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不思議な部屋  作者: 竜胆
24/40

ハンバーガー

面会しに来てくれた親友と文の会話が中心になります。

「文、実家はどうだったの」と彼女が聞いて来た。「それがね、意外に平気だったの。帰る日に、カウンセリングの先生から、『ご両親も戸惑いがあられます、文さんから歩み寄ってみてはどうですか』と言われて、両親の私に対する思いに気付かされてね、実家では料理とか家事をして過ごしたよ」と、私が言うと彼女は少し驚いた表情をした。「頑張ったのね」と言われ、「頑張り過ぎて、くたびれちゃった。加減が難しい」と私は言った。


「これ、父が東京で買って来たんだけど、期間限定らしいよ。食べようよ」と言ってお菓子に入れられていた、お店の案内カードを見たら、栗を洋酒とお砂糖で煮たのが丸々一つ、中に入っているお菓子だと分かった。

二人でその洋菓子を食べた。

「今って、栗の季節?もう終わってない?」と私が彼女に言うと、「たぶん。期間限定、ギリギリ間に合ったんじゃない?」と彼女が言うから、おかしくなった。


「文はまた一人暮らしをするの」と問われた。「うん。そうしたい。実家は息が詰まる。。。」と嘘の言い訳をした。本当は自由に食べ吐きが出来なくなるから、実家に帰りたくないのだった。彼女には、私が摂食障害であるという事は言えないでいたのだった。彼女は何か考えこんでいる表情をしていた。

彼女は肉体的にも精神的にも健やかな女性で、私の食べ吐き行動をもし知られたら、どう思われるんだろうという不安感があった。


「お菓子、甘かったね。紅茶、また違うのを淹れようか」と私が言うと、「あと、知っているのはウバだけだわ。文はどれにする?」と聞かれて、「私も分からない。ディンブラにしようかな」とウバと同じセイロンティーを選んだ。


「実家にはサクラがいてね、私のことを覚えてくれていて私から離れなかったのよ。一緒に寝たの。可愛かったー」と私が言うと、「懐かしい!会いたいなー」と彼女が言うから、「冬休みに、旦那さんと子どもたちと一緒に実家に遊びにおいでよ」と私が言うと、彼女は「いいの?」と言うから、「いいに決まってるじゃん」と私は言った。


「そろそろ喫茶店に行こうか」と、マグカップを洗面所で洗ってから、マフラーを巻いてジャンパーを羽織り、赤いニット帽を被った。鍵が掛かった小さな引き出しから、お財布を取り出して、ジャンパーのポケットにお財布と携帯、煙草とライターを入れた。親友も上着を着てバックを持った。

私は父のお土産のお菓子と柑橘類を紙袋に入れて親友に渡そうとしたが、「柑橘類は海に行った時に果物狩りをして、家に沢山あるから文が食べなさいよ」と言われて、お菓子だけ六個を紙袋に入れて渡した。「みなで食べて。ご両親にも」と言って。


「そのマフラー、似合ってる」と親友に言われて嬉しくなった。「昨日、近くのショッピングセンターで買ったばかりなのよ」と私が言うと、「ニット帽も可愛い」と言われて、「これは母が編んでくれたの」と私が言うと、彼女は「お母さん、器用ねー」と驚いていた。


喫茶店に行く為に、近隣外出届を書いていたら、親友は興味があるのか私が記入するのをずっと見ていた。看護師詰め所におられた看護師さんに、「病院の喫茶店に行って来ます」と声を掛けて、私たちはエレベーターで一階に降りて、敷地内にある喫茶店まで歩いて行った。


喫茶店はお客さんは私たちしかいなかった。まだ十二時前だった。私は若い作業療法士の女の子から、「ハンバーガーを食べてみて下さい。驚きますよ」と教えられていたので、親友にも話して、二人ともハンバーガーを頼むことにした。飲み物は、親友がオレンジジュースを頼んだから、私も真似てそれを頼んだ。ジュースを飲むのは、久しぶりだな、と思っていた。


「あのね、文、すごく具合が悪そうに見えるの。化粧していても顔色の悪さが分かる。こんなに痩せてしまって心配。。。一人暮らしは何かあった時に取り返しがつかない」と、彼女は声をひそめて言って来た。私は胸が軋んだ。「心配してくれてありがとう。少しずつだけど、体重増えてるのよ。食べれるようになったしね。大丈夫よ」と私は笑顔を無理矢理作った。「どうしても実家は嫌なのね、分かった。もう言わないわ」と彼女は折れてくれた。彼女にこんな言葉を言わせた自分を嫌悪した。


