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不思議な部屋  作者: 竜胆
37/40

支え

文は病名を聞いて動揺します。

起きてから、ベッドの上で深呼吸をしながらストレッチ体操をゆっくりとした。よく眠れて気分が良い目覚めだった。

顔を洗い肌のお手入れをして部屋着に着替えた。歯を磨いてから顔にお粉をはたき、リップクリームを塗った。

日記帳に睡眠時間、天気、気分を記号で○と記入した。

ニット帽を被り首にタオルを巻いて、ジャンパーを羽織りポケットに煙草とライターを入れ、携帯で妹にストラップは何色で作れば良いのか尋るメールを送った。

エレベーターに乗り外に出て、喫煙所まで歩いて行った。喫煙所にほっそりとした女性が木の下で立って煙草を吸っておられた。「おはようございます」と挨拶すると「おはよー」とのんびりとした口調で言われた。私は内心緊張していたのが解けたのを感じた。「寒いですね」と言いながら、彼女の横に立って煙草に火をつけて煙草を吸った。「アートに出られますか」と聞いたら、「今日初めて行った病院に書類をワーカーさんと取りに行かなきゃならないのー。面倒くさいー」と言われた。話によると約二十年前にかかった病院から全て病院の診断書が、年金の受給する為には必要だとの事だった。

「私が若い頃には発達障害なんてのは無かったの。なんか人と私は違うな、とは感じていたけど、親に相談しても話を聞いてくれなかったんだ。だけど、私えらいよ!夢を叶えたもん!」と言われて、「どんな夢ですか」と聞いたら、「夢だった幼稚園の先生になった!」と言われて、「人気がある先生だったでしょう」と私が言うと嬉しそうに「うん。大人気だったよー」と言われた。「病院に行くんだから、地味な格好で行かなきゃね。文ちゃん、服を貸してくれる?」と聞かれて、「いいですよ」と私は言い、二人で病棟の私の部屋に戻る事にした。


「クローゼットの中に入っています。少ないですが」と私は言いながら洗面所で手を石鹸で洗いうがい薬でうがいをした。彼女に珈琲を淹れた。「ほんと少ないねー」と言われてしまった。彼女はパイプ椅子に座り、「物が少なすぎるよ、文ちゃんの部屋。なのに植木鉢があって可笑しい」と笑っておられた。「友達が持って来たんです。私もビックリしました」と笑った。「服は決まりましたか」と聞くと「やっぱり自分の服着て行くわ。ごめんねー」と言われ、「それがいいですよ。いつも素敵な格好をされているから」と私は言った。

「昨日、主治医の先生に病名を尋ねたら、うつ病ですと言われて、なにか病気なんだろうなとは思っていましたが、病名を告げられて動揺してしまいました」と彼女に言った。「私もうつ病だよー。摂食障害もだし、私たちは〝同じ″だよー、前から思ってた」と言われるのだった。何が同じなのかは分からなかった。母に聞いたところ、臨床心理士(カウンセリング)の先生から受けたテストの診断によると私は発達障害は無い、との事だった。彼女が私に感じているシンパシーは私は彼女に対して持っていなかった。


朝食の時間を知らせるチャイムが聞こえて来て、二人で部屋を出て食堂まで歩いて行った。二人だけになりテーブルが広く感じられた。ほっそりとした女性はほとんど食べられなかった。私はゆっくりと食べて、お漬物を残しただけだった。


部屋に戻り朝薬を飲んで歯を磨いた。日記帳にほっそりとした女性に自分の病名を話した事や、彼女から言われた話を書いた。


携帯の電話が鳴り、表示を見たら妹だった。出たら「もしもし、ふーちゃん」と姪っ子だった。「おはよう。どうしたの?」と聞くと、「あのねー、ピンクのビーズがいいの」と話してくれた。「分かった。ピンクだね。可愛いのを作るね」と姪っ子に優しく言った。「ふーちゃん、ママ」と言って、姪っ子は妹に携帯を渡したようだった。「この子ったら、最近携帯を勝手に掛けるようになったの」と妹が言った。「すごいね。もうすぐ五才だもんね」と私は感心していた。「ふーちゃん、先生から病気のことを聞いたってお母さんが心配して私に電話して来たよ。大丈夫?」と聞かれた。妹の携帯から姪っ子が何やら歌っている声が聞こえていた。「そうだね。動揺したかな、やっぱり。精神病なんだって告げられて、ショックだった。食べ吐きもかなりヤバイけど、先生はそっちは重要視してないみたいなんだよね。何も言われないの。先生からはうつ病は必ず治る病気です、って言われたけど、先生を信じて治すしかないなって思ってるとこ」と私は妹に言った。「ふーちゃん、大丈夫だよ」と妹が優しく言ってくれて心強いな、と思った。「土曜日に退院するの。二人で迎えに来てくれるんだって」と両親が迎えに来て来てくれると妹に言った。「退院したら、みなで旅行に行こうね」と妹は退院後の明るい話をしてくれて、前向きな気持ちになれた。「ストラップ、作ったらまた送るね」と言ってから電話を切った。看護師の妹の存在が頼もしかった。


