025.異世界ナンパ師カスヤ
メクソリンダス王国「仮面舞踏会」
参加は独身貴族階級に限られ、仮面をつけた男女が一晩中、踊り明かす。
舞踏会の意義は婚活、恋人探しであり、年に一度の開催で百組ほどのペアが報告されているという。
◆
だだっぴろい空間に、夜空まで届きそうな高い天井。
大仰な装飾と大陸中の贅を尽くした調度品。
紳士淑女の華やいだ笑い声が場の空気を柔らかいものにする。
和也は王宮内「舞踊の間」で総勢一万人の男女の中に紛れ込んでいた。
アデル、ネルネ、ナターシャにバズ・ビザールらも仮面を着用し貴婦人らとグラスを傾けている。
一応、火竜フパイラーンも仮面を着用してるが、浴びるほど酒を飲み蜷局を巻いて眠りこけていた。
「魔王はまだか」
シャンパンが進み、和也はほろ酔い状態にあった。
楽団が演奏を始めダンスがはじまる。アデルたちは和也を取り合うが、その場の空気に流され、手持ちぶさたの貴族青年たちと消えていった。
「待たせたのう。カズヤ」
桃色の髪をなびかせ、背の高い女が話しかけてきた。
仮面はブルーのラメで装飾されており、細い鼻梁と柔らかそうな唇によく似合う。
優雅な音楽が流れる中で、貴族の男たちはパートナーそっちのけで女に気を取られている。
和也は言葉を失いそうになった。
世界中の宝石をかき集めても、仮面をまとった彼女に叶わぬであろう眩さが、そこにはあった。
「よく来たな。魔王」
和也は言葉をようやく絞り出した。
「お前に見せたいものがあるのじゃ」
魔王は仮面をはぎ取ろうとした。
ちょうどその時、楽団の演奏が終わり、銅鑼を力強く叩く音が「舞踊の間」に鳴り響いた。
「さぁ、ここからはアピールタ~イム!!!!」
司会者をつとめるメクソリンダスの国王陛下が大声を張り上げる。
「愛を伝えたい男女は、お相手の前で、仮面をとってください!!!」
メクソリンダス舞踏会恒例の「アピールタイム」のはじまりだった。
「いかなきゃ!」
「私が先よ!」
「どいて、どいて」
「告白しなきゃ!!彼の前で一番最初に仮面をとってやる!」
「私の方が先よ!どきなさいよ!!」
そこかしこで貴族青年の手を取り踊っていた婦女子たちが、男たちを突き飛ばし一カ所に集まる。
そして彼女たちは、仮面を脱ぎ捨てた。
数にして五千名ほどか。そこにはアデルやネルネ、バズも含まれていた。
「「「「カスヤ~!!!!」」」」
女たちが素顔をさらけ出した先は、和也だった。
「な…なんじゃと…」
魔王は自らの仮面に手をかけたまま、固まっていた。
「やれやれ。めんどくさい女たちだ。異世界生活たった数ヶ月でこれか」
和也と彼を取り巻く婦女子の足下には、山のように重なり合った、色とりどりの仮面。
「さて、魔王…」
和也は魔王の顎をクイっとひきよせた。
「俺に見せたいものがあるんだって?」
「く…おのれカズヤめ」
魔王は震えながら、自らの仮面を外そうとしたその指先を元の位置に戻す。
「妾は魔王…魔王なのじゃ」
「うるせぇよ」
和也は、魔王の唇をむさぼり、言葉を遮った。
「ちょっ」
魔王は仮面の奥で瞳を丸くした。
「お前も脱ぎたいんだろう…仮面」
和也は魔王の仮面に手をかけた。
「わ、妾は…」
魔王ことヴィボッセの瞳には大粒の涙が流れる。
「今夜は全員、相手するぜ」
和也は笑った。そして魔王の仮面を素早くはぎ取った。
◆
CAST
春日井和也:ニノ宮良馬
ナターシャ:エイドリアン・マトリョーシカ
火竜フパイラーン:アンディ・マントル(モーションキャプチャー)
アデル:エルゼ・フランケンシュタイン
ネルネ:武内ビビンバ
バズ:キャスリン・ボガード
メクソリンダス国王:サム・ルッソ
ガーゴリン国王:鈴木ボーガス
アナペス将軍:テリー・スパンコールスキー
ドクロマスク将軍:肝付ピンピン
初代魔王:加藤清孝
川崎由実:原川香織
二代目魔王:エリーザ・ワイゼ
エキストラ:雑司ヶ谷国際大学のみなさん
その他
衣装協力:ピョーコ
美術:チパチパアカチン
音楽:ザバーバ・エスパニョーラ
メインテーマ曲:サンザンキノウオールシターゼ「色きちがい行進曲」
原作:実時彰良「異世界ナンパ師カスヤ」ゴミステ書房
2018「異世界ナンパ師カスヤ」製作委員会




