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【14】希望の魚

えりまき ねぅです。

ご覧頂きありがとうございます。


◇前回までのおはなし◇

博士と助手に連れられて向かった先には魚型の宇宙船があった。

宇宙船──


魚の乗り物はそういうものらしい。


私たちは魚型の宇宙船の中に入った。

魚の宇宙船の中はいくつもの部屋に分かれていて、思ったより快適そうだった。


「この船は従来必要と思われていたものがいらなくなったので

 居住性が大幅に上がる事になりました」


「思われていた・・

 そういえば実際に人を乗せたロケットはまだないんですよね?」


「えぇ、今までのロケットは人を乗せるだけの性能を得られませんでしたから

 この船でやっとそれが実現される訳です」


船の壁はあの駅で見た布の様な白い素材だった。

手で触れている私の様子を見てネルビー助手が言った。


「この素材が気になります?」


「これってここの駅と同じものですよね?」


「そうです

 こう見えてとても丈夫で火にも強いんですよ


 宇宙に近づくと船の外からすごい力で引っ張られる様になるのですが

 この素材はその力に楽に耐える事が出来ます

 もちろんこの船の外装にも使われてますよ」


上の部屋に上がった。


その部屋には小さな窓がいくつかあり、その前にいくつもの椅子が床に固定されていた。


「ここがこの船の操縦席です

 ココロさんはこの辺りの席がいいかな?

 ここに座ってみてください」


『うん』


ココロは中央にある椅子にちょこんと座った。


そのココロの席の周囲には板の様なものがある、

よく見ると床も天井も他の部分とは違う板が貼られてあった。


「その板は?」


「はい、これがココロさんの能力で得たエネルギーを拾う為のものです

 集められたエネルギーはこの船のエネルギーとして使われ

 魚のヒレの部分にも流れて行きます」


流れて行きますと淡々と言うネルビー助手に私は心配になった。


「そんな事してココロは平気ですか?」


「大丈夫ですよ

 エネルギーの元はココロさんのものではなくて周りにあるエネルギーですから

 後、余ったエネルギーはそこの入れ物に貯めておけますので

 ずっとエネルギーを作り続けなくても大丈夫です」


ネルビー助手の指を指した先に不思議な形をしたガラス瓶があった。

本当に本当なのだろうか、難しい話はわからないので私は半信半疑だった。


「ココロさん?」


『なんですの?』


「この船の外にある空気を掴むイメージを思ってもらえますか?」


『おそとの空気をつかむの?』


ココロは手を広げて空気を掴むイメージを思い描いていた。

するとココロから青白い光の玉が発せられた、きれいな蛍の様な光だ。

その光は周りにある板に吸収されて行った。


その瞬間───


少し船が揺れた


「船が・・揺れた・・!?」


私はそばにあった椅子の背もたれを掴んだ。


「ネルビーくん!」


「やっ・・やった!!」


博士とネルビー助手は喜んでいたが、私は意味がわからなかった。


「どうかしたんですか?

 今のはなんだったんですか?」


「ちょっとここに来てごらん」


窓際で博士が招いた。


「え!?あれ?」


窓の外に見える地面までの距離が少し遠くなった気がする。


「これって?」


「驚きたまえ

 この船は宙に浮いているんだよ

 ネルビーくんの論理が成功したんだ」


「はかせぇ〜!」


ネルビー助手は涙で顔がくしゃくしゃになったまま博士に抱きついた。


私は見ていけないものを見た気がし、

ココロはキョトンとした顔で二人を見ていた。


「今回ココロの力を使ったとは言え

 我々はついにあの光る石を使わずにあの船を飛ばす事が出来た訳だね」


大学の研究室に戻り、いつもの椅子に座ると博士は言った。


「あ、そういえば

 光る石は何故使わなかったんですか?」


博士は、紅茶を入れて持ってきたネルビー助手を見てニヤリとした。


「君は人の考えた方法を盗んで成功したとしてうれしいかい?

