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【12】涙

えりまき ねぅです。

ご覧頂きありがとうございます。


◇前回までのおはなし◇

私はココロの夢を見た。

知らない世界のココロは私の知らない歌を歌い、

そして私の知らない顔と一緒に笑っていた。

私は知らない世界の夢を見て、そこで生活をしているココロを見つけた。


ココロは別の星にいた時、ああいう生活をしてたのかな。

知らない顔と笑っているココロが脳裏にチラついた。


私はそっと部屋を出て、昨日行った川岸のベンチへ行き腰を下ろした。

辺りは静かに静まり返り、川のせせらぎに混ざり虫の声が聞こえる。

月の光が程良く明るくて心地がよかった。


私はため息を1つつき、コバルトをそっと弾いた。

澄んだ音は辺りにとけ込んでゆく。


夢で聞いたこの曲、いい曲だな。


この曲をココロに聴かせたら記憶が少しは戻るかな?

でも・・記憶を戻したらココロは夢で見た誰かも思い出すんだろうな。


私は工場裏にいた時の事を思い出してハッとした


──工場裏でココロは誰かを待っていたんじゃないか?


そうだ、工場裏にいたのはココロの意志だったと博士は言っていた。


「何を考えてる・・一体ボクはどうしたいんだ」


ココロの記憶を取り戻したいんだろ、取り戻したくないのか・・?

いや、何を迷ってるんだろう、取り戻したいに決まってるじゃないか。


私はココロをもっと知りたい、ココロの小さい頃も知りたいし、

これからのココロだってずっと見ていたい。


そうだ、ココロの記憶を取り戻す事はココロの為なんだから。

私がどうこう言うなんてどうかしてる。


「ボクはココロを信じてる

 そうさココロだって・・」



──『今ももう幸せなの』



今日ココロはそう言ってくれた、

私はココロを信じられていない自分に悔しくて涙が出た。


「ボクはココロが好きだから、

 ココロを信じてあげなきゃいけないんだ

 そうなんだけど・・」


私は旅館ねじの部屋に戻った。


『おかえりなさいなの』


ココロは起きていた様だ。


「あ、ゴメン。起こしちゃったね」


ココロは私の前まで来ると、ぎゅっと抱きしめて言った。


『ごめんなさい

 心配させちゃったの』


その言葉に私の目から涙がこぼれ落ちた。


私は自分でも信じられない位泣いた。

こんなに泣いたのは生まれて初めてかもしれない。


『あなたを悲しませてしまったの

 わたしは一番あなたが大切なのに』


ココロも一緒に泣いていた。


──ありがとう、ボクもココロが1番大切だよ


私はそう強く思った、

そしてココロの記憶を取り戻すと心に決めた。


するとココロは泣きながらそっと顔を上げて微笑んでくれた。



朝、まぶしい日の光が人や建物の長い影を作っている。


私とココロは博士のいる大学行きのバスを待つ為、停留所の椅子に座っていた。


「あ、そうだ」


『なぁに?』


私は背負っていたコバルトを手に取った。


「ココロはこの曲知ってるかな?」


私はそう言って、夢でココロが歌っていたあのメロディーを弾いてみた。


ココロは静かに聴いていた。


弾き終わると


『いい曲なの

 でも・・

 聴いたことない音楽なの』


「うーん、やっぱ知らないかな?」


やっぱりただの夢だったのか、

しかし、何かココロの声の様子がおかしいと思い顔を見てみた。


『あ・・』


知らないと言ったのに、ココロはたくさんの涙を流している。


「ココロ?」


『知らないはずなのに

 はじめて聴いたはずなのに

 何故かすごく涙が出てくるの・・』


「ねぇココロ」


私はココロの頭をなでながら言った


『うん・・』


「昨日さ

 ボクは夢を見たんだ

 知らない街の夢を」


『知らない街の夢?』


「うんそう、

 そこにココロが居てね

 この歌を歌ってたんだよ」


『へぇ〜

 どんな歌なのかなぁ?

 わたし歌ってみたいの』


ココロは耳をくりんと回して言った。

さっきまで涙を流していたのにもうすっかり明るい声になっている。


「歌詞は・・

 ゴメン覚えてないんだ

 なんとかメロディーだけは覚えてられたんだけどね」


そこへバスがやって来た。


乗客がわらわらと降りた後、このバスはまた大学方面に向かう。

このバスはずっと同じ道を行ったり来たりする様だ。

釜番は新しい薪をバスの後ろにあるカゴに積み始めた。


私たちはバスの乗務員から切符を買い乗り込んだ。

ココロはまた釜番の作業を楽しそうに見ている。


バスの後ろから白い蒸気が勢い良く立ち上った、釜番は今度は水を補給している。


『みずみず〜!

 いそげいそげ

 あちっ!あちち!』


私は釜番の様子にセリフを付けるココロを見て笑った。



涙、いかがでしたでしょうか?


昔、あるTVドキュメンタリーでゴリラが子ネコを自分のペットにしていたのを見ました。


そのゴリラは子ネコをとてもかわいがっていました。


でも、ある日その子ネコは動かなくなってしまいました。


子ネコは死んでしまったのです。


ゴリラは子ネコの亡骸を離そうとせず、じっと黙って見つめていました。


そして夜になり、飼育員達はカメラを残してゴリラの周りから居なくなりました。


全ての人が居なくなったのを確認したゴリラはもの凄い悲しい声を出して泣きました。

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