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不思議な部屋  作者: 竜胆
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ゼリー

陶芸の活動は毎週火曜日にあっていました。無心になってすることが出来ました。楽しかったです。

三階の陶芸の活動に参加する患者さんが食堂に集まってから、作業療法士さんと看護師さんに誘導されて、二階へエレベーターは裏から乗り込み降りた。二階の食堂には参加される患者さんが看護助手さんとテーブルについて待っておられた。日本人形のような面立ちの彼女だけだった。どこを見ておられるのか分からないが、目が会う事はまず無かった。


作業療法士さんが男の方と、女性の方。男性の看護師さんは三階から案内された方がお一人、二階の男性の看護助手さんがお一人、患者は四人だった。

この看護助手さんは、いつも日本人形のような面立ちの彼女と一緒におられた。


私は今日は、箸置きが出来上がってくる日で出来上がり具合が楽しみだった。箸置きは焼いたことにより、さらに小さくなっていたが、色の出方も満足できる仕上がりだった。妹に相談して、姪っ子が気にいるようならば、姪っ子にあげようと決めた。

新たに作るのには、退院まで約二週間になり、今回を含めあと二回しか陶芸の活動に参加できないからどうしようと悩んでいたら、男性の作業療法士さんから「二回でも大丈夫ですよ。今日成形して、来週削って形を整えられて、私たちに釉薬をどれにするのか言ってくだされば、私たちが彩色して焼いておきますから」と仰るのだった。そのお言葉に甘えることにして、私は粘土を男性の作業療法士さんから貰って、お湯呑みを作る事にした。父が職場で使う自分専用のお湯呑みが欲しい、と以前言っていたからだった。

新聞紙の上に薄い綿の布を敷いて、物差しのような板を左右に置き、間に粘土を置いて延べ棒で板の高さに粘土を広げた。男性の作業療法士さんからアドバイスを受けながら、新聞紙を巻いた空き缶を置き、伸ばした粘土をその幅にプラスティック製のナイフで切り、その粘土で缶を巻いて粘土が重なる部分は、粘土をナイフで削り取ってから、水を加えてぬるぬる状態になった粘土を接着剤がわりに塗り込んだ。底の部分は缶に巻いた筒状のにサイズを合わせてナイフで円形に切り取り、ぬるぬる粘土でくっつけた。高台は残った粘土をナイフで細く切って、ぬるぬる粘土でくっつけた。男性の作業療法士さんにキリを借りて、底に父の名前を彫った。

お湯呑みを逆さにした状態で、側面を撫でて側面がなだらかになるように形を整えていた。寸胴型のお湯呑みが出来上がるな、と思った。技術が無いから仕方がないと諦めていた。

父は赤色が好きだから、釉薬は柿釉だな、と最初から釉薬の色は決めていた。


自分の作業に集中していたから、時間が経っていることに気付いていなかった。顔を上げたら、もう皆さんは看護師さんに手伝われながら、片付け作業を始められていた。日本人形のような面立ちの女性が、大きめの皿に手に付けた釉薬を飛ばし始められ、私の方にも釉薬は飛んできていた。女性の作業療法士さんが「皆さんに迷惑がかかる行為です!」と叱っておられた。彼女は作業療法士さんを無視して、また違う色の釉薬を手でかけておられた。

「大丈夫ですか?」と二人の作業療法士さんから問われて、「はい、お湯呑みには釉薬はかかりませんでした」と私は言い、片付けを始めた。

残った粘土を男性の作業療法士さんに渡して、綿の布やナイフを洗い場で丁寧に洗った。キリは洗ってペーパーで拭いた。新聞紙も畳んで、それらを作業療法士さんに返した。作ったお湯呑みも逆さにした状態のまま預けた。

