【15】ネルビーの実験(前)
えりまき ねぅです。
毎度ご覧頂きありがとうございます。
この回は前後編になってます。
◇前回までのおはなし◇
ボク達は魚型の宇宙船<希望の魚>に乗ることになった。
「ココロさ〜ん!」
ネルビー助手は嬉しそうにして言った。
『あぃ?』
「良かったら私の研究に付き合ってくれませんか?
私の理論がうまく行ったとは言ってもまだ1回だけですし
実験をもっとしてなるべく改良していきたいんですよぉ」
『む〜ん・・』
と、うなってココロは私の方を見た。
「あぃゃ、失敬ッ!
あなたにもお願いしたい事がありますので、
一緒にお願い出来ますか〜?」
なんだかついでみたいな呼ばれ方だけど、とにかく何度も実験を重ねる必要があるみたいだ。
もし、本番の時にで問題が起こったら、お手上げなのだから断る訳にはいかないだろう。
それに…まぁとにかく私はネルビー助手の頼みを受けた。
ネルビー助手は、宇宙船<希望の魚>号に乗るのは私とココロと、そしてネルビー助手の3人になるだろうと思う言った。
博士は地上に残って<希望の魚>と連絡を取るそうだ。
その連絡をとりあう機械はなんと博士が今から作るらしい。
博士は張り切って私達などもう視界に入らないかの様に、ガラク・・部品を大きな木槌で叩いていた。
発明ってもっと繊細に作るもんだと思ってたけど、力業なものもあるもんなんだ。
『声が聞こえないの』
「ここだとうるさ・・いえ、
博士のジャマになるかもしれないから
私の研究室に行きましょうか」
「そ、そうですね
ジャマになりますからね」
博士の木槌の音で、もはやここでは話が出来る状態ではないのは確かだった。
ネルビー助手の研究室は、この建物の裏の渡り廊下から行ける隣の建物にあるらしい。
そこは学生達の部室もある為、廊下は人が多かったが建物は新しかった。
防音効果も高いらしく部屋の戸を閉めると外の騒がしさが消えた。
私は研究室を見渡した、そこら中に本を置いてしまう為に役に立っていない本棚、色々な工具、そして床にはガラク・・発明品らしいものが転がっていた。
やっぱりこの人もあの博士と同じ種類の人なんだな。
「すみません、
置き場がないのでそこら中散らかっちゃって
とりあえずこの奥の部屋に来てもらえますか?」
奥に頑丈そうな戸があった、ネルビー助手は鍵を開け案内した。
奥の部屋の中央に台があり、その上に<希望の魚>の操縦室で見かけた機械がいくつも置いてあった。
それらの機械からパイプがのび、透明の瓶につながっており、その中には光る石が入っていた。
「これ、光る石ですね?」
「えぇ、試作ではこの石を使ってたんですよ
この世界ではこの石以外に大きなエネルギーは得られませんからね
でも、もうこれはいらなくなりそうかも」
私は大きなエネルギーがどの位か想像出来なかったので聞いてみた。
「その大きなエネルギーって
蒸気機関のエネルギーよりもですか?」
「はい、今のところ人類が作り得た最大のエネルギーは確かに蒸気機関なんですが、
光る石と比べるとかなり小さいエネルギーなんです
これ1つでこの大学全体にある光る玉を全て点灯させる事が出来ます」
「そうなんですか、
光る石のエネルギーがそれ程とは思いませんでした」
ネルビー助手は宇宙船にあった板と同じものを2枚持ってきて床に置き、
そこから宇宙船にあったものよりも少し小さい透明な瓶をつなげた。
その瓶の中には水の様な物が入っている様だった。
「よし、準備完了〜!
ではココロさん、この椅子に座ってみて下さい」
『ほぃ』
ココロは言われた通り、椅子にチョコんと腰掛けた。
ネルビー助手は板をココロの左右に近付けて配置して「ヨシと」頷いた。
「さっきは宇宙船の外の空気を掴むイメージしてもらいましたけど、
今度はこの部屋の空気と仲良くするイメージを思い浮かべてもらえますか?」
『仲良く・・?』
ココロは首をかしげてネルビー助手を見た。
「です
仲良くする事で周りのエネルギーを分けてもらえるんです
周りの空気とお友達になるって言えばわかりやすいかな〜?」
『わかった!
