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【18】もう1人の研究員

◇前回までのおはなし◇

ボク達は魚型の宇宙船、<希望の魚>に乗れる事になった。

なんとボクは操縦をまかされたのだった。

「それじゃおかみさん、いってきます」

『いってくるの〜!』


「いってらっしゃい、がんばっといで」


朝食を終えると、ボク達は旅館ねじのおかみさんに挨拶をして大学へ向かった。


スポンサーが出来たお陰で、ボク達の費用は全面負担される事になった。


今さらながら言うと、ボクは町の生活課の調査員に一般で登録している調査員で、

町民が調査依頼を町の生活課にすると、登録されている調査員に斡旋される仕組みだ。


つまり、ココロも最初に町の生活課に依頼を出したと言う事になる。

依頼人は、町民であれば無料なので割と気軽に利用されるんだけど、その内容はもちろん様々だった。

人探しから仕事のお手伝い、更には留守番だって場合もある。


そんな様々な仕事のの報酬は、終了後に内容を審査され町から支払われる。

この星で暮らすのにお金は余りかからない為、報酬も大した事はないんだけど…。

しかし、出張するとなると交通費や宿泊費がかかるので、実は余り懐には優しくはないのだ。


今回、大学から正式に実験の費用が日割りで出て、今までかかった費用も全て請求出来ると言うのは正直助かる。

ボクは今までの費用の請求書をネルビーに手渡した。


「交通費が15銭に、宿泊費が10銭?

 これだけでいいの?」


「うん、その前はずっと歩きだったからね

 こっちに来るまでは全然かかってないんだよ」


『そうなの』


「そっかぁ、歯車市って何するのもお金かかるもんね。


 で、キミ達は今回臨時の研究員になってもらう事になるんだけど、

 一応これは決まりだから説明するとね

 一人1日50銭支払われるんだ、2人だから1円だね

 とりあえず昨日の分を今渡すよ、ここにサインして」


「えっ?そんなにもらえるの?」


「まぁ物が物だからね〜

 さすがに宇宙船だから普通よりちょっと高めなのさ

 じゃ、今回の請求は、次回の時の支払いになるけどいいよね?」


「うん」


ボクとココロは1円を受け取り、書類にサインした。


「でも部屋は用意しなくて良かったの?」


そう、ボク達は旅館ねじから通う事にした。

理由はねじのおかみさんが作った、あのおいしい料理が食べたいからなんだけど。


『ねじのおかみさんの料理はね

 すっごくおいしいの〜』


そう言ってココロは耳をくりんと回した、ココロも気に入ってる様だ


「ねじってあの古い旅館だよね?

 たまに大学に泊まりで来るお客さんに駅の近くだし、

 そこを紹介してるんだけど、結構評判いいんだよなぁ

 建物はちょっと古いけどね」


なるほど、あの料理ならではの評判だ。


「あ、そうだ

 昨日の青い人も研究員なのかな?」


「あぁ、グレサトでしょ?

 あの人は一応そうなんだけど…何なんだろう・・

 実は僕もあんまりよく分かってないんだよ

 ちょっと前に博士が連れて来たんだけど」


「あの人も何か研究してるの?」


「どうかな?

 焼き芋焼いたりはしてたけど

 それが研究なのかどうか」


そこにグレサトがやって来た。

今日の服装は妙に黒かった。


「焼き芋の話?」


「あぁ、前に焼き芋焼いてたでしょ?

 あれって何かの研究だったのかなって話してたんだよ」


「あれね、単に食べたかったから

 それだけの為に作ったのがあれ」


グレサトが指さした先には、ホコリだらけになった鍋が戸棚の上に置いてあった。

ボクが蓋を開けると、その中には丸い小石がたくさん敷き詰められていた。


「グレサトって何の研究してるの?」


「研究?」


ネルビーの質問に、グレサトはポカンとした表情で言った。


「だってここの研究員だよね?

 何か研究したいからいるんでしょ?」


「研究と言うなら、

 この世界のカラーデザインが、いつも一部だけおかしい事について…とか」


「蝶つがいとか?」


「そだね

 後は、魚の絵を描いたり」


魚って…もしかして


「そういえば<希望の魚>のデザインをしてもらったっけ」


ネルビーが本棚から画用紙を出してきた。

それは、確かにあの<希望の魚>だったが、どことなくずんぐりしていて余りうまい絵ではなかった。

味があると言えばある気がするけど。


「ネルビー、今日はどうするの?」


「あ、今日も昨日と同じ様にやってもらおうかな?