 光る石はね、

 我々の考えた理論ではないんだよ」


「まさか、あの星の?」


「あの星はね

 この星とは全く違った文化があったようだよ

 駅にあった地図の光る玉もね

 あっちの星にあったものなんだよ」


「あ・・あの光る玉はそうだったんですか」


「えぇ、悔しいですよね」


紅茶をテーブルに起きながら、ネルビー助手は言った。


「わしが一番ショックだったのはアレだ

 わしの汽車と同じものがあっちの世界にもあってね

 それはちょびっとだけショックだったんだけど。


 それよりももっと小さい汽車には別の方法が使われていたんだな〜

 何でも蒸気機関使おうなんて考えてたわしは凄く恥ずかしかった」


「あの星の技術は進んでいたんですね」


「それが、そうでもないんだよ

 進んでいる部分とそうでない部分があって

 この世界とはまるで違っていたんだ」


博士は紅茶を音を立ててすすって言った。


「そうなんですか、

 こちらの星で進んでいるものってなんでした?」


「それはだね

 文明的にも色々とはあるんだけど

 決定的な違いは生物の進化の仕方だろうね」


博士は謎のがらく・・発明品を手に持ってそれを私に向けて言った


「生物・・がですか?」


「この世界はとても平和だ

 その上にこの世界では当たり前だけど、

 人間以外の獣人種もちゃんと市民権を得ているでしょ」


「はい、でもそれは普通ですよね」


「あの星は平和だったとは思えなかったな

 生物は既に存在を確認出来ない状態だったけど

 建造物などはそのままだったからね

 それを見ての話なんだけど


 あの星は人間以外の生物は知能が発達しなかったらしく

 まるで道具の様な扱いを受けていたようだよ」


「道具・・何て事を・・」


私はあの路地の夢を思い出した。

あの世界でのココロは楽しそうに笑っていた。

それは、ココロに知能があったからなのだろうか。


「そうだ!」


私は唐突に大きな声を発っしてしまい、博士達を驚ろかせてしまった。


「ど、どうかしたのかな?」


「あの、これ!」


ずっと背負っていたコバルトを手にして見せた。


「ふむ?

 その楽器がどうかしたかね?」


「一風変わった六弦ですね」


ネルビー助手は普通の六弦との違いに気が付いた様だ


「そうなんです

 このコバルトは普通の六弦と少しばかり違うんですが」


私は夢で見た事を全て話した。


「なるほど、

 君はこの楽器がつまり、、

 この星のものではないんじゃないかって思ってるんだね?」


「それは分かりません

 ボクが勝手にイメージして作った夢なだけかもしれないです」


「でもねぇ

 あの星は既に存在がなくなっちゃってるからねぇ」


「あ・・そうか

 これがあの星のものとしたら今残ってる訳ないですよね・・」


やっぱこれは気のせいかな、


───でもココロのあの涙は?


博士はそれでもネルビー助手に音楽教授を呼ぶ様に言ってくれ、

暫くして博士に負けず劣らず派手な格好をしたスッター教授が研究室にやって来た。


「スッター教授、この楽器なんだがね」


「ん〜、これは・・

 じっつ〜に美しい六弦ですわねぇ〜」


スッター教授はコバルトを手に取り、

まるでなめ回すかの様に様々な角度からコバルトを執拗に眺めた。


「ちょっと失礼して・・」


スッター教授はコバルトを弾こうとしてやめた。


「おやまぁ・・」


「どうかしたのかな?」


「これは弾けませんね〜

 楽器なのに弾けないってどういう事なのかしら」


教授は私の顔を見て


「これって弾けないの?」


と言った。


「あ、弾けますよ?」


私はコバルトを奏でて見せた。


「一体どうやって弾いたのか見ていてもわからないわね〜

 この楽器は弾ける様に出来ていないのに」


「スッター教授、

 この楽器はこの星の楽器と比べてどう思うかね?」


「まぁ何か意味深そうな言葉ね

 結果として楽器だったみたいだけど

 この世界で一般に言う楽器ではないわね

 隠されたロッマ〜ンがありそうな予感がするわぁ〜」


私はスッター教授がうっとりして言ったのを見て少し寒気がした。


「と、言うことらしい

 素人のわしでも楽器としての完成度が高いのは音で分かるけどね

 常識的には楽器の作りではないって訳らしいよ

 なんとも面白い話が科学者魂をもくすぐりおるな」


『コバルトはいい音なの

 わたしはきっと楽器なんだと思うの』


「あれからもう10年か・・


 念のためもう1度調査をする必要があるかもしれんな

 その為には君たちにはぜひ協力してもらいたいのだが・・

 ココロも宇宙には行きたいんでしょ?」


『おさかなに乗れるの?』


ココロは耳をピクっと立てた。


「あのお魚はココロに合わせて作ったからね

 ココロがいないと動かないんだよ」


『わたし乗りたいな〜

 でね

 もう1つのまるを探すの

 ねっ!』


ココロは私に同意を求めて微笑んだ。


「うん、もちろんさ

 あの星を探そう!」


「よしわかった!

 ネルビーくん、我々の残りの仕事をやっつけてしまおうかね

 早速例のスポンサーにも連絡してくれ」


「はい、がんばりましょう!」


二人はうれしそうだ。


「あ〜そうそう

 あの宇宙船の名前が必要なんだけどね

 何かいい名前はないかな?」


「名前ですか〜

 うーん・・難しいなぁ」


「そう難しく考える必要はないさ

 何かよさそうなのを頼むよ」


「・・・<希望の魚>・・

 いや、おかしいですね」


ココロは耳をくりんと回して反応した。


『楽しそうな響きがするの』


「うむ、

 いいじゃないか、

 希望はわしらにも丁度当てはまる言葉だ!

 <希望の魚>

 このわしですらワクワクしてくるじゃないか」


博士達は今後魚型の宇宙船<希望の魚>号を本格的に仕上げるらしい。

宇宙へ行くと言う事は、想像よりもずっと大変な事なんだろうなと思った。


希望の魚いかがでしたでしょうか?


そろそろ物語も後半に入ってきましたのでがんばってまとめて行きたいと思います。


 えりまき ねぅ


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