博士、宇宙に行くのっていつですか?

 わりとすぐかなって感じはしてましたけど」


「あ、ごめん言ってなかったっけ?

 3日後だよ」


『やった〜!

 楽しみなの!』


「よかったねココロ…って

 3日〜〜〜ッ!?

 もうすぐじゃないですか!

 間に合うのかな・・」


後一週間位だとばかり思ってたらとんでもなかった。


「一応はもう全部出来てるからね

 グレサトくんの食事なんてあってもなくてもいいし


 キミとネルビーにはチョコレートで

 ココロには煮干でいいと思ってたから」


『わたし煮干大好きなの!』


あってもなくてもいいって…グレサトって期待されてないのかな。


そう言えば、今夜はグレサトが旅館ねじに晩御飯を食べに来るんだったっけ。

窓の外を見ると、日が傾き始めそろそろ夕方の景色になっていた。


エセ科学を書くのに、ウィキペディアを一生懸命読むはめになるとは、微塵にも思っていませんでした。

偉人さんありがとう^^


 えりまき ねぅ

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