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不思議な部屋  作者: 竜胆
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穏やかに緩やかに入院生活は続きます。今のところ。。。

土日は作業療法の活動はなかった。看護師さんや看護助手さんの数も少ないように感じていた。病棟は静かだった。外出する人や、外泊する人が多いようだった。


妹が幼い娘を連れてお見舞いに来てくれた。姪っ子よりも背があるような、なんとも気の抜けた見ているだけで気持ちが和む縫いぐるみを私にあげたいと姪っ子が妹に、デパートの売り場で訴えたのだと妹が話してくれた。

姪っ子にありがとうね、と言うと「わたしとおそろい」と言うのだった。

私はお絵描きが好きな姪っ子の描いた絵を、姪っ子に見せて貰った。「これは、ふーちゃんよ」と、絵の中に私も含まれていた。

妹は帰省中、私の家に滞在していた際に、姪っ子がタオルの香りをかいで「ふーちゃんの匂いがするー」と言ったことを教えてくれた。私は泣いてしまった。ごめんね、ごめんね、と言う私を姪っ子は最初はきょとんとした顔をして見ていたが、私と一緒に泣き出してしまった。私はなかなか泣き止めないでいた。「深呼吸して」と、妹に背中をさすられながら息を吸っては吐きを繰り返した。姪っ子は、泣き疲れたのか、椅子でこっくりこっくりとしていたので、私のベッドに移してあげた。

「また来るから」と言って妹と姪っ子は帰った。


私の髪は腰の下までの長さがあった。切りたかった。だけれど病院には、美容院は無く困っていた。食事を一緒にするメンバーに相談してみた。バスで十分のところにある彼女の行きつけの美容室を紹介してくれた。私は「外出届」の用紙を看護師さんから貰い、氏名と連絡先、行く日時と目的を書いて看護師さんに提出した。三、四日前にまで外出届や外泊届は出さなければならなかった。

前に脚の浮腫みで大きな病院に行った時には、かなり待ち時間があって私は外出届に書いた時間に間に合わず、何度も病院から携帯に着信があった。後になって知ったが、まれに病院から脱走する患者さんがおられるとの事だった。

病院のすぐ前にバス停はあった。四つ目の停留所で降りたら、美容室は見える場所にあった。

美容室に行くのは、いつ以来か思い出せないくらいだった。伸ばし放題にしていた。入院中である事も美容師さんに素直に話した。私を担当して下さったのはオーナーの奥さんだった。コケティッシュな魅力がある方だった。お子さんが男の子ばかり三人いると聞いて驚いてしまった。シャンプーをしてくれた若い女性は指の力加減が素晴らしくて心地良かった。

髪は、思い切ってボブにして貰った。切った髪は寄付したいと奥さんにお願いした。ある程度の長さのある髪を寄付するシステムがあると聞いていた。頭が軽くなって、私は来店した時より明らかに顔付きが明るく変化したのを感じた。


病院にまたバスに乗って私は帰った。時間内に帰れた。みなさんの反応はそれぞれだったけれど、驚かれたのは共通していた。

髪を切って良かったのは、頭痛が和らいだ事だった。髪を洗って乾かす作業も楽になった。

夕方父がお見舞いに来て、私が髪を切った事を知り、実は父は嘆いていたと母から電話が掛かって来た。

私は自分の顔を撮って、写メールを妹に送った。「若くなったね」とレスが来て嬉しかった。

臨床心理士の女性の先生の身振りを交えた、「お似合いですよ、文さん」という反応が一番嬉しかった。


髪を切ってから生活が楽になった。お金もかからず、私の入院生活はさらにストイックになって行った。


夕方に煙草を吸いに外に出ると風が冷たく感じるようになった。そろそろ服を長袖に変えなければならないな、と思いつつタバコを吸っていた。日勤の看護師さん達が帰る時間帯だった。仲が良い看護師さんを見付けると、私は大きく手を振った。病院は夕食前までに戻らなければならない決まりがあった。一日の最後の煙草を味わいながら吸っていた。

ちなみに煙草は父が毎日お見舞いに来る際に買って来てくれていた。


夕食を食べ終えると、みなさん競うように大浴場がある四階に昇っていた。大浴場の入浴時間は決まっていて、夜八時までだった。

私は部屋のお風呂に毎日違う入浴剤をその日の気分で入れて長風呂していた。たまに入浴中に主治医の先生が部屋を訪ねて来られて焦ったりもした。先生は一体何時まで働いておられれるのか謎だった。


季節はいよいよ肌寒く感じるようになっていた。




記憶を辿りながら書いています。書き直すかも知れません。

よろしくお願いいたします。

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