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022.愛する女の幸福を考えろ

 ガーゴリン魔王国、魔都ジョンダウイジャーナには夥しい数の髑髏兵の残骸が転がっている。動くものはもうどこにもいない。


 静けさを破る、うすら寂しい季節はずれの風が吹いた。


 そこかしこの建物が瓦解し、燃え尽きている。戦いに無関係な住民たちは避難しているため人間の死体がひとつとして無いのが幸いだった。


 連合国軍と魔王国軍の衝突から一週間余りが経過していた。


 和也たちは、この無人状態の都に野営を置くことにした。


 まだ魔都のあちらこちらで戦闘が繰り広げられているものの、主を失った髑髏兵など暴走する玩具のようなものであり、人間たちが蹴散らし数は減っていった。戦いはすでに集結しつつある。


「さて、こいつらをどうするかね」


 手足を縛られた魔王軍の大物が二人、アデルによって和也の前に転がされた。


 ひとりは、ギゼヌ魔王国の国家元首であったアナペス将軍。


 目元を覆い隠す赤いマスクをはぎ取られ、大層な軍服を纏っただけの、ただの中年男になっている。彼はサンダル魔王国の裏切りを知り、自害寸前のところを捕らえられた。


 そしてもう一人は魔王の腹心と言われているドクロマスク将軍。


 彼もまたドクロの仮面をしていたが、それをはぎ取られていた。だがその素顔はアナペス将軍よりもハンサムであり、和也は彼に一目置くことにした。


「俺はこれから魔王を倒しにいく」


 男たちはぎょっとした表情になる。


「彼女に心を改めてもらいにいく。殺しはしない」


 というよりも世界中の魔法使いを集めても適わないほどの魔力を保持する魔王を殺めるすべなど、この世に存在しないと言った方が正解か。


 和也の言葉に、アナペス、ドクロマスクの両将軍は顔を見合わせて笑った。


「カスヤといったか。お前も我らと同じ道を辿るか、死ぬかのどちらかだ」


 そう言ったのはアナペス将軍。連日の過労からか目の隈がひどい。和也はアデルに言って彼に回復魔法をかけさせた。


「魔王様に何を説教するつもりだ。異世界からの勇者よ」


 活気を取り戻したアナペス将軍が尋ねてきた。


「このゲームから降りさせる」


 また、二人の将軍は笑った。


「魔王様に誰も指図はできない。我ら男として生まれたすべての者は、彼女が彼女らしく振る舞い、いつかその欠伸が止まる日を願うだけだ。美しい花を見たら枯れぬことを願うのと同じだ」


 ドクロマスク将軍はそう言うと俯き、寂しそうな顔をした。おそらく魔王の傍らで過ごした日々を思っているのだろう。


「カスヤはお前らと違う」


 口を挟んだのはサンダル王国の現・国家元首であるゾーリ将軍だった。


「裏切り者め!」


 アナペス将軍は地面に転がったまま、彼に殺気を向ける。


「お前が同盟を結んだのはサンダル魔王国。ワシはすでにあの国をサンダル王国としている。同盟書は無効だ…と、こんな御託並べてもお前は納得しないだろうがな」


 ゾーリ将軍は長い髭を弄びながら笑った。


「それはそうと、ワシはこのカスヤに期待している。ヤツならば魔王様の退屈を止めてくれるに違いない」


 ゾーリ将軍のその言葉に、アナペス、ドクロマスク、両将軍の表情が変わる。


「魔王様に活力が戻るならば、とワシはカスヤにつくことにしたのだ」


 ゾーリ将軍はアデルに許可を得た後、両者の戒めを解く。


「お前らもカスヤに協力しろ。魔王様の幸せを願うならな」


 少しの沈黙が流れた。


「では何をすればいい」


 ドクロマスク将軍が口を開き、アナペス将軍もそれに乗るかたちで居住まいを正した。

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