【17】オリジナルの情熱
えりまき ねぅです。
ここまでも見て頂き感謝感激です。
◇前回までのおはなし◇
ボク達は魚型の宇宙船<希望の魚>を完成すべく、博士とネルビーの実験に付き合う事になった。
──再び博士の研究室
「ネルビーくん、実験の方はうまくいった様だね」
「そうですね、
まだ何回も実験しないといけないと思いますが、調整が出来るようにしないといけないみたいです」
「ふむ、
だが実験の成果は他にもありそうだよね
この短時間での君たちの雰囲気の変化とか」
博士はそこに興味がある様だ。
「それが解らないんですよね・・
…なんでだろう」
「どういう手順で実験したか、わしに詳しく聞かせてくれるかね?」
ネルビーは博士にさっきの実験の手順を説明した。
「宇宙船の時は掴むイメージで、今回は友達になるイメージね
そして、ターゲットのエネルギーと同じ空間に君たちがいた訳か
わしの専門じゃないので彼女にまかせるよ」
そう言って、博士はずっとお茶を飲んでいる変な女の子を指さした。
全身が妙に青い服装で、その服のはじっこは必ずシュッと長くとがっている。
複数の違った青を組み合わせてある為か、同色でも「のぺーっ」とした感じはなく、全身が「とがってる」というイメージだ。
ボクは博士の知り合いって、みんな変な服装をしているんだなと思った。
「白のデザインとか言っておいて、
裏は赤いとかありえないよね」
これは彼女のデザインへの主張だろうか?
とにかく唐突すぎて何の事かさっぱりわからない。
「え?なんの事?」
「バッグとか、オシャレなデザインの服も機械もだけどさ
白なら全部白系で統一してほしいのよね
80%は白いのに、肝心な所をつぎはぎにしちゃったら全部台無しになっちゃうと思わない?」
ボクはあっけにとられていたけど、ココロはふむふむと言って頷いていた。
博士とネルビーは馴れているのか聞いてないフリをしていた。
「これだけは言いたい!
わたしは機械だからって、何でも銀色に塗っちゃうのってナンセンス!だって思うの」
「はぁ…そ、そうかもね」
「ホラッ!これ見てよ」
彼女はバッグから小さな箱を取り出した
それは白い綺麗な箱だった、アクセサリーとかを入れる箱だろうか?
「ココッ!ほらっ!」
彼女が指を指した部分は箱のフタに付いている蝶つがいだった。
「えっと、そこがどうかしたの?」
「何でココだけ銀色なわけ!?
全てのデザインをここがこわしてる!
手を抜かず色を塗ればいいのに」
ボクは何の為に彼女が呼ばれたんだったか、既におぼろげになって来ていた。
「あぁ・・まぁそう言えばそうかな?」
ボクは博士とネルビーをチラッと見て、助けを求める視線を送った・・
が、見事に目を逸らされてしまった。
「しかも!!!」
彼女はその白い箱をパカッと開けて見せた、その中には何本かのペンが入っていた。
「これってありえなくない?
フタに付いてるカガミの周りだけ何で赤いの?
他の部分は白いのに!」
大分長くなってきたな・・何とかして話を変えよう。
「あの、博士に頼まれて来てくれたんだったよね?」
「この世界のデザインって絶対狂ってる・・え?
あ、そうだったっけ」
「ゴホン、えっとね〜
彼女の名前はグレサト、
油断するとオリジナルの情熱をぶつけて来るちょっと変わった娘だ」
今のがその「オリジナルの情熱」だったのか?
やっとここで、ネルビーが説明をしてくれた。
「ふぅ〜ん、面白いような面白くない様な話ね
何かの予感を匂わす感じがしていいけど
最後の<仲良くなった>ってオチがチョットねぇ
やっぱどっかに戦いとかないと…」
・・・別にオチも戦いもないんだけどな
「グレサトは最近小説に凝っててね・・
とりあえずその型にはめて話すんだけど、それは気にしないでいいよ」
ネルビーは取り扱い説明書の様に説明してくれた。
「作者が仕込んだ仕掛けはおそらく…
キーキャラの能力を、その場にいた引き立て役を使って表現したかったんじゃない?
もう1つ、キーキャラが万能になってしまうのを、エキストラが持ってきた箱とのやり取りでうち消したかった・・と
キーキャラと箱の条件には法則がありそう
安易な展開には変わらないけど」
作者って・・、ボクやネルビーは引き立て役か、博士なんてエキストラにされてるし。
「グレサトくんの説明は、ちょっとわかりにくかったけどね、
つまり、そこには確かに何かの影響が働いたって事でいいのかな?」
「そだね
ついでだから言うけど博士のその格好は意味不明」
それだけ言うとグレサトはまたお茶をすすった、帰る気は全くなさそうだ。
「ネルビーの実験って、あとどの位必要なのかな?」
「うーん、そうだね
どれだけやっても十分って事はないけど
装置の改良やキミの操縦訓練も兼ねてそうだなぁ・・
出来れば後1週間位やってもらいたいな」
「あぁそうだ、
キミ達さ、この大学に部屋を用意してやろう
今までの宿泊代や必要経費も全部請求していいよ?
ちゃんとしたスポンサーが付いたからね〜ふふん」
博士は人差し指で、空中のボタンを押すような仕草をしながら言った。
スポンサーを得て、本格的に好き勝手出来るのが余程嬉しい様だ。
『なんですの?』
グレサトにじっと見つめられ、ココロがキョトンとした顔をしてグレサトを見ている。
「あんたココロちゃんだっけ?…イメージ近いなぁ」
『イメージ?』
「今書いてる小説のキーキャラね
コレ、<夢中ネコ>っていうんだけど」
グレサトはそう言ってバッグから原稿用紙の束を出した。
──夢中ネコは夢中だから夢中ネコと言う
見た物は何でもすぐに夢中になってしまう
そんな困った癖を持っている夢中ネコ
夢中ネコはその困った癖を治したくなって探偵を呼びました
夢中ネコは言いました、「わたし普通のネコになりたいの」
そう言われた探偵さんは困ってしまいました──
何コレ…癖を治したくて何で探偵を呼ぶんだろう?
特定の単語が繰り返されすぎて疲れるなぁ……。
「コレね〜
わたしがずっと小さい頃から暖めてた話なんだ
形にしたくて今作ってるとこなんだけど」
『ほほぅ、それは大変なの〜』
「へぇ〜、まぁ・・がんばって」
「でね!
キミ達見てると、何かインスパイアしそうな気がするから暫く取材させてくれる?」
『むむぅ?インスパ・・ってなんなの?』
ココロは単語に反応してか耳をクリンと回した。
「よしその耳はオッケーね、決まりッ!」
「あの…えぇ!?
インスパイアってつまりネタ探し?」
「そうとも言うねッ!ヨロリンコ♪」
誰もオーケーなんか出していないのに、一瞬にして決まってしまった。
彼女のネタ探しなんかより、いつオリジナルの情熱をぶつけられるかが心配だった。
「まぁ・・なんだ・・そのね、
すまんがね頼むよ」
『アハハハハハ!!』
目をバッテンにする博士を見てココロは爆笑した。
ここに来て不必要な問題が・・。
グレサトと博士は何か取引きでもしてるんじゃないのか?
ボクはそう感じてならなかった。
どうでもいい展開が多く含まれましたが、グレサトさんの台詞は誰かさんの素という噂です。
えりまき ねぅ