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#05 一緒に帰るしかなくなっちゃいましたね

「んじゃ、今から飲みにでも行きますか?」


カラオケも終わり、店の前で集まる形になると、果歩が右手でちょいっと飲む振りをして言った。


2時間という時間はあまりにも早すぎた。もう一曲ぐらい、未来先生の歌声を聞きたかったものだ。


「行こかぁ!」


果歩の発言につられて、恭平さんは果歩の真似をしながらそう言った。


「そ、そんなの駄目よ!!」


と、未来先生。


当たり前だろう。龍之介という未成年でもあり、学校の生徒である人物を連れて、人目につく場所にいけるわけがない。


特に飲み屋という場所なんかには。


えー! と言って、果歩が残念そうな顔をしているが、どうやら未来先生は譲る気が一切ないないらしい。そんなオーラをさっきからプンプン匂わしている。


「…大丈夫」


そう呟いたのは、本日一番口を開いていないと思われる龍之介だった。


「りゅ、龍之介君!」


「もう少し、遊びたい」


龍之介は目線を未来先生へと向けた。俺もあの視線を幾度となく食らったことがあるが、拒否できるような気持ちにはなれない。


「け、けど…」


あの視線を食らいながらも反発しようとする未来先生を、俺は心のそこから褒めてあげたい。


「未来さん、いいじゃないですか。龍之介には飲ませませんから」


俺も本当は未成年だけどね。


「でも…」


「先生」


龍之介の必殺視線炸裂!!


「…はぁ、しょうがないわね」


先生は頭をポリっと一回掻いて、ため息をついた。


「よし! 決まり!」


果歩がそう言うと、みんなは歩き出した。






「龍之介君。未来は先生としてどうよ?」


果歩が龍之介の隣に座って、龍之介に話しかけている。


「…いい先生」


今、このテーブルに届いたジュースをストローで吸いながら、龍之介はそう答えた。


「そっか! よかったね、未来!」


「ちょ、何聞いているの!!」


真っ赤な顔をして照れている未来先生を見ると、少しドキッとした。


俺達は、あのカラオケの後、話し合いの通り居酒屋に来ている。


お店の人も俺を高校生とは見ていなくて、普通にお酒を出してくれている。先生もまだ、俺が紺野大将っていう事には気付いてないようだ。


「そういえば、悠さんは今何歳なんですか?」


「と、年ですか!?」


隣に座っていた美智子がいきなり話してくる。しかも、思いもしなかった年の話だ。


…実際、俺が今何歳ぐらいに見えているかなんて、全くわからない。下手に答えると、未来先生に怪しまれるのではないのだろうか。…ここは一つ。


「何歳ぐらいに見えます?」


俺は美智子さんのほうに少し体を向けて、笑みを浮かべて言ってみた。


「え、えっと…」


そう言ったきり、美智子は顔を赤くして下を向いてしまった。


数秒たった後、彼女はボソッと口を開く。


「にじゅー…」


「20歳に見えますか?」


「は、はい」


それぐらいに見えるのだろう。男が女の人の年齢を答えるときに、見た目より少し年を低く言うとかの思考も、今の美智子にはなさそうだし。これは参考になった。


「正解ですよ」


俺はニコっと笑って答えると、やったーと喜んだ。


…っていうか、俺は美智子とやらと喋っている暇はないんだ。少しでも未来先生に好印象を与えなくてはいけないのだから。


俺は左に座っている未来先生に話しかけた。


「未来さん。ちゃんと飲んでいますか?」


俺が聞くと、コクッと小さく頷いた。極力話さないようにしているのを見て取れる。学校では結構、活発的な女の人のイメージがあるのに。


「未来さんは、科目担当は何を受け持っているんですか?」


俺が質問すると、俺の顔を一瞬チラッと見て、現代文と答えた。


「現代文って、色々覚えなくちゃいけないから、大変な科目じゃないですか? 僕は高校生のとき苦手な科目でしたね…」


俺がそういうと、先生は目の色を変えて話し始めた。


「現代文っていうのは、とても深みのあると思うんですよ。本を読んで、日本語を学んで、それを言葉にして伝える。意思の伝達には必要となるものなのです。学んでおいて損はない。学校の授業でも、一番と言っていいほど、将来に役立つものなのですよ」


…先生の力説。この話は、この前学校でもしたのだ。こういう話も含めて、分かりやすい授業だから、未来先生の授業は生徒にはとても人気なのだ。


かという俺は、現代文が大の苦手。別に嫌いじゃないし、先生の授業が分かりにくいとも思わない。ただ、苦手なだけなのだ。


それからしばら未来先生と会話をした。最初のころに比べては、心を開いてくれたような気がする。学校のときほどの先生ではないが。


「ねぇねぇ、悠さん」


右隣に座っている美智子に服の袖をちょんちょんっと引っ張られた。


「な、何ですか?」


「悠さんは〜、彼女いないんですかぁ〜?」


ニヘヘと笑いながら俺に質問をしてくる。どうやら、美智子は酔っているようだ。ここに来てから、早2時間ほど立っている。どれぐらい飲んだのだろう? ちなみに俺は、ジョッキを数杯飲んだだけだ。


「い、いないですよ。モテませんから。それより、美智子さん酔っているようですけど、大丈夫ですか?」


「でんでんだいじょーぶ! 酔ってないもん!」


…いや、普通に酔っているから。


「きょ、恭平さん!」


俺は助けを求めるために、美智子の前に座っている恭平さんに声をかけた。


「なんや〜!?」


…どうやら、彼も酔っているらしい。果歩と無駄にベタベタしている。果歩はというと、苦笑いを浮かべているが。


「ど、どうしましょう?」


俺は前の席に座っている、まだほろ酔い程度であろう果歩に話しかけた。


「まぁ、そろそろお開きって言う手もあるけど」


「そうですね…明日学校だし」


俺がボソッと答えると、果歩が俺の言葉に反応した。


「え? 悠君って学校に通っているの?」


…あ。


「い、いや! 俺じゃなくて、龍之介や未来さんですよ。特に未来さんは人に教える立場なんですから」


ね!? と俺は言いながら、未来先生のほうへと顔をむけた。


いきなり話を振られてビックリしている。


「え、ええ」


「じゃあ、今日は解散ということで」


俺のその言葉に肯定の意を表す3人。3人というのは、恭平さんと美智子さんを除いた3人だ。


「未来先生は、家はどのあたりなんですか?」


俺の質問に、未来先生は少し間をおいてから答えた。


「西区よ」


西区…。俺の家と少し近いな。


「じゃあ、僕が送っていきますよ。僕は北区なので」


「わ、私は一人で大丈夫ですよ!」


そう答える未来先生に言葉を俺は乗せる。


「女の人が一人じゃ危ないですよ」


俺が未来先生と話していると、美智子が話しに入ってきた。


「わたしもにしくなのー! 未来も悠さんもいっしょに帰ろぉよぉ」


俺は少し頭を回転させた後、はい、と答えた。


「これで一緒に帰るしかなくなっちゃいましたね」


俺は苦笑いしながら、未来先生に顔を向けた。

















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