 ココロちゃんまたお願いね」


『うん』


ボク達はネルビーの研究室に向かった。

グレサトも付いてきたけど、例のインスパイアの為かな?

ネルビーの奥の部屋へ入ると、ネルビーは機械を繋いだりして準備を始め、ボクは鳥の羽の様な物を手に付けて窓を開けた。

グレサトはそこらにある背もたれのない丸椅子に座って、メモにこの部屋の図の様な物を描いている。


『きれいなの』


ココロは青く光る水の入った瓶を見て言った。

そう言えばこの瓶の中には、歯車市の全てに匹敵する程のエネルギーが入っているんだっけ。


「でしょう?

 この瓶は宇宙船に、後2〜3個用意するつもりだよ

 そのままで灯りにもなるし、

 なるべく用意出来るものは用意しておきたいからね」


ネルビーはそう言って、ボクの腕に付けた羽にホースを繋いでヨシと頷いた。


「じゃぁココロちゃん

 今日もまたお友達のイメージでみて」


『わかったの』


ココロがYの字に手を伸ばすと、青白い蛍が出現した。

青白い光は、いつもの様に板に吸着されるはず…と思ったら、何故かみんなグレサトの方に飛んでいってしまった。


「わぁっ!なにこれ!?

 シッシッ!」


グレサトは虫を追い払う様な仕草で、青白い蛍を追い払おうとした。


「あれ!?何で?」


ネルビーは不思議そうに言った。

何故か青白い光は板には飛ばず、グレサトの服にくっついてしまい光っている。


「ん〜、もしかして色かも…

 ちょっとグレサトは部屋の外に出ておいてもらえるかな?」


「これッ!とれないけど…」


「そのうち消えると思う…多分」


言われた通りに、グレサトは部屋の外に出て行った。

そうすると、やっと蛍は板に吸収されて行った。


ボクは昨日の様に、翼をコントロールする練習をしていると、ネルビーが折り紙を持ってきた。

そして、折り紙をココロの側に並べ始めた。

折り紙は、赤や青や黄色など色々な色がある。


「多分色によって吸収力が変わるんだと思うんだけど

 どの色が引きつけやすいのか調べるね」


すると、やはり黒い折り紙に一番光が集まっていた。


『蛍は黒が好きなの?』


「そうみたいだね、

 この板は黒く塗った方がいいかもしれないなぁ

 グレサトのお陰で板を遠くに離しても、吸着率を上げる方法がわかったよ」


偶然だろうけど、彼女に来てもらって問題が1つ解決した様だ。


「そう言えば、今日博士は?」


『また箱の中に入ったの?』


「今日は<希望の魚>に、昨日作ったあの試作品の箱を取り付けに行ってるよ

 スッター教授と一緒にね

 音楽にも使えそうなんだって」


博士も頑張ってるんだな、ボクも操縦の練習頑張らないと。


「そういえば宇宙に行くんだっけ?

 宇宙で何食べんの?」


戸の隙間から、グレサトが顔を出して言った。


「食べ物?…あーッ!!」


ネルビーが大きな声を出した。


『驚いたの!』


その様子からすると、どうやら食べ物の事は考えていなかった様だけど、そんなに何日も行くのかな?


「今回は、一応この星の再調査が名目だから、

 少しガマンすればいいんだろうけど

 スポンサーの目的は多分違うからね

 困ったな・・」


「それさ、わたしがやろっか?

 食べ物の研究」


「やってもらうと助かるな

 じゃぁお願いするよ」


グレサトは、自分が役に立ててない事を余り気にしてはいなそうだけど、一応研究員らしい事をしてくれる様だ。


「それでね〜!

 キミ達って旅館ねじに泊まってるんだよね?

 食べ物の研究したいから、旅館ねじの食事を食べたいんだけどいいよね?

 同時に取材も出来るし、いいことづくしの味づくし♪」


『賑やかそうで楽しみなの』


ココロは喜んでいるけど、ボクは「単に食べたかったから」っていう台詞を思い出していた。

今まで余りまったりした話がなかったので、呼吸を入れつつキャラで遊んでみようかと思います。


 えりまき ねぅ

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