アートの活動の時間、私は作業療法士さんにストラップ用の紐と金具が一緒になっているキットを貰いに行き、紐が白いのとピンクのを二本貰った。太めのテグスを選んで長さを測ってハサミで切って貰った。

ビーズはまた新しい物が加えられていた。一センチくらいある大きなハート型のビーズを見付けた。それを中心にして一つ目のストラップを作った。二つ目のは、花の形のピンクのビーズと透明のビーズを組み合わせて作った。姪っ子が気に入ってくれるといいなぁと思った。


みなで後片づけをしてから、部屋に戻り洗面所で石鹸で手を洗いうがい薬でうがいをした。

引き出しから可愛いレターセットを選んで姪っ子に手紙を書いた。妹には、電話ありがとう、と書いた。ストラップを包んで、封筒に宛名を書き切ってを貼った。中に手紙とストラップの包みを入れて封をした。看護師詰め所に行って看護師さんに出してくれる様に頼んだ。


昼食を知らせるチャイムが鳴り、一人でお昼ごはんを食べた。黙々と食べることに集中して完食した。

部屋に戻り昼薬を飲んで歯を磨いた。


洗濯をしようと洗濯室に洗濯カゴを持って行った。洗濯機はみな空いていた。お金を入れて汚れ物を洗濯槽に入れて、洗剤と柔軟剤を入れ口に流し入れた。そして蓋をしてスウィッチボタンを押した。

洗濯中の待ち時間に煙草を吸いに外に出て喫煙所でベンチに座り、煙草をゆっくりと吸った。現実感が無いな、と思った。病気にしろ、退院後の生活にしろ。。。不安感は無かったが、他人事のように感じられてしまうのだった。冷たい風に吹かれながら、ぼんやりと煙草を吸った。病院内の通路を一周歩いてから病棟の部屋に戻って、洗面所で石鹸で手を洗いうがい薬でうがいをした。洗濯室に行ったら、洗濯が終わっていたから部屋に戻って、ラックやハンガーを持ち、四階まで階段で登って洗濯物を干した。下着類は部屋に干して周りをハンカチで囲った。


部屋をノックする音がして返事をしたら、クールなワーカーさんだった。彼にパイプ椅子を出してやり、珈琲を淹れ金沢土産のお菓子も出した。

「ありがとうございます」と言いながら、彼は珈琲を飲まれ洋菓子も食べた。「なにかご用ですか?」と私が聞くと、「主任が退院した後に利用する調剤薬局を聞きに来ましたよね。退院後、通院するようになったら、障害者自立支援医療費受給者証を提示したら、医療費が一割負担で済みますし、収入に応じて限度額が決められています。ただし病院はここに指定され、調剤薬局も指定されて、他の医療機関では使えないです」と緑色の紙を見本に見せて下さった。「まだ文さんのは出来ていません。県が認可して作られるものですから。退院後通院する時までには出来て来ると思います」と説明された。一割負担だけなんだ、と驚いていた。「ありがたい制度があるんですね」と私は言った。「この病院のデイケアに参加する方は、朝ごはん、昼ごはん、晩ごはん代もこれで払えるから、デイケアの利用者は多いんですよ。毎朝、活動をする前に医師から問診もありますしね」と言われて、「私も家が病院に近かったらデイケアに参加したかったです」と言うと彼は苦笑していた。「お菓子、美味しかったです。文さんの部屋に来ると美味しいお菓子を出してくれると、主治医の先生から聞いていたから、実は楽しみにして来たんです。ご馳走さまでした」と彼は珍しく表情を柔らかくした。「いつでもどうぞお立ち寄り下さい」と私は彼に言って微笑んだ。彼は私より年下だった。私は彼の冷静沈着ぶりがなんだか可笑しくて、いつもちょっかいを掛けては撃退されていた。


