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【23】胸騒ぎ

またちょっと日にちが空いてしまいました。

やっとお休みに入ったので、落ち着いて書いていきたいと思います。


◇前回までのおはなし◇

宇宙船<希望の魚>は、ちゃくちゃくと完成に向かって行った。


ボク達の乗った宇宙船<希望の魚>は、歯車市の駅を大きく一回りして宇宙船の工場へと戻った。


その途中ネルビーが、工場とあの箱を使って通信していた為か、

工場に戻る頃、工員達が建物の外から出て迎えてくれた。

彼らもやっぱり、自分達で作った宇宙船が飛んだのがうれしいのだろう。


「操縦はもうバッチリだね

 後は、彼らにバトンタッチしようか」


工員達も待ちかねていた様で、早速作業にかかった。

博士とネルビーは、丁度今駆けつけたばかりの、新聞社らしき集団から取材を受けている様だった。

前もって連絡しないでおくのは、いきなり驚かせたいからなんだろう、これは博士らしいな。

大学に戻るのは、あの取材が終わってからになりそうだ。


「そういえば、

 グレサトが何の作業をするのかって、まだ確かめてなかったっけね」


『うん、仕上げ!

 何するんだろうね〜』


ボク達はグレサトの姿を探した。


『あ、いたよ』


ココロが指差した先には、たくさんの缶を台車に載せて運んでいるグレサトと、ここの工員達がいた。

その台車は、<希望の魚>の周辺に足場を作っている、集団の方に向かっていた。

足場の前に台車を停めると、次々と缶を開け始め大きなバケツに中身を入れている。

缶の中身はペンキの様だった。


「あっそっか!

 グレサト達はきっと

 この宇宙船に色を塗ろうとしてるんだよ」


『よかった〜

 やっぱり色塗るんだね

 まっ白いお魚じゃなくて良かったの』


そう、今の<希望の魚>は魚らしい色はなく真っ白なのだ。

いくつもの色を塗るのだろう、グレサト達は何色もの色を混ぜて作っている。


足場はあっと言う間に組まれ、船体にはテープが貼られていった。

色を塗りたくない窓などに、ペンキがかからない様にマスキング処理を施す作業をしてる。

その傍らでグレサトが、工員たちに完成予想図らしい紙を見せながら説明していた。

近づけば完成予想がわかるけれど、ここは後のお楽しみにしておこう。


彼らの、目まぐるしい作業の様子見ているうちに、博士達の取材が終わった様だ。

後の作業は彼らにお願いして、ボク達は大学に戻った。


「さて、

 工場長が来る前に

 残件を進めておこうかね」


そうだ、引力の件がまだだったんだ。

ココロの記憶の事もあるけど、それは時間が押してないから工場長が来た後にしよう。


「引力を説明するには、ちょっと難しい話が必要なんだけど

 ココロは引力ってどういうもんだと思う?」


『ん〜と

 こっちにおいで〜って感じなの

 おいで〜ってたくさん呼ぶと引力が出来るんだって』


「なんとまぁ‥

 質量を持つものには引力が発生するんだけどね、

 ココロは全くそのままの事を言っとるよ」


「昨日のあれは、つまり

 壁がおいでおいでしてたんですかねぇ?」


「そういう事になるかな

 だがね、相当の質量がなきゃあれだけの引力は生まれないんだよ

 例えばこの星位の固まりがないとね」


「どういう事なんですか?」


「原理は分からないけど

 ココロの言うおいでおいでをたくさんするのには、

 必ずしも質量は必要ではないって事だな


 質量による引力の発生は、副産物という裏づけにもなるのか‥

 つまり、質量を持つ物質に、影響を与える事が出来る何かを特定出来れば‥」


博士はそのままブツブツ言って、人差し指を空中にさす仕草で何かを考え始めてしまった。


「博士?」


『博士はどうしたの?』


「ん〜、たまにあるんだよ…

 1度考え始めると、誰が話しかけてもダメなんだよね」


「そうかッ!」


博士は大きな声を出して、バタバタとどっかへ走って行ってしまった。


「いつもあんな感じなんだよ

 工場長が来るまでには間に合いそうもないね」


「そうなんだ、

 まぁ、工場長に聞くのはボクからだから大丈夫だよ」


「でも困ったな〜

 博士はもう無理そうだし」


ネルビーは両手のひらを天井に向けて、肩をすぼめて見せた。


「あのさ

 ココロの記憶なんだけど」


「ココロちゃんの記憶?」


『むぅ?』


「昨日気を失った後に、

 ココロの記憶が1つ戻ったみたいなんだよ」


「そうなのかい?

 それはよかったじゃないか」


『あ、歌!

 歌を想い出したの』


「へぇ〜歌かぁ

 どんな歌なんだい?」


『聞きたい?

 聞きたいの?』


ココロは口に手を当てて、嬉しそうに言った。

そうなると、ネルビーには聞くとしか選択肢は残されていなかった。

ボクはあの曲をコバルトで奏で、ココロはそれに合わせて歌った。


「へぇ〜いい歌だよねぇ

 ココロちゃん良かったね

 こんないい歌が思い出せて」


──その時だった


「そ‥それは!」


いつの間にか研究室の入り口に、見知らぬ男性が立っていた。


「あ、工場長

 よくいらっしゃいました」


この男性が工場長らしい、キッチリとした身なりは外回りの帰りだろうか。


「あぁ、

 ちょっと早く仕事の都合がついてね」


「紹介するね

 こちらが工場長のメルダールさん」


「おぉ、宇宙ネコちゃん元気そうだね

 今はココロちゃんって言うんだってね」


『そうなの〜』


やはり、ココロとは面識があるらしいな。

この人は、ボクが知らない頃のココロを知ってるんだ。


「で、こちらがキミの記憶の調査をしてくれてる方だね?