やっと運ばれて来た、全て手作りのハンバーガーは、パテも分厚く、野菜はトマトと大量のレタスが挟まれていた。玉ねぎがたっぷりのあっさりとしたミートソースもパテにかけてあった。スライスチーズが程よくとろけていた。パンも手作りなのだった。それにポテトと、オレンジジュースは大きなグラスになみなみと注がれていた。セットで四百円だった。

ハンバーガーは高さがかなりあり、私たちは二人とも潰すようにして食べた。「すごいボリュームだね」と親友は笑っていた。「しかも安くて美味しいね」と私は言いながら食べた。


「娘さんたち、この前病院に来て、何て言ってた?」と気になっていたことを聞いてみた。「また行きたい、連れて行って、とうるさいよ。今日は文に会いに行くのを内緒で来たの。母にも文に会いに行くとは言わずに来たの」と言われて、胸が詰まる思いがした。

「お母さま、私が精神科病院に入院していることをご存知なの?」と聞くと、「言ってない。旦那にも口止めしてる」と言うので、安心した。「いずれ落ち着いたら、自分から言うね。ありがとう」と言うと、彼女は私の手をポンポンと優しく叩いた。

私たちはなんとかハンバーガーとポテトを食べてしまって、オレンジジュースを飲みながら、親友とのたわいも無い会話を楽しんだ。彼女は旦那さんに対する愚痴や子どもたちの話を、私はサクラの可愛さについてと、一人暮らししている住宅に連れて行きたいという話をした。


今日は平日だったせいなのか、分からないが、他のお客さんは一向に現れなかった。


割り勘でお金を払い、駐車場まで見送りに行ったら、彼女は、喫煙所に入って行くから、え?と思った。親友はバッグからポーチを出した。中には、煙草とライターが入っていた。学生時代から独身時代、彼女は煙草を吸っていた。結婚して子どもを産んでからは、やめたと思い込んでいたから驚いてしまった。

「主婦もストレス溜まるのよ。旦那と子どもに隠れて吸ってるの」と言いながら、彼女は煙草に火を付けた。私もポケットから、煙草とライターを取り出して、煙草に火を付けて吸った。

結婚していない私には分からない苦労があるんだな、と思った。

彼女は女性向けのデザインの煙草を吸っていたから、私は試しに吸ってみたくて、お互いの煙草を一本ずつ交換しようという話を持ちかけた。

彼女が吸っている煙草は私のよりも細くて長かった。同じくメンソールだった。「やっぱり、慣れた煙草がいいね」と私たちは同意見だった。

彼女が帰るのを手を振って見送った。


病棟に帰って、近隣外出届に帰って来た時刻を記入してから、看護師詰め所におられた看護師さんに、「友達は帰りました」と言ってから部屋に戻って、慌てて部屋着に着替えて歯を磨き、一時半からの陶芸の活動に間に合うようにバタバタとした。

マフラーには煙草の臭いが付いてしまっていたから、消臭剤をスプレーして干しておいた。

親友に『いつもありがとう!気をつけて帰ってね。今度は子どもたちも連れておいでー』というメールを送った。


看護師詰め所に行き、コンタクトレンズの容器と液を出してもらい、部屋に戻って洗面所でコンタクトレンズを液で洗ってから、容器に液を入れコンタクトレンズをその中に入れて蓋をした。

眼鏡を掛けて、容器と液をを持って看護師詰め所に預けに行った。陶芸は紙ヤスリによる「削りや磨き」の作業もあり、土埃がその時にはかなり舞うので、コンタクトレンズをしていたら、悲惨な目に合うだろうと考えて、眼鏡にしたのだった。


部屋に戻り、日記帳を引き出しから出して日記に親友とのやりとりや、言われたことを書いていたら、「陶芸教室に参加なさる方は食堂にお集まり下さい」という、作業療法士さんの声が聞こえて、日記帳を引き出しになおして、部屋を出て食堂に向かった。

ハンバーガーが喫茶店の一番の人気メニューでした。かなり分厚かったです。食べるのに苦労しました。とても美味しかったです。


お読みくださり、ありがとうございます!

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