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016.国王陛下の代理ナンパで同盟ゲット作戦

 そのあと、なんだかんだで時間はかかったが、オウゾ王国の聖騎士団がやってきていくつかの質問をしたのち、十メートル四方ほど防壁魔法が解除され和也たちは招かれた。


「僕の魔法、真実眼(トゥルース・アイ)を使っても、君たちから嘘は発見されなかった。国王陛下も君たちに関心を示されている。夜も遅いが、これから謁見可能だ」


 聖騎士のダリオという青年はグリフォンに跨がりながら、火竜フパイラーンにしがみついた和也らを先導してくれた。また聖騎士団に囲まれるかたちでバズ・ビザールの部下――、ドラゴン兵士十二名も軍用ドラゴンに跨がりその後方を飛翔している。


 いざとなれば和也一行の戦力を押さえ込めるほどの魔力と技術を保持しているのだろう。和也は彼らを味方に付ければどれだけ有利かと値踏みする。


「我が王国へようこそ」


 ダリオがグリフォンに跨がりながら両手を天使の羽のように広げる。


 オウゾ王国・王都カラッカゼメを見下ろした和也は我が目を疑った。



 王都カラッカゼメの街並みは、新宿を思わせるような高層ビルがびっしりと立ち並んだ近代都市だった。


 宝石をぶちまけたような煌めきと交通整理された道路。そこをゆくのがペガサスやバジリスクでなければ、異世界と言われても信じられないだろう。


「これはびっくりだ。メクソリンダス王国とは様相が違うな」


 和也の言葉にダリオは微笑む。


「当たり前だ。こう言ったら失礼かもしれないけど、我が王国はあなた方メクソリンダス王国のように鎖国はしていないし、他国との貿易、技術開発も進んでいる」


「「いやなかんじ」」


 ダリオの言葉に、祖国をバカにされたナターシャとアデルが小声で呟き、不機嫌なオーラを出すのが分かった。


「あの一番高いビルが、王宮だ。着いてこれるか」


 ダリオのグリフォンが急上昇し、和也一行を乗せた火竜フパイラーンもそれに続いた。


 天を穿つような建物を目指し気圧がどんどん上昇してゆく。和也一行は息苦しさを我慢しながらようやく「王宮」の屋上へたどり着いた。


 建物の玄関から招かれればこんな思いはしなかっただろうが、ダリオたち聖騎士団なりに国王陛下との対面をショートカットさせるための気遣いがそこにあったのかもしれない。



「お主らがメクソリンダス王国からの使者か。相互不干渉条約を結んだ国の人間を初めて見た」


 禿げ上がった頭に、純金に宝石を散りばめた王冠。


 サングラスに腹のでたガウン姿の男が、ワイングラスをくるくる揺らしながら現れた。左右にはエルフの美女がまとわりついている。


「陛下」


 ダリオら聖騎士団が膝をつく。


「魔王軍を倒すための同盟書をもってきたらしいねぇ」


 男は自らを、国王チャライダサイ三世と名乗った。



「ミスター・カスヤと言ったか。正直、我が輩は魔王団とか同盟とか興味ないのだ」


 高層ビルの屋上、プールサイドでチャライダサイ三世は鼻くそをほじりながら言う。


「あなたは、自国の領土を魔王軍に支配されても構わないんですか!」


 和也は椅子から前のめりになりテーブルを叩いた。


 チャライダサイ三世は少し驚いた表情になり、彼の背後で聖騎士たちに殺気が宿る。


 バズやドラゴン兵士たち、ナターシャ、アデル、ネルネ、背後のフパイラーンらは微動だにしないが、一瞬冷えた空気が流れた。


「すいません。恫喝の意味はないです」


「あ、ああ…」


 チャライダサイ三世が安堵したような笑みを見せる。


 和也は、一瞬のその表情を見逃さなかった。


 一国の国王とは思えぬ肝の小ささ。和也は方法さえ間違えなければこの男を手玉に取れると踏んだ。


「では陛下。あなたの心を奪うものは何なのですか」


 和也は同盟交渉の話題から逸れた質問をする。


「初対面の、それも他国からの使者に言うべきことではない」


 チャライダサイ三世は目を逸らした。


「こちらは、メクソリンダス王国の国王陛下から直々に同盟書を預かっています。理由を教えていただかないと、手ぶらでは帰れない」


 チャライダサイ三世は何も言い返せない。「あと一押しだ」と和也は思った。


「陛下。あなたの素直な気持ちをお聞かせください」


 和也は優しい声で言う。


 女と子供と年寄り、気の弱い男は、優しい言葉に弱い。和也はチャライダサイ三世の口が開くのを待った。


 数秒か、数十秒かの時が流れた。


「我が輩。…実は…」


 チャライダサイ三世は小刻みに震える。


「…色宿の女に惚れてしまったのだよ」


 チャライダサイ三世は、ため息と同時に心の内を吐き出す。


「今現在も彼女には身分を隠し、店に通い続けているのだが、王族たちからその事を責められている。我が輩できれば結婚を申し込みたいのだが、それも適わぬ。いっそ地位を捨てようと思うのだが、そしたら彼女を幸せにはできない」


 チャライダサイ三世の背後で起立する聖騎士たちは、目を伏せた。


 武力で秀でた彼らにも解決できない事はある。それは恋愛と王族間の問題だ。


「彼女のことを考えると夜も眠れず、魔王軍だの同盟だの言われても考える余裕がない」


 チャライダサイ三世の周囲にいるエルフの美女たちは彼の股間をさするが、彼はそれに反応しない。美女たちはただのお飾りなのだ。


「わかりました」


 和也は立ち上がる。


「その女性の名は何と言いますか」


「本名かどうかは知らないが、ソフィーと名乗っておる」


 チャライダサイ三世は子犬のような目をしていた。


「ソフィーと陛下を無事、結婚させることができたら、メクソリンダス王国およびファジー共和国と同盟を結んでいただけますか」


 一同が仰天したように和也を見た。


「あ、ああ。そんなことが実現するなら、同盟だけではなく我が輩の権限を行使して、ミスター・カスヤの望みは何でも聞こう」


 チャライダサイ三世は藁にもすがる瞳で和也を見つめた。


「よし、ナターシャ、フパイラーン、アデル、ネルネ、バズさん、ドラゴン兵士のみんな、ソフィーが働く街に行くぞ」


 和也は一行は、高層ビルの王宮を飛び発った。



(俺の世界で言えば、風俗嬢に惚れた大企業社長の息子ってところか)


 和也は過去、ナンパや女性の口説き方をモテない男たちにレクチャーして数百万を稼いだことがある。


 そういった行為を、代理ナンパ、黒子ナンパ、口説き塾、などと和也は呼んでいる。


 成功率は九十四パーセント。失敗した六パーセントは成功する前に授業料を払えなくなった者たちだった。


 あのバカ国王の恋を成就させ、さっさと同盟を結ばせようと和也は思った。

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