 博士から一通り聞いているよ」


「はじめまして工場長」


ボクは挨拶をした


「ところでキミのそれは‥」


「あ、コバルトですか?

 駅の近くの古物屋で手に入れたものです、

 工場長はこれをご存知で?」


「あ‥あぁッ!いや‥

 そうか、たぶんそこで見たんだな

 うん、きっとそうだ」


コバルトを見た工場長は少しうろたえていた、見たことあるだけでこれ程の反応をするのはおかしいな。

もしかして、これって工場長の想い出の品なのだろうか。


「工場長?

 このコバルトに思い当たる事があったら

 何でも言ってもらえますか?」


「あぁ、いや…

 昔、それと似たものを持っていたんだが

 どうもうまく弾けなくてね、部下にあげてしまったんだが‥

 まさかそれだったとはね」


あれ?さっきと言ってる事が違うぞ、ボクはちょっと推理の匂いを感じた。


「ちょっと手に持ってよくみてもらえますか?」


「あ、うん」


ボクは工場長にコバルトを渡した。

工場長はコバルトを弾こうとして、それが弾けない事に気がつくと手を止めた。


「間違いない‥これだ‥

 私が昔持っていたものに間違いないよ」


やっぱりそうか、前言と違う事はあえてつっこまないでおこう。


「驚きました

 これの元の持ち主は工場長だったのですね

 ところで工場長はどこでこれをお求めに?」


「いや‥えーと」


この工場長、コバルトの事を何か知ってるな


「実はですね、ココロの過去の記憶を取り戻す調査をしてるうちに

 このコバルトに行き当たったんです

 ボクはね、このコバルトがココロと関係あると思ってるのですよ」


『‥‥』


「‥‥」


ココロもネルビーも、半分出まかせで言ったボクの言葉にぽかんとしていた。


そして工場長は──


「そうか、そこまで調べてるんだ

 絶対に怒らないって…約束してくれる?」


かかった…!工場長って案外人がいいんだな


「やはりご存知でしたか‥

 でも、怒るなんてとんでもないですよ

 ココロの為にぜひおっしゃって下さい」


「えとね‥

 その楽器‥コバルトなんだがね

 その、、ココロちゃんが持ってたんだよ」


──な、なんだってーッ!?


こんな大事な物を、なぜ古物屋に売るんだ‥この人は!

偶然見つけて手に入れていたから良かったものの、普通の人には弾けない楽器みたいだし、もし捨てられていたら…。


「やっぱりそうでしたか」


ボクは物凄く叫びたい気持ちを抑え、平静を装った。

その訳は、ココロがボクの手をつかんでニコニコしていたからだった。


「すまん!ココロちゃん!

 余りにそれが綺麗でね‥つい‥」


『大丈夫!

 ちゃぁんと戻って来たからいいの』


「工場長?

 ココロがこのコバルトを持っていたって事は

 やっぱり、あの星のものなのでしょうか?」


工場長はギクリとした


「そ、それはどうかな

 私も最初から見てた訳じゃないからね」


匂う‥匂うぞ


そもそもこの工場長なら、心を読めるココロでなくとも色々と読めてしまうのだけど。


「あれ?

 博士が工場長が立ち会っていた、と言ってましたが違いましたか

 仕方ない、当時の関係者を一人っつあたってみようかな‥」


「アァッ!

 そうだそうだ、立ち会ったかもしれんな

 ハハハ‥昔の事なんでなぁ」


「あ、良かった思い出しましたか

 すると、これはやっぱりあの星の?」


「そう‥

 その楽器はココロちゃんが‥この星に来たときに持っていたものだよ

 ホントにスマン!


 ついね‥すぐいけない事に気がついて、部下に戻すようにって渡したんだ

 ちゃんと戻してくれると思ってたんだけど、まさか売ってしまっていたとは‥」


…さっきは部下にあげたって言ってた様な


それに、部下にも戻せなんて言ってなかったんだろうな。

そう思ってたなら、最初にコバルトを見た時点で戻った事を確認出来てるはずだから。

本当に部下に渡したのかも怪しいけど、これ以上は突っ込まないでおこう。


それにしても、あの星の物質は、あの星が消滅した事で存在出来なくなっているはずだ。

しかし、コバルトは今ここに存在している。


──これは一体どういう事だ?


もしコバルトが本当にあの星のものだとしたら、夢で見たあの知らない顔が持っていた六弦は、このコバルトなのかもしれない。


ココロの記憶が戻っていない今の状況では、あの夢を裏付けるものは何もないんだけど。

もし、ボクが思っている事が全てその通りなら‥

ボクはひどく胸騒ぎを感じた。


ボク達の物語の歯車は、加速度を増して回転していく様だった。


ちょっとエセ科学に傾き始めてしまいました。


重力に手をだすすべきか否かの辺りに、すっごく時間をかけてしまいました。(時間にして8割程‥出来ても出来なくてもストーリー上は問題なさそうです)


 えりまき ねぅ

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