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【24】愛する理由

◇前回までのおはなし◇

コバルトの六弦は、ココロがこの星にやって来た時に持っていたものだった。

色々な点が線になって行くものの、ボクは胸騒ぎを感じていた。


コバルトは、ココロがこの星に持ち込んだものと言うことが判った。


そして今もコバルトが存在していると言う事は、ココロはあの星へ降り立つ以前から持っていたものとも考えられる。

そうでなくては、この胸騒ぎが治まる気がしなかった。


ボクは、胸のつかえが無くなり気楽そうにしている工場長に、ココロがこの星に来た当時の事を聞いた。


「工場長、ココロがこの星に来た頃の事

 覚えている事を教えてもらえますか?」


「それはいいが、

 私があの工場に派遣されたのは8年程前でね…


 博士はそれ以前に

 既にココロちゃんを見つけていたのは聞いているかい?」


「えぇ、もちろん聞いてます

 工場長が知ってる情報も聞きたいので」


「わかった

 ココロちゃんが最初に来たときの事かぁ

 本当にビックリしたよ

 あの星は、生物が存在しない星にしか見えなかったからね」


「そうらしいですね

 ただ建物だけが存在していたとか」


工場長は頷き話を続けた。


「あの星にはココロちゃん以外、生命は存在していなかったよ

 ただ誰も居ない建物だけがあって

 そこら中に、蛍の様な光が飛んでいたんだ」


ボクはその様子を想像した。

他に誰もいない世界になってしまったあの星で、ココロは何を思っていたのだろう。

少なくとも、とてつもない孤独感を感じていたのは間違いないだろうな。

ボクはいつの間にかココロの手を握っていた。


「ひときわ光が集まる所があってね、

 その中心にココロちゃんがいたんだ

 私たちは何とかコンタクトが取れないかと、色々試してみたんだが…」


「光でコンタクトを取る事に成功したんですよね」


「そうだ

 光だけがあの門を通り抜けられるからね

 何日もココロちゃんに呼びかけて

 やっとこちらに来てもらう事に成功したんだよ」


「ふむふむ

 因みに、どんな方法でメッセージを送ったんですか?」


「それはね

 紙に絵とか文字を書いて、

 その裏から光を当てたんだよ

 ココロちゃんも同じ様に返して来たな」


「そうなんですか

 それで、ココロはこっちにはすぐ来たんですか?」


「いや、すぐではなかったね

 なんでも捜し物があるらしくて


 最終的には、こちらに来ても継続出来るって事で解決したんだが」


「ココロはその時の記憶ってある?」


『全然覚えてないの…

 覚えてるのは、工場で目が覚めたら

 周りにいっぱい人がいた事かな』


やはり、ココロは門を通り抜ける時に記憶を失った様だった。



「工場長、

 ココロが門をくぐり抜ける時ってどんな感じでした?」


「う〜ん…

 ココロちゃんはそのまま歩いて通り抜けてたな

 私たちも何度も試したが

 誰も門を通り抜けられなかったと言うのに

 本当に不思議だったよ」


やっぱりここらの話は博士の話と同じだな、なぜ工場裏に住むことになったかを聞こう。


「あの工場裏に、ココロが住んでいた理由は何ですか?

 捜し物があるのなら、工場に居た方がよさそうなのに」


「それなんだけどね

 ココロちゃんは、最初は門の周りにいたんだ

 しかし、ある問題が起こるようになってしまったんだ」


ボクはうっかりココロの能力を忘れていた。


「あっそうか…

 何が起こったか大体わかりました」


「そうなんだ

 門の近くで作業する者に変化が起こってね

 仕方なく問題が解決するまで、

 ココロちゃんには離れていてもらったんだよ」


「あの工場の当時の警備の方の話によると

 ココロが工場裏に住みだしたのはもう少し後らしいですね

 それまではどこに居たんですか?」


「博士が駅の近くに住居を手配してくれてて

 そこに住んでいたそうだよ」


駅の近くか、もしかすると結構ボクの近くにいたのかもしれないな。


「ねぇ、その時にココロが住んでいた所って

 あの事務所と近かった?」


『うん、近いよ

 走れば息をガマン出来る位なの』


「そうだったんだ

 なら会ってても不思議じゃないのに…」


あれ…?


ボクはふと、過去にココロと会っていたかもしれない気がしていた。

そんな気がするんだけど、確実な記憶は思い出せない。

何かひっかかる様な気はするんだけど、ただの気のせいなのだろうか。


ボクは6年程前に、あそこであの事務所を始めたんだ。

あの頃はよく仕事に失敗してたっけ…。


ボクは未熟な頃を思い出し、頭を抱えて唸りたくなった。


「おや?

 どうかしたかい?」


工場長が声をかけてくれ、ハッと我に戻った。


「と、失礼…

 その後、1年程でココロは工場裏に戻ったのですよね?

 それは解決法が解ったのですか?」


「いや…解決はしなかったんだが


 ちょっと事情が変わってね

 その頃から、門の接点が段々と狭まって来てしまったんだよ」


「門の先が・・?

 と、言うことはあの星が消滅しはじめたって事でしょうか」


「どうやらそういう事らしいね


 私には門が閉まり次第の移動命令が出てしまったので

 ココロちゃんには…

 後始末をお願いする事になってしまった様なね」


なるほど、ココロに後始末をやらせておいて、そのまま放置してたと言う事か。

今工場長が話した内容には嘘を感じなかったけど、コバルトの件といい、この後始末の件といい、この工場長は全てが信頼出来る人物ではなさそうだな。


「最後に1つ聞きたいのですが

 ココロの捜し物って、

 工場裏でも出来るものだったのでしょうか?」


それを言うと、工場長は唐突に急用を思い出してそのまま帰ってしまった。

ボク達はあっけにとられ、そんな工場長を見送った。


工場長の様子からその答えは解るけど、実際のとこココロはどうなんだろうな。


「なんか…

 工場長ずいぶん慌てて帰ったよね」


「うんまぁ

 答えはもらえたからいいんだけど…」


そう言って、ボクとネルビーはお手上げの様子を示した。


「ねぇ、ココロ」


『なーに?』


「ココロの捜し物ってさ

 間違いなくあの星の何かなのは判ったけど

 工場裏にいても探せるものだった?」


ココロが探していた物は、きっと凄く大切なもののはずだ。


『うん、探せたよ

 だってわたし見つけたもの』


「え?!

 それって一体何だったの?」


『それはね

 わたしを愛してくれる人なの


 わたしの光…それは、あなただから』


「!!」


確かにボクはココロを愛している。

でも、ボクはその言葉の意味を全て理解出来なかった。


捜し物はあの星にあったはずなのに、なぜそれがボクになるのかと言う事。

「わたしの光」とは?比喩的表現?それとも本当に光るもの?



──魅了されし者



唐突に思い出した、あの烙印の様な言葉



まさか…!



もしかすると、真実はボクが信じたくない事なのかもしれない。

それでも、この謎は絶対に解かなくてはいけない気がする。


だって、ボクがココロを愛してるのは事実なのだから。


例えそれに理由があったとしても、事実には変わらないのだから。


希望と不安、様々な歯車が視点主人公の周りで動き出しました。

時間は止まることなく過ぎていくのです。


 えりまき ねぅ

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