彼が部屋を出て、自分用に親友がくれた紅茶を淹れて、引き出しから日記帳を出して先ほど聞いた制度の事を書いた。それから、マグカップを洗って布巾で拭いて戸棚になおした。本を選んでベッドに横になりながら読んでいたら寝ていまっていた。

部屋をノックする音がして目が覚めた。返事をしたら看護助手さんが「お父さんがおみえになっていますが、会われますか?」と聞いて来られて、「はい、会います」と私は言い、ベッドから降りて掛け布団を整えた。


父は袋と紙袋を手に下げていた。「大阪・京都に行って来た」とまたお土産をくれた。袋の方には駅弁が入っていたから、「食べるの?温めて来ようか」と私が父に聞くと、「昼飯を食べる時間が無くて、腹が減った」と言った。食堂の共用のレンジで駅弁を温めて、マグカップにお茶を注いだ。父は背広を脱いで机の椅子に座り、携帯で母と話しているようだった。机の上には温めた駅弁を置いて、お茶も置いてやった。私はお土産の紙袋の中身を見たら可愛らしい干菓子と、金平糖が二種類、色んな花が押し花のように付いている薄い小ぶりなお煎餅だった。食べるのが勿体無いなと思った。


「文、病気のことを先生から聞いたそうだな」と父に言われた。「ちょっと動揺したけど、もう大丈夫だよ。先生がね、必ず治る病気です、と言って下さったの。お母さんにも、私は平気にしていたって伝えてちょうだい」と言った。父は頷いてから駅弁を食べ始めた。「お父さん、忙しいねー。出張ばかりだね。お菓子、可愛いのばかりで嬉しい。ありがとう」と私は言った。


看護師詰め所に父を見送ってきます、て声を掛けて二人でエレベーターに乗り、喫煙所まで歩いて行った。

二人で無人の喫煙所のベンチに座り、煙草を吸った。「文がどんな病気であろうと、文であることには変わりが無い。気にするな」と父は言ってくれた。私は泣くまいとしたが、涙が溢れてしまった。やっと「うん」とだけ言えた。

父の車を見送ってから、病棟の部屋に戻り洗面所で手を石鹸で洗い、うがい薬でうがいをした。

ニット帽を脱ぎ、ジャンパーのポケットから煙草とライターと携帯を取り出して、机の椅子の背もたれにジャンパーを掛けた。首に巻いていたタオルも掛けた。


夕食を知らせるチャイムが鳴った。食堂まで部屋を出て歩いて行った。ほっそりとした女性が私の分のお盆を運んで下さっていた。お礼を言ってから、いただきます、と言って、食事を開始した。ほっそりとした女性は珍しく早食いで食事を完食なされて驚いた。私はゆっくりと自分のペースで食事を摂って完食した。「疲れたしねーいらいらするから、部屋に戻って買って来たお菓子も食べてから吐こうと思って」と彼女が軽い調子で言われるから、私は「そうですか」としか言えなかった。。。


部屋に入って戻る前に看護師詰め所でシャンプー類とドライヤーを出して貰って、部屋に戻り扉に鍵を掛けて、クローゼットからバスタオルとタオル、下着とパジャマを取り出した。引き出しから入浴剤も出した。

夕薬を飲んでから、部屋着や下着を脱いでシャンプー類と入浴剤を持って浴室に入った。頭からシャワーを浴びて髪を洗い、身体も洗った。また頭からシャワーを浴びて髪のコンディショナーと身体の泡を洗い流した。浴槽をシャワーで流してから、お湯を張り、湯舟にゆっくりと浸かった。入浴剤のせいでお湯は白く濁っていた。ぼんやりと私が病名を知った事をみなが心配してくれているんだな、有難いな、幸せだな、と思って涙が出て出て来た。お湯で顔を洗い深呼吸をした。

お風呂の栓を抜き、髪と身体をバスタオルで拭いて顔に化粧水や乳液ん塗り、身体にはボディクリームを塗った。そして浴槽を掃除した。濡れた床をバスタオルで拭いた。

浴室を出て下着とパジャマを着て、パーカーを羽織った。

髪をドライヤーで乾かして、仕上げにブラシを使いながらブローした。

看護師詰め所にシャンプー類とドライヤーを返しに行った。


お腹が減ったから、家から持ち帰った蜜柑を一つ食べて就眠薬を飲んで歯を磨いた。


ベッドに横になり、そのまま早寝した。



両親、妹が支えになってくれていました。


お読みくださり、嬉しく思います!

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