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不思議な部屋  作者: 竜胆
22/40

お土産

第一回目入院も終盤に入って来ました。

部屋に戻って、帽子を脱ぎ、ジャンパーをクローゼットに掛けて、洗面所で手を石鹸で洗い、うがいをした。


四階の洗濯物干し場に行き、干していた洗濯物に触れてみたら、乾いていたので洗濯物カゴを取りに部屋に戻って洗濯物干し場に行き、乾いた洗濯物を取り込み、私用のハンガーやラックもカゴに入れた。置いたままにしと置くと、名前を書いていても、盗られてしまうのだった。

部屋に戻って、部屋の中に干していた下着やハンカチもラックから外して、洗濯物をベッドの上に広げて、私もベッドに上がって洗濯物を畳んだ。

それぞれを自分なりに決めた場所になおして、くたびれたな、とインスタント珈琲を薄めに淹れて飲んだ。病院のお母さんがくださった、二つの可愛いマグカップを愛用していた。

本当は病院では、割れ物のお湯飲みやマグカップは禁止されていた。化粧水や乳液の瓶も硝子製の物は、同じく部屋に持ち込み禁止だった。たまたま私が使っていた敏感肌用の化粧水や乳液のボトルは、硝子製では無かったので、入院時にスムーズに部屋に持ち込みをすることが可能だった。

シャンプー類を看護師さんに預けなければならないのは、どのような理由からか分からなかったが、飲んでしまう患者さんがいるのかな、くらいしか想像が出来ないのだった。


親友に電話をしてみた。しばらく鳴らしたけど彼女は出なかった。

明日は、午後一時半から陶芸があるから、出来るなら、午前中に来て欲しいという内容のメールを彼女に送った。


日記帳をつけてから、自宅から持って来ていた本の中から、たまたま読んだことが無かった本を選んで読んだが、やっぱり何度も読み返すくらい好きな本を読むことにした。読み終わるかな、というくらいの時に、携帯が鳴った。表示を見たら、親友からだった。


「もしもしー、メール見たよ。明日、朝から行くわ。何時くらいから、面会出来るの?」と親友が聞くので、「そうね、十時くらいはどう?下の子、連れて来たら?」と、私は彼女に言ってみた。「ううん、親に預けて私だけで行くわ」と彼女は言った。「そう、分かった。明日楽しみにしてる」、「また明日ね」と電話を切った。


読みかけの本を読了して、机の引き出しから、日記帳を取り出して、日記をつけた。

親友と電話したことや、本を久しぶりに読むことが出来たことを書いた。


クローゼットから、ジャンパーを取り出して羽織ってから、乾いたばかりのニット帽を被って、ポケットに煙草とライター、携帯を入れて、机の鍵がかかる所になおしている、小さな引き出しの鍵を開けてお財布を出して、お財布もポケットに入れて部屋を出て、看護師詰め所のカウンターに置かれている、近隣外出届けに行き先と病棟を出る時刻を記入してから、エレベーターに乗り、一階に降りて、まずは喫煙所で一服した。

煙草の臭い消しがわりに飴を舐めながら、歩いてすぐのところにある、ショッピングセンターの中にある、衣類コーナーでマフラーを見る事にした。色や柄物など多数並べてあった。私は肌触りの良さを重視して、色は表は白に近い淡いグレーで裏がグレーの物を選んだ。セールで安くなっていて、千円も出さずにウールのマフラーが買えた。

お店のお買い物カードを作るとポイントがつきますよ、とレジの方に勧められるままカードを作った。マフラーのポイントも付いた。

友達の子どもさんや旦那さんにお土産を買いたくて、店の中の色んなコーナーを見たけれど、決めきれずに、結局、子どもたちが好きだと聞いていた柑橘類と、切り花コーナーに柔らかいピンクの薔薇があったから、それらを買って病棟に戻って、病棟に戻った時間を記入をしてから、看護師詰め所におられた看護師さんに、買って来たものをチェックしてもらった。