お友達になるの』
ココロは両手をやさしくYの字に伸ばした。
すると青白い蛍がまた現れた、今度は宇宙船の時よりずっと数が多かった。
青白い蛍は多すぎたのか板に吸収されなかったものは部屋中を飛び回っていた。
「なんか光がずいぶんと多いなぁ・・」
「こんなに・・集めきれないものが飛んじゃってるなぁ
でも、イメージの仕方で随分と変わる事がわったよ」
透明な瓶がグツグツと沸騰してる様に音を出し始め、水の色が青く変化して美しく輝いてる。
「瓶の水が青く光ってる」
「す、、凄い・・
今この瓶の中あるエネルギーがどんだけか想像出来るかい?
歯車市の全てのエネルギーに匹敵する程のエネルギーが、今この瓶の中に入ってるんだよ
もちろんあの光る石なんて問題にすら・・」
ココロはたった10秒で、歯車市の全てのエネルギーに匹敵する程のエネルギーを集めてしまったみたいだ。
この部屋の空気にそんなにエネルギーがあったのか。
「う・・気のせいかな?
ちょっと・・寒くない・・?」
ボクはこの部屋がひどく寒くなっている事に、体のふるえで気が付いた。
「あ、ゴメン
忘れてた、窓を開けよう」
どうやら気のせいじゃなかった様だ、息も白くなっているし。
ネルビーが窓を開けると、外の暖かい風が勢い良く入ってきた。
「あ、ココロちゃんもういいよ」
『ねぇ
仲良くなれたかな?』
「うん、とても仲良くなってたよ」
ネルビーはココロににっこりと微笑んだ。
「この板は加減する機能が必要っと
エネルギーを無駄に引き寄せちゃったみたいだ」
ネルビーはこの原理を簡単に説明してくれた。
ココロは色々な物質に干渉する力を持っているらしい、
宇宙ネコは人の心だけでなく、生物以外であっても媒介するんだそうだ。
それは熱が伝わる様なものだと言った。
今の実験はココロの集めたエネルギーを、瓶の中に貯める実験だったらしい。
貯めたエネルギーは、宇宙船自身の動力などとしても使われるそうな。
宇宙船そのものが使うエネルギーは、ここまでのエネルギーは必要とはしないらしいけど、それでも光る石位でないと足りないらしい。
次に、ネルビーはもう1つ別の実験をするらしい。
「これを手に付けて」
「あ、うん」
ボクが渡されたのは、鳥のはねの部分だけの様な妙な物だった。
「この鳥の羽みたいなのはなに?」
ボクは鳥のように羽ばたいて見せた。
「それはね
あの<希望の魚>のヒレみたいなもので、
それを使って空気を感じる実験をするんだよ」
「えっと…空気を感じますかぁ〜?」
ボクはワサワサと羽ばたいてネルビーに向かって扇いだ。
「ぶっ、まだ扇がなくてぃぃっす……」
ボクのわざとらしいボケにネルビーは爆笑していた。
「えっとね、
ココロちゃんにはまたさっきみたいに空気とお友達になってもらって。
エネルギーの吸収を加減しなきゃなので、板は宇宙船のと同じ位離して置いてっと
そんでもって…」
ネルビーは台の上の機械から出ているホースをボクの手に付けた羽につないだ。
「はい、これでオッケーね
ココロちゃんさっきみたいにまたヨロシク〜」
『あぃなの』
ココロからまた青色い蛍がいくつか放たれた。
今度は宇宙船と同じくらいの数が板に吸い込まれていった。
その瞬間───
「あれ…!?」
ボクの手に付けた羽に変化が起こった。
それはまるで水の中で手を動かしているかのような感覚だった。
「羽をゆっくりと斜め下の状態にのばしてみて」
ボクはゆっくりと羽をほんの少し斜め下にのばしてみた。
「えぇぇ!?」
誰かが羽の下から持ち上げてる様な感覚がする。
「どう?
空気に持ち上げられてるでしょ〜?
もう少しだけ角度を開いてみて」
するとさっきより大きな力で持ち上げられる感じがして、
ボクの体はついには浮き上がってしまった。
「よし、いいねぇ〜!
上がりすぎたら角度で調節してみてね
そっとゆっくりと」
ボクは上がったり下がったりを繰り返し、少ししてコツがわかってきた。
「これは…すごいや
羽を横に開く角度と、前後に倒す角度で前後にも移動出来るよ」
ボクは大分自由に動けるようになってきた。
『いいなぁ・・
わたしもやってみたいの』
ココロが羨ましそうにボクを見ていた
「ココロちゃんは多分なんだけど、
何も使わなくても出来るんじゃないかな?」
『そうなの!?
詳しいの!
宇宙ネコよりも宇宙ネコに詳しいの』
ココロは耳をぴょこんと動かして言った。
後編に続きます
えりまき ねぅ