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025.異世界ナンパ師カスヤ

 メクソリンダス王国「仮面舞踏会」


 参加は独身貴族階級に限られ、仮面をつけた男女が一晩中、踊り明かす。

 舞踏会の意義は婚活、恋人探しであり、年に一度の開催で百組ほどのペアが報告されているという。



 だだっぴろい空間に、夜空まで届きそうな高い天井。

 大仰な装飾と大陸中の贅を尽くした調度品。

 紳士淑女の華やいだ笑い声が場の空気を柔らかいものにする。


 和也は王宮内「舞踊の間」で総勢一万人の男女の中に紛れ込んでいた。


 アデル、ネルネ、ナターシャにバズ・ビザールらも仮面を着用し貴婦人らとグラスを傾けている。


 一応、火竜フパイラーンも仮面を着用してるが、浴びるほど酒を飲み蜷局を巻いて眠りこけていた。


「魔王はまだか」


 シャンパンが進み、和也はほろ酔い状態にあった。


 楽団が演奏を始めダンスがはじまる。アデルたちは和也を取り合うが、その場の空気に流され、手持ちぶさたの貴族青年たちと消えていった。


「待たせたのう。カズヤ」


 桃色の髪をなびかせ、背の高い女が話しかけてきた。


 仮面はブルーのラメで装飾されており、細い鼻梁と柔らかそうな唇によく似合う。


 優雅な音楽が流れる中で、貴族の男たちはパートナーそっちのけで女に気を取られている。


 和也は言葉を失いそうになった。


 世界中の宝石をかき集めても、仮面をまとった彼女に叶わぬであろう眩さが、そこにはあった。


「よく来たな。魔王」


 和也は言葉をようやく絞り出した。


「お前に見せたいものがあるのじゃ」


 魔王は仮面をはぎ取ろうとした。


 ちょうどその時、楽団の演奏が終わり、銅鑼を力強く叩く音が「舞踊の間」に鳴り響いた。


「さぁ、ここからはアピールタ~イム!!!!」


 司会者をつとめるメクソリンダスの国王陛下が大声を張り上げる。


「愛を伝えたい男女は、お相手の前で、仮面をとってください!!!」


 メクソリンダス舞踏会恒例の「アピールタイム」のはじまりだった。


「いかなきゃ!」


「私が先よ!」


「どいて、どいて」


「告白しなきゃ!!彼の前で一番最初に仮面をとってやる!」


「私の方が先よ!どきなさいよ!!」


 そこかしこで貴族青年の手を取り踊っていた婦女子たちが、男たちを突き飛ばし一カ所に集まる。


 そして彼女たちは、仮面を脱ぎ捨てた。


 数にして五千名ほどか。そこにはアデルやネルネ、バズも含まれていた。


「「「「カスヤ~!!!!」」」」


 女たちが素顔をさらけ出した先は、和也だった。


「な…なんじゃと…」


 魔王は自らの仮面に手をかけたまま、固まっていた。


「やれやれ。めんどくさい女たちだ。異世界生活たった数ヶ月でこれか」


 和也と彼を取り巻く婦女子の足下には、山のように重なり合った、色とりどりの仮面。


「さて、魔王…」


 和也は魔王の顎をクイっとひきよせた。


「俺に見せたいものがあるんだって?」


「く…おのれカズヤめ」


 魔王は震えながら、自らの仮面を外そうとしたその指先を元の位置に戻す。


(わらわ)は魔王…魔王なのじゃ」


「うるせぇよ」


 和也は、魔王の唇をむさぼり、言葉を遮った。


「ちょっ」


 魔王は仮面の奥で瞳を丸くした。


「お前も脱ぎたいんだろう…仮面」


 和也は魔王の仮面に手をかけた。


「わ、(わらわ)は…」


 魔王ことヴィボッセの瞳には大粒の涙が流れる。


「今夜は全員、相手するぜ」


 和也は笑った。そして魔王の仮面を素早くはぎ取った。



   CAST


 春日井和也:ニノ宮良馬

 ナターシャ:エイドリアン・マトリョーシカ

 火竜フパイラーン:アンディ・マントル(モーションキャプチャー)

 アデル:エルゼ・フランケンシュタイン

 ネルネ:武内ビビンバ

 バズ:キャスリン・ボガード


 メクソリンダス国王:サム・ルッソ

 ガーゴリン国王:鈴木ボーガス

 アナペス将軍:テリー・スパンコールスキー

 ドクロマスク将軍:肝付ピンピン


 初代魔王:加藤清孝

 川崎由実:原川香織


 二代目魔王:エリーザ・ワイゼ


 エキストラ:雑司ヶ谷国際大学のみなさん


   その他


 衣装協力:ピョーコ


 美術:チパチパアカチン


 音楽:ザバーバ・エスパニョーラ


 メインテーマ曲:サンザンキノウオールシターゼ「色きちがい行進曲」


 原作:実時彰良「異世界ナンパ師カスヤ」ゴミステ書房


 2018「異世界ナンパ師カスヤ」製作委員会

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