「素敵な薔薇ですね」と看護師さんから言われた。「明日、友達が面会に来るので、部屋に飾りたいなと思いまして」と私が言うと、「きっと喜ばれますよ」と仰った。


部屋に帰り、父が以前買って来てくれていた外国製の炭酸水のペットボトルが可愛くて、捨てられずにいたのを花瓶にすることにして、薔薇の棘を丁寧に取って、根元の葉も処理してから、ペットボトルに薔薇を生けて机に置いた。部屋が優しい雰囲気になった。

柑橘類も机に置くと、部屋が明るくなるように感じられた。


マフラーの値札を外すために、看護師詰め所におられた副長さんに、ハサミを貸してくださいと、お願いをしてその場で切ってハサミをお返しした。

「お洒落なマフラーね!」と言われて、「セール中で千円しませんでした」と私が言うと、副長さんはタグをご覧になり、「日本製だしウール百パーセントじゃない、文さんお買い物上手ね」と褒められて嬉しくなった。私は副長さんにもマドレーヌを渡したかったので、「部屋に来て下さいますか?」とお願いをして、一緒に私の部屋に行った。


机の薔薇をご覧になり、「薔薇を飾ったのね。香りがいいわね」と仰り、「明日、友達が面会しに来てくれるので、飾ってみました」と私は言った。

「地元の銘菓のマドレーヌなんです。副長さんには、入院してからずっとお世話になりっぱなしでした。隔離室で生理になってしまった時もご自分の生理用品をくださったり、鳥の巣頭になっていた髪を洗って丁寧に縺れを解いてくださいましたよね。ずっと私を見守ってくださっておられました。ありがとうございます」と、袋から、マドレーヌを二つ取り出して、「一つは病棟長に渡してくださいませんか。病棟長さんも私を気遣ってくださり、会う度に声を掛けて下さっています」と言ってから、私は副長さんに珈琲を淹れてあげた。副長さんはマドレーヌを見て、やはり驚かれて、「大きい!ありがとう、病棟長にも渡すね。きっと驚かれるよ」と仰った。

副長さんに、「主治医の先生には、なんだか気が引けて渡せなかったのです」と私が言うと大笑いなされた。「私から渡そうか」と言ってくださったので、袋からもう一つマドレーヌを出してお渡しした。

「試験外泊はどうだったの?」と尋ねられて、「両親と一緒に過ごすのは約十年ぶりでしたから、お互いに気を遣いました。私が実家は嫌々ばかり言っていたら、カウンセリングの先生から、ご両親も戸惑いがあられる。あなたの方からご両親に歩み寄ってみたら、というアドバイスをされました。それで目が覚めて試験外泊中は料理や家事を頑張り過ぎるほどにしました」と言うと、「頑張り過ぎるのは、良くないの。疲れたでしょ。疲れない程度に続けてして行く事が大事なの」と言い聞かせるように仰られた。

「マドレーヌと珈琲ありがとう。マドレーヌは、先生と病棟長に渡すね」と言って、部屋を出て行かれた。

マドレーヌを渡せてホッとした。

カウンセリングノートを机の引き出しから出して、さっき副長さんから言われた言葉を書いた。


一服して少し歩こうと考えて、首には二重に折ったタオルを巻き、椅子に掛けていたジャンパーを羽織りポケットに手を入れたら、お財布を入れたままにしていたから、鍵で小さな引き出しを開けてお財布をなおしてからまた鍵を掛けた。ニット帽を被って、エレベーターを降りて外に出て喫煙所に向かった。

クラクションの音がして振り返ると、父の車だった。驚いた。

父と一緒に喫煙所で煙草を吸った。

「出張帰り?お疲れさま」と私が言うと、「土産があるぞ」と言うので、「ありがとう、明日、友達が面会しに来るって言うから、一緒に食べるね」と言うと、「誰だ」と言うから、「高校からの親友のあの子だよ」と私が言うと、「良かったな」と安心した顔色を一瞬浮かべ、にこにこ顔になった。「文はマフラーは持っていないのか」と、タオルで首を巻いている私を呆れた顔をして父が言うので、「今日ね、近くのショッピングセンターにお買い物しに行って買ったの!ね、早く部屋に行こう。見て欲しい」と、私は父に言ったが、二人して次の煙草にも火を付けたのだった。父は車に戻ってお菓子が入った紙袋を私にくれた。東京に行ったみたいだ、とお菓子の包みから判断した。