まだ日本人形のような面立ちの彼女は、お皿と睨めっこしながら、作業を止める気配が無かった。


「先に帰られてください」と、男性の作業療法士さんに言われて、三階の参加メンバーの私を含めた三人は、看護師さんに誘導されて三階に戻った。


相変わらず彼女には驚かされるなぁと思いながら、部屋に戻り洗面所で手を石鹸で念入りに洗ってうがいをした。煙草を吸いたくなって、クローゼットからジャンパーを取り出し、ポケットに煙草とライターと携帯を入れ、ニット帽を被って部屋を出た。エレベーターで一階に降りて喫煙所に行ったら、天然な彼女がベンチに座って煙草を吸っていた。


「お久しぶりですね!調子はいかがですか」と聞くと、彼女は「薬が変わって、睡眠時間がおかしくなったから病院に来たのー」と言った。「それは困りますね。。。」と私が言うと、「あんまり気にしないでね、私の病気は特殊だから」と言われるのだった。


彼女は看護師免許を持っておられた。そして精神の病だけではなく、他にも難病を持っておられた。日曜日は大浴場が沸かされず、大部屋の方はお風呂に入れなかった。彼女は難病の為に毎日お風呂に入る必要があって、日曜日に私の部屋のユニットバスを借りに来られていた。使った後の浴槽を洗い、壁の水滴までバスタオルで拭いてくださっていた。彼女のお風呂の使い方には感心させられていた。


二人で煙草を吸いながら、ぼんやりとした。彼女は不規則な睡眠に疲れていて、私は陶芸に集中し過ぎてくたびれていた。彼女は気だるそうにしていた。

「文ちゃん、退院いつー?」と聞かれて、「あと二週間くらいです」と言うと、「よかったね〜」とのんびりとした口調で言われた。


二本目の煙草に火をつけて、あー効くなぁと思いながら煙草を吸っていたら、「文ちゃん、煙草似合わないねー」と、彼女からも言われた。「お酒飲まないんで、唯一のストレス発散法です」と私が言うと、「そうなんだー」と笑っておられた。


彼女のお父さんが車で迎えに来られて、私たちは別れの挨拶をした。彼女はずっと手を振ってくれていた。


病棟に戻り、三階の私の部屋に入った。ニット帽を脱ぎ、ジャンパーのポケットから煙草とライターを出して、引き出しになおし、携帯は机の上に置いた。ジャンパーをクローゼットになおした。洗面所で石鹸で手を洗い、歯がなんだか痛むから歯を磨いた。するとやはり右上の歯が痛む感じがした。歯医者さんが苦手な私はゾッとしたが、看護師詰め所におられる看護師さんに歯が痛い、と相談をしたら、病院の歯科に連絡を取ってくださり、すぐに診てもらえる事になった。


歯科はレントゲン室の隣にあった。男性の看護助手さんが連れて来てくださった。

促されて診察台に座ると、女性の看護師さんが「どうされましたか?」と尋ねられたから、「右上の歯が痛みます」と言うと、歯科医の先生が来られた。若い女性の先生だった。

「口を大きく開けてください」と看護師さんに言われて、私は出来るだけ大きく口を開いた。

「親知らずですね」と先生が仰り、別室に移りレントゲン撮影を看護師さんにされた。

歯の画像を私にも見せてくださった。これが痛みの原因か、と思った。

「これからさらに痛くなります。抜きますね」と先生が仰られて同意した。まず麻酔を打たれた。顔にガーゼを被せられていたから、先生の処置は分からなかったけれど、歯を抜くときに頭から引っ張られる感じがした。

「しばらく出血しますから、綿を噛んでいてくださいね。綿は看護師に渡してください。お風呂も今夜は入らないでくださいね」と看護師さんから言われた。

うがい薬と痛み止めと抗生物質を出してくださった。

看護師さんたちは歯科衛生士の資格も持っておられるのかな?と疑問に思った。

看護師さんが連絡してくださったのか、先程歯科に連れて来てくれた看護助手さんが迎えに来てくださっていた。

「大丈夫ですか」と心配気に問われたが、喋れないので、指でオッケーのサインをして見せた。


幸い痛みは無かった。まだ麻酔が効いていて唇や頰の感覚がおかしかった。綿をしばらくして外したら、血で染まっていた。看護師詰め所におられる看護師さんに、袋に入れた血塗れの綿を渡した。歯科から連絡が来ていたようで、「血液の処理法は難しいのです」と仰られた。そうなのか、と私は「お世話になります」と言って頭を下げた。血液で感染する病気は多いからかな、と思った。


