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【21】蛍

◇前回までのおはなし◇

ボクはココロの過去を見ている博士にココロが接触すれば、過去の記憶が取り戻せるかもしれないと思った。

しかし、その結果ココロは気を失ってしまった。


気を取り戻したココロを、ずっとボクは抱きしめて泣いていた。


「ココロ…大丈夫?

 ごめんね、ボクがあんな事言わなければ」


まだ目が少し虚ろな状態のココロの頭をそっとなでた時、一瞬蛍の様なものが光って飛んだような気がした。

辺りを見渡してみたけど、蛍みたいなものは見つからなかった。


「今…

 ココロから蛍みたいなものが飛びませんでした?」


「ん?

 いや、ずっと見てたけど気が付かなかったな」


「僕も見なかったな〜

 蛍ってグレサトの服についてる奴?」


「あの蛍が来たらすぐわかるよ…

 だってほらッ!」


グレサトの服には、今日の実験でついたたくさんの青白い光がまだ光っていた。


──気のせいだったか


「ココロは一体何を見たんだろうなぁ…

 あの工場の記憶の何かに触れた様だったが」


その口調から、博士も少し責任を感じているのが伺えた。


「そういえば、

 大きな光って言ってましたね

 あの工場にそういうものがあったんですか?」


「いやぁ、蛍みたいに小さい光はたくさんあったと思うがね

 ココロが言った様な大きな光は記憶にはないんだよ」


「それが何なのかは

 ココロちゃんが落ち着くのを待ってからでも遅くはないですね」


ココロはゆっくりと顔を上げ、ボクの顔を見て微笑んだ。


「良かったの

 あなたが側にいてくれて

 もう大丈夫だから、泣かないで」


「良かった…」


本当にココロが無事でいてくれて良かった。

ココロが気を失っていた時間はそれ程長くはないけど、

このままずっと目を覚まさなかったらと、心配でならなかった。


「ふ〜

 どうやらココロは無事の様だね」


そして博士は冷や汗をぬぐった、彼もすごく心配だったのだろう。


「ココロちゃんが無事でホントによかったよ

 でも、大きな光って一体何を見たんだい?」


『んと、

 蛍みたいな光がいっぱい飛んでて

 それが出てくる方に行ってみたら

 大きな光があったの』


「光が出てくる方か…

 それはあの門の事かもしれんな」


門と言った博士には、何か心当たりがあるらしい


「門と言うと…

 あの星との接点の事ですか?」


「そう、ココロはきっと

 その<接点の門>を超えて行ってしまったのかもしれないな〜」


「<接点の門>…?

 詳しく話してもらえませんか?」


博士は<接点の門>の事を話してくれた。



──<接点の門>とは


 あの星との接点を閉じる為に取り付けられた、カガミの様に反射する素材で作られた門。

 その接点は光のみが相互に通過出来る。


 その門の先は、この星と重なって存在していたあの星で、

 既に非常に不安定で何が起こるか予測出来ない状況。


 あの星は、内部の位置情報が不確定になっていた為、容易に接点の位置が変更可能になっていたらしい。

 これは以前に博士が言っていた通り。


 博士は、あの星との接点の位置を変える事を、<チャンネルを変える>と言う言葉を使って説明した。

 位置を変える方法は、余りにも専門的なのか省かれたが、

 とにかくその<チャンネルを変える>事で、門の向こう側を別の位置にする事が出来るのだそうだ。


──蛍の様な光とは


 あの光は、残留思念が光の様な状態になっていたもの。


 ココロが作り出したあの蛍も、工場から出ていた光と同じ状態になったエネルギーだと言う。

 元は残留思念や他の何かだったのが、形を変えて蛍の様に見えるらしい。

 その蛍の様な光を、ネルビーが実験で使っていたあの板を使って集め、結晶化したものがあの光る石だ。


──門の先は


 そこを境に相互に別の星、ココロはかつてその先にいた。


 その星は生物の影は見られず、文明は一部は消滅していたものの、大部分そのままの状態で存在していた。

 生物で存在していたのは、ただ一人ココロのみだった。


 そのココロはこちらから送った、光の呼びかけに応じて門をくぐってこちら側へ来たらしい。

 光ではないココロがなぜ通過出来たのかは不明だが、恐らくそれもココロの能力と思われる。



難しくてよくは解らないけど、あの工場の事はこれで大部分だそうだ


「あ〜、そう言えばね…」


博士は何か思いだした様に言った


「ココロがこっちに来たときにはね

 わしは丁度立ち会ってはいなかったんだよ

 丁度夜中でわし寝てたから」


「あ、そうなんですか

 誰が立ち会ってたか分かります?」


「うーん、工場長はいたみたいだな

 後でちょっと聞いてみるか」


あの工場の工場長か、その時にココロとも会話しているかもしれないな。


「さて、そろそろ遅いし今日は帰って

 この続きは明日にしよう

 ココロも休ませなきゃいかんだろう?」


「あ、そうですね

 じゃぁ続きは明日にしましょう」


『やったー!』


「ココロは、まるで授業が終わった生徒みたいだなぁ〜」


色々あったけどこんな締めくくりで場が和み、ボク達は旅館ねじに戻って行った。


食事の後、おかみさんに明日はグレサトの分も用意してくれる様に頼み部屋に戻った。


実はボクはちょっと気になる事があった。


「気のせいかな?

 ココロの雰囲気がちょっと変わった気がするんだけど」


『雰囲気?

 変わったのかな〜?』


ボクはココロの様子の変化は、ココロが疲れているせいだと思っていたけど、それだけじゃない気がしていた。

ココロが気を失っていた間に、何かがあったのかな?

でも、それを聞くのは明日にしよう。


部屋の窓から見える星が輝いている、歯車市の駅前は夜でも灯りが多くて星が見えないけど、旅館ねじの辺りの空は星がよく見える。

ボク達はあの星空に行くんだな。


コバルトの六弦を手に取り、夢で見た知らない街で聞いたあの曲を弾いた。


──すると…


ココロが曲に合わせて歌を歌い出した、ボクが夢の中で聞いたあの歌声が今ここに聞こえて来ている。


これは…間違いない!あの夢で聞いた歌だ…!


「ココロ?

 この歌思い出したの?」


『なんでだろぅ

 思い出したみたいなの』


自然に思い出したと言う可能性もなくはないけれど、

ココロが歌を思い出せたきっかけがあるとすれば、あの気を失った事以外にはないはずだ。


「この曲って多分、

 ココロがあの星にいた時に歌っていた歌なんだと思うよ」


『きっとそうなの

 もう1つのまるで

 わたしは何してたのかな〜?』



──知らない顔と楽しそうに暮らしてた



ココロはいつかそれを思い出すのかもしれない。


でも、ボクはこれからもココロとずっと一緒にいるよ。


どんな事があっても。


だって、ボクはココロが大好きで、ココロもボクが大好きなんだから。


この物語では、今までもたまにあった様に登場人物が、微妙にだったり、唐突にだったり変化します(視点の一人称の変化など)


わたし的にはちょっと難しい様で、うまく伝えられるといいのですが。

むしろ、わざわざ言わないでもいいんでしょうか?


 えりまき ねぅ

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