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【13】赤い風船

えりまき ねぅです。

ご覧頂きありがとうございます。


◇前回までのおはなし◇

ココロの記憶を取り戻そうと心に決めた主人公。

そして、博士の見せたいものとは。

バスが大学に到着すると、博士はなんと門の所で待っていた。

落ち着かないその感じからして私達を待ちに待っていた様子だけど、

そんなに「見せたい物」を見せたくてたまらないのかな?


「博士、おはようございます」


『おはようなの〜』


「やぁやぁおはよう〜!

 今日は実にすがすがしい天気だと思わないかね?思わないかね?」


二回繰り返す言い方といい、どうも何かたくらんでそうな気がするのは気のせいだろうか。


「あの、見せたい物って・・」


「そうなの!

 博士は見せたいものがあるのぉ!」


『真似しないの!』


即座にココロは反応した、私はこれはわざとだなと思った。


博士は研究室ではなく、外にある工場へ向かうらしい。

博士の助手は蒸気機関の小さな汽車を走らせて来た。


「紹介しよう、私の助手のネルビーくんだ

 彼は実に面白い男でね

 私の<後50年早く出会いたかった人>のうちの1人だよ」


「はじめまして、博士の助手のネルビーです」


私とココロはネルビー助手に挨拶した。


「お世話になります」


『はじめましてなのです』


「あなたが宇宙ネコのココロさんですね?

 博士からいつも話を聞いてますよ

 今日はよろしくお願いしますね」


今日はという節が少しひっかかった、これは何かあるに違いない。


出発の汽笛を鳴らし、小さな汽車は軽快に動き出した。

小さな汽車は馬車と蒸気機関車をつないだ様な妙な形をしていたが、

お世辞にもカッコイイとは言えず、それぞれが別の主張をしていて不格好だった。


「どんな工場に向かうんですか?」


「新世代のエネルギーを利用する製品を作っている工場だよ

 例えばね、例の光る石があるだろう?

 ああいうのも、まぁそうなんだけどね・・


 あれはこの世界だけのものと胸を張って言えないから

 ちゃんと胸を張れるものを作ろうって訳でねぇ〜」


「ということは光る石とは別のものって事ですか?」


「そう!

 我々もそろそろ自分の頭を使って考えないとね

 のぉネルビーくん?」


「えぇ、今はその為に日々研究をしてるんです、

 私はまだこれという実績はないんですけどね・・」


汽車は金網で囲まれた大きな敷地面積のゲートをくぐった。

くぐった先に大きな建物が見えたが、汽車はその横を通り過ぎ奥へ進んだ。

奥は見渡す限り何もない平らな地面が広がっている、汽車は軽快なリズムを刻んで走っていった。


「10年程前にね

 わしはここであるものを作ったんだが何だかわかるかね〜?」


『わかった!ろけっと?』


ココロは即座にいつもの疑問形で答えた。


「そうだ!

 ここはロケットを作った思い出の工場なのだよ」


不格好な小さな汽車は広く何もない平らな地面を延々と進んでいく。


少しすると汽車の行く先に大きな建物が見えた、それは工場施設の1つの様だ。

そして、私たちの汽車はそのまま建物の中まで入って行った。

確かにここまで来るのには汽車でもないと無理な距離だ。


「さぁ着いたよ」


「こちらへどうぞ、このすぐ先です」


ネルビー助手は先に歩いて案内してくれた。


『大きな建物なの』


目の前に大きなシートがかけられた物体が現われた。

おそらくこのシートの下にある物が私たちに見せたいものなのだろう。


「じゃぁシート外しちゃいます」


ネルビー助手はそう言うと壁にあるボタンを押した。


天井から吊られたロープがたぐられて、スルスルとシートが天井に上がっていった。

私たちの前にシートが外された物体が現れた。


「これは・・」


私はそれを見て驚いた


『さかな?』


それは巨大な魚に見える物体だった。


「そう魚だ

 どうかね〜?これは」


「博士が見せたいと言っていたのこれなんですね

 これは一体?」


「えっとね〜

 これが何かと言われると困るんだ

 まだ名前がなくてねぇ」


ココロと私は巨大な魚の周りを1周りして眺めた。


『わかった!

 おさかなのろけっとなの!』


「ほぉ

 ココロはよくわかったね〜」


「これがロケット!?」


確かに巨大な魚の形をした乗り物に見えなくもなかった。


「まぁ、ロケットとは少し違うんだけどねぇ

 そうだネルビーくん、説明してあげてくれ

 これの動力部分は彼の理論なんだよ」


「はい、博士

 ではココロさんにまずこの風船をあげましょう」


いつの間にかネルビーは赤い風船を持っていた。


『わぁぃ風船だ!

 ありがとぉ〜!』


赤い風船はココロによく似合っていた。


「その風船って浮いてますよね」


『浮いてるの』


「理由は中には周りの空気より軽いガスが入っているからなのですが


 今となっては風船はごくありきたりな物ですけど、

 実は音もなく浮いているって凄い事なんですよ」


『あのおさかなに風船付けて飛ばすの?』


「いえ、それも悪くないとは思いますが・・

 私が着目したのは既に周りにあるエネルギーを利用するという方法です

 今までのロケットは空に上がる為に自分でエネルギーを作ってたのですが

 この魚型は周りにあるエネルギーを使うんです」


この青年の話は少し難しかったが言いたい事はなんとなく分かった。


「一言で言えばこの魚型のロケットは、

 空気を泳いで宇宙まで行けるんですよ

 その先の宇宙も方法次第で行けるはずです」


「驚いた・・

 この空気を泳ぐなんて事を考えるなんて」


するとネルビーはにっこり微笑んだ


「言うは簡単なんですけどね

 困った事に空気のエネルギーをうまく利用出来る確信はあるのですが

 論理的にも技術的にも足りないものがあります」


「足りないもの、ですか」


「えぇ、足りないものとは

 周りのエネルギーを味方にしてうまく利用する方法がはないのです」


私は何が必要なのかが何となくわかってきた


「つまりココロ・・ですか」


「今この時代には彼女の能力を使う以外は、実現出来る術は残念ながら・・」


博士は腕を組み黙ってネルビーを見ていた。


『ねぇ、

 このおさかなは宇宙行けるの?』


「はい、

 もちろん行けますよ

 この機体は博士の設計したものですから間違いなく」


そう、ココロは宇宙に行きたがっていた

椅子取りゲームに負けたあの星の行方を追う為に。


『わたし達

 宇宙に行きたいの』


そう言ってココロは耳をくりんと回した。


私たちはまだこの時、全ての歯車が動き出した事を知らなかった。

赤い風船いかがでしたか?


今後もがんばりますのでお付き合い下さい。


 えりまき ねぅ

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