口の中が鉄の味がした。うがい薬でうがいをしたら、少しはマシになった。

くたびれたな、寝ようと思っていたら、携帯が鳴り父からだった。

「喫煙所にいるから降りて来いよ」と言うので、「歯を抜いたばかりで、くたびれ果ててる。行かない」と私が言うと通話は切れた。

ベッドに横になっていたらノックの音がして、「お父さんが面会に来られていますが、会われますか」と看護助手さんが聞いて来られた。正直、会いたく無かったが、「はい、会います」と返事をした。

部屋に入って来た父は、「大丈夫なのか」とうるさかった。話すのも億劫なのに、身勝手だなと父を恨めしく思った。私はだんまりを決め込んだ。

父は「抜いた所を見せてみろ」などとうるさく言って来たが、私は口を開かなかった。

父が携帯で誰かに電話をしていた。私は眠たくなって寝てしまった。


「文ちゃん」と呼ばれて目が覚めた。お洒落な看護助手さんだった。「親知らずを抜いたんだって?夕食、お粥に変えてあるよ」と言われて、私はガックリした。「どうしたの?痛む?」と聞かれて、「違います。お粥が苦手なんです。。。」と私が言うと「マジ?」と拍子が抜けたような表情をなされた。「お父さんが、ゼリーとかヨーグルトを買って来てくれてるよ。それなら食べれそう?」と彼が言うからビックリした。彼は私の顔を見て驚いているのが分かったのか、「文ちゃんのご両親って、文ちゃんに甘々だよね」と言われてしまった。その通りだったから、私はただ「はい」と答えた。

彼に頼んで、看護師詰め所に預けられた、父が買って来てくれたゼリーやヨーグルトを受け取った。詰め所内の冷蔵庫で冷やされていた。

「明日からのご飯は常食(じょうしょく)で大丈夫?お粥は嫌でしょ。柔らか目に炊いたご飯も選べるよ。どうする?」と聞かれて、「痛みはないので、常食で大丈夫です」と答えた。


個室の冷蔵庫にそれらを入れてから、マスカットゼリーを一つ食べた。口の中が冷えて気持ちが良かった。

抗生物質と夕薬と就眠薬を一緒に飲んだ。歯を磨き、顔だけ洗って肌の手入れをしてパジャマに着替えた。

ベッドに入って、父に電話を掛けた。出なかったので、母に掛けてみたら母は出てくれた。

「歯を抜いたの?お父さんが何なら文は食べるのか?って、聞かれたわ。ちゃんとゼリーとヨーグルトをお父さん買ってくれたの?」と言うのだった。「歯医者さんで親知らずを抜かれて、くたびれ果てて私寝ていたの。お父さんが帰って来たら、ありがとうって言ってくれる?」と頼んだ。「明日、朝からあなたの所に行くわ。何か持って来て欲しいもの無い?」と言うのだった。私は気が弱っているのか、涙が出て来た。「文?痛むの?」と言われ、ますます涙が出て嗚咽が溢れ、「大丈夫よ。明日、行くからね。もう寝なさい」と母から言われ、「うん」とだけ答えて、おやすみ、とすら言わずに電話を切った。そのまま寝てしまったので、父からの電話には気が付かなかった。

病院の歯科は、看護師さんが歯科衛生士さんの仕事をされていてかなり謎でした。。。

両親の愛情を素直に受け止めて行けるのか。

これから書いて行きますね。

お読みくださり、ありがとうございますm(_ _)m

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