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【11】知らない顔

えりまき ねぅです。

ご覧頂きありがとうございます。


◇前回までのおはなし◇

私と宇宙ネコのココロは歯車市へとやって来た。

博士との話で様々な謎がわかって来たが、ココロの記憶を取り戻す方法はまだ見つからなかった。


散歩から旅館ねじに戻ると、旅館のおかみであるアライグマの老婆が食事を食堂に用意してくれていた。

アライグマ族は料理が上手とは聞いていたけど、なかなかの品揃えだった。


「うん、うまい!!」


『衝撃的なの!

 宇宙ネコはこんなおいしいごはん、

 はじめて食べたの〜!』


ココロの口からは衝撃的という言葉すら出た。


いつも手抜き料理ばかり食べているからって訳ではないな、味も絶妙だけど絶妙な分量なんだ。

1つ1つがあともう少し食べたいと思う位の量にするのはきっと技なのだろう。


「そうかい?

 喜んでもらえるのがやっぱり一番うれしいねぇ」


「おかみさんは、

 ここは一人で切り盛りしてるんですか?」


「そうねぇ

 子供達もみんな大人になって出てっちゃったし

 何年か前に主人を亡くしてからはずっと一人ねぇ」


「お子さん達はたまには戻って来ないんですか?」


「たま〜にね、ほんとにたまに会いに来てくれるわ

 この味が懐かしくなったって言ってね


 でも、みんな忙しいから仕方ないのよね

 私は子供達が立派に成長してくれればそれでいいの」


おかみは幸せそうな顔でほほえんだ。


「ほら、これが子供達と主人で一緒に撮った写真よ」


その写真にはいかにも頑固そうな男と、小さな子供達とおかみが笑って映っていた。


「あ、ご主人は人間だったんですね」


「そうよ〜、ビックリしたでしょ?

 ガンコ者で気むずかしくって・・


 ホント、主人とは色々な所を旅したわねぇ〜」


『優しい人だったの』


「そうよ、と〜っても優しかったわ


 落ち着いてからは他の旅人の為に旅館をする事にしたんだけど

 この旅館の名前ねじって言うでしょ?

 それがあの人の名前なのよ

 いかにもここの生まれらしい名前よね」


そう言っておかみはしみじみとしてから、


「だからね、

 あなた達にもいい未来を築いてもらいたいのよ」


「え、、えぇ・・

 いや、もちろんそのつもりです」


私はちょっと困って苦笑いした


『今ももう幸せなの』


「そうね

 幸せそうに見えるわ〜

 しっかりね!

 うちの人みたいにさっさと死んだりしちゃだめよ?いい?」


「な、なるべく長生き出来るようがんばります」


『ホントにやくそく!

 だよ?』


ココロは首をかしげてほんの少し切なそうに言った。

こうして私はココロより長生きしなきゃいけなくなってしまったけど、頑張れるかな。


私たちは食事を終えて部屋に戻った。


「明日アサン・ナファイル博士が見せたいものがあるって言ってたけど、

 何を見せてくれるんだろうね」


私は旅館のおかみにもらった紐でコバルトのストラップを作りながら言った。


『なんだろう

 楽しみなの

 ロケットかな〜?』


「ココロはロケットが好き?」


『うん、あの写真みたいに遠くからここを見てみたいの

 まぁるい地球をわたしの目で見てみたいの』


「じゃぁ博士にお願いしてみようか?

 いつかココロがロケットに乗せてもらえるように」


『うん、

 もちろんあなたも一緒がいいの』


「えぇ?ボクも?

 高いとこって苦手なんだよなぁ・・」


『ねじのおかみさんみたいに

 色んな所を旅をするの


 いっぱい歌ったりしてね

 きっと楽しいの』


「あ・・」


私はその様子を何故か鮮明に思い浮かべることが出来た。


その夜、私は夢を見た。


何も見えない空間にいて耳を澄ますとかすかな歌が聞こえる。


これは?ココロの歌?


でも聞いたことのない歌だな。


どこで歌ってるんだろう。


私は歌のする方へと向かう。


するといきなり目の前に砂嵐の様なものや、暗幕の様に黒いものが横切り視界が開けた。


「ここは・・どこだ?」


そこは見たことのない風景の場所だった。


狭い路地、木で出来た塀が並び、遠くから子供の遊ぶ声が聞こえる。

辺りは夕暮れ時を迎え、あたりの家には灯りがついていた。

ゆうげの仕度をする音がして、いい匂いが漂っている。


「あ!」


聞き覚えのある歌声が聞こえ、路地のずっと先を人影が横切った。


私はその方向へ走った。


路地を抜けT字に出ると、遠くにさっきの人影が見える。

楽しそうに笑っている人影が二人、歌声も近くなった。


私はその二人に近づき


「ココロ!」


と、叫んだ。


歌が止まり、手をつなぐ影が振り返る。


それはココロともう1人、私の知らない顔だった。


ココロは首をかしげてキョトンとした顔で私を見つめていた。

私はそれ以上声をかけられなかった。


「どなたかお探しですか?」


知らない顔は私に言った。


「あ、いえ・・」


『あれ?』


「どうしたんだい?」


『あなた・・

 知ってる気がするの』


「キミの知り合いかい?」


『わからないの

 気のせいなのかもしれないの』


「おや?それは」


知らない顔は私が持っていたコバルトを見て言った。


『あ!わかったの!

 きっとそのせいなの』


「あなたもそれを弾くんですね」


知らない顔の手には私のコバルトと全く同じものがあった。


「それは・・!

 コバルト?」


「えぇ、

 またどこかでお会いしたらご一緒しましょう」


『おそろいなの!

 楽しそうなの〜!』


「では、失礼します」


知らない顔は軽く会釈をした。


2つの影はまた楽しそうに歩き出し、やがて遠くへ消えて行った。


私はそのままゆっくりと目開く感覚で目を覚ますと辺りを見回した。

そこは旅館ねじの客室、まだ明けぬ暗い夜が続いており、ココロもまだ眠っている。


さっきの夢は・・

私の知らない街に私の知らない顔、そして私の知らない歌。


あの夢は何だったのだろう、私の想像で作り出された夢なのだろうか。


──それとも?


私はあの歌を忘れない様、壁に立てかけていたコバルトを手にとった。


知らない顔、いかがでしたでしょうか?


不思議な夢を見た主人公は何を思い、そしてココロは今後どうなってゆくのでしょう。


次回もぜひごらんください!

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