その階段は断崖(アプリ坊主外伝3)
この作品を読んでくださっているすべての方へ。あなたは決して独りではありません。だから負けないで下さい。
幼き日の何事かを 踏み出す一歩
その階段を初めて登り出したる時
運悪く世界の全てに拒絶され 頭押さえつけられ
心の臓を鷲づかみにされる
周りの子供のすいすいと 登り行く姿を遠くに観ながら
その重き足かせを引きずり もしくは気付かぬまま
ただの一歩も登れぬままに 這いずり足掻き
誰にも見えぬ涙と 誰にも届かない声と
ただただ置いて行かれる日々を重ねると
いつしかそれは少年と呼ばれ
ある時に気まぐれに 遥か彼方の階段の上から
今更ながら 生温かき手が差し伸べられ
なんの考えも無しに得られた者が 実力だと言い張り
後付けの理屈を振りかざし
最初の一段すら 許されなかった者を
無理矢理のうちに 引っ張り上げる
「その階段は断崖」
岩肌に身を打ち付けられ あるいは木々に串刺しとなり
笑う気力さえ奪われた者が たどり着かされた世界
もう大人だからと しっかりしなさいと
形ばかりは人間の 良く解らぬ化け物達が囁く
彼の耳には届かない なぜならばもう耳が無いからだ
彼の目には映らない なぜならばもう目が無いからだ
彼の心には響かない なぜならばもう心が無いからだ
やがてその人は できうる限りの力で
精一杯大空を飛ぼうとする 純真のままに
飛び方を知らぬ彼が 飛ぼうとすればするほど
周りを壊し 人を傷つけ その度に
烙印を押され 苦痛のままに 羽をもがれる
果てしなく続く硬い杖の マジョリティが棲む
その森の 決して出られぬ その小屋に
反省せよと わけのわからぬまま 白きの部屋へ
閉じ込められ すぐの近くに 結末を悟りながら
ある朝に 突然に 歓喜を外に聴きながら
その国へと 周りが勝手に決めた 救済へと
背中を押され あるいは引きずられ
階段を登る ついに最後の 時はきたれり