父と、面会手続きをする為に総合受付に行った。

面会用紙には、面会者の名前、入院患者の名前、間柄、を書く項目があった。

総合受付の方が、私が入院している病棟に電話をなされて、「いま、一緒におられますよ」と仰るから、恥ずかしくなった。許可が下りたようで、「どうぞ、お部屋でお話しなされてくださいね」と総合受付の方から言われて、父と病棟まで歩いて行った。

私は面会にこんなに面倒な手続きがある事を知らなかった。


看護師詰め所に寄って、看護師さんに「父が来ました。お菓子をくれました」と見せた。面会者が持ち込む荷物のチェックもなされていた。


父は部屋に入って、机の上の薔薇や柑橘類になかなか気付いてくれなかったから、私は焦れて自分から、「見て、キレイでしょ」と言ったのだった。「あぁ。きれいきれい。少し横にならせてくれ」と言って、スーツのジャケットを脱いでベッドに横になった。マフラーも見てくれなかった。

私は父のジャケットを椅子の背に掛けて、引き出しから日記帳を取り出して今日の出来事を書いた。


そろそろ五時になるな、と約三十分寝た父を起こすべく、珈琲を淹れてあげた。父の肩を優しく揺すると、父は「は!いま何時だ」と起きた。「五時すぎだよ。珈琲飲む?」と、私が言うと「うん」と言いながら「あー寝た」と言うから、「イビキ、歯ぎしりで賑やかでしたよ」と私が言うと父は笑っていた。「お土産のお菓子、開けてみようか、お腹空いてるでしょう」と父に聞くと、「食べたい」と言うから笑ってしまった。

丁寧に包装紙を破り箱を開けたら、期間限定のお菓子だった。父は二個も食べた。


看護師詰め所の看護師さんに、父が帰ります、と声を掛けて、私は父を見送りがてら、喫煙所で一緒に煙草を吸った。

「お父さんとお母さんは、私が帰った時に疲れなかった?」と聞いてみた。「お母さんは文が頑張り過ぎていて疲れなかっただろうかと心配していたぞ」と言った。「お父さんは?」と私が聞くと、「俺は楽しかった。料理も美味しかった」と言った。「そっかー」と私は言いながら、二本目の煙草に火をつけた。両親の気持ちを知るのには時間がかかるな、と感じた。


父を見送って、病棟に戻った。煙草とライターと携帯をポケットから出してジャンパーをクローゼットになおして、ニット帽を脱ぎ、洗面所で石鹸で手を洗って、うがいをした。


机の引き出しに煙草とライターをなおして、日記帳を取り出して、両親の事を書いた。


夕食の時間になり、食堂に歩いて行き、カートから私の名前のカードのお盆を引き出して、いつも食事をするテーブルに夕食が乗ったお盆を置いた。他のメンバーの分のお盆もそれぞれの席に置いた。

二人組はしばらくして食堂に来た。私が手招きすると笑ってやって来た。「文ちゃん、ありがと〜」と言われ、「珍しく早くに来ましたから」と私が言うとニコニコと二人とも笑っておられた。ご飯だけ半分残してしまった。


部屋に戻り、歯を磨いてから、お風呂に入るのも面倒で、明日の朝に入ろうと部屋着からパジャマに着替えて、顔を洗い肌のお手入れをして、夕薬と就眠薬を一緒に飲んで寝た。

周りの方々の親切さには、感謝の気持ちしかありませんでした。

両親との関係については、まだ課題が残りますが。。。

父は出張の度に必ずお土産を買って来てくれていました。マドレーヌもお土産でしたから、この題にしました。


お読み下さり、ありがとうございました!

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