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#45 恋愛完全マスター


未来。


あの時、俺は未来と出会って救われたと思った。


こんな偶然…いや、奇跡があるのかと思った。


もしかしたら、“悠”と“未来”が初めて会った時から恋をしていたのかもしれない。


その後、未来の笑顔を全て俺のものにしたいとまで考えたんだ。


なぁ、未来。


俺は今日、ここを離れるよ?


それを未来は感じ取ってくれているのかな。


未来に好きだといわれて、心が跳ねた瞬間を俺は忘れることは無いだろう。


あのときの幸福感は俺の人生で多分、ぶっちぎりの一位を守りきるに違いない。















「お坊ちゃま」


過去を振り返っていた俺を、現実世界に戻したのはキヨ爺の声だった。


「どうした?」


後部座席で、俺は窓の外を見ている。


「少し、トイレに行ってきますが、どうしますか?」


そこは見慣れた風景。


俺が何度も行ったことのある、場所だった。


「キヨ爺…?」


キヨ爺は何も言わず車を出る。それは多分、キヨ爺が最後にくれたチャンス。


そこは今日行くはずだった、果歩がくれたチャンスの場所。


デパートだった。















キヨ爺、ありがとう。


そう呟いて俺は車を飛び出した。


何も考えずに。


さっきまで未来との出会いを思い返していたからだろうか。無性に未来が恋しくなっていた。


会いたい気持ちが、一段と膨らんだ。


何を言う?


このチャンスに何を言おうか?


そんなものは今、関係なかった。


昨日までは人目だけでも、未来の姿が見られればいいと思った。


日本で最後の思い出。


あの時、未来に出会わなかったら、俺はもしかしたら日本に居続けられたのかも知れない。


だけど後悔なんてしてない。


未来と出会ったことに関しては。


好きになってしまったのが、間違いだった。


大好きになってしまったせいで、俺はどんどん闇へと嵌っていってしまった。


離れることの恐怖感。


心が痛むことへの恐怖感。


未来を好きにならなければ。


そう考えた時もあった。だけどそれはもう後の祭り。


今更何を言っても無駄だ。


俺は今走っている。


それが答えだろう?


何を迷っていたんだ俺は。


未来が好き。


それは変わることの無い事実だろ? 未来が苦しんでいるかもしれない、俺のせいで苦しんでいるのかもしれない。


時間が経てば、もしかすると傷が癒えていくかもしれない。けど、完全に拭える事はないんじゃないか?


それを治せるのは、原因になった俺だろ?


未来を助けられるのは、俺しか居ないってことだろ!


未来に信じていいんだよね? って言われたとき、俺はどう思った?


信じて欲しいって思ったんじゃないのか。


俺が裏切ったことは変わらない。もし過去が変えられるのなら、全てを打ち明けてもう一度未来と出会いなおしたい。


学生と先生だからなんだっていうんだ? そんなものが恋愛の壁になるのならば、俺がぶち壊してやる。


俺は未来と一緒に居たい。未来だって、一瞬でもそう思った時期があったはずだ。


悠も大将も俺は俺だ。


どっちも俺なんだ。


未来を悲しませたのは俺なんだ。


受け止めて欲しい、俺のこの気持ちを。


勝手かも知れない、だけどそれは純粋に俺の願う気持ち。


未来はどう思っている?


ただ、俺に会いたくないと思っているだけ? それとも他に何かある?


もう一度だけ、俺の顔が見たいとか。…そんな図々しいこと考えちゃ駄目だよな。


もし、俺を許してくれるというならば、俺はきっとなんだってする。


未来のために全てをささげる。


この気持ちが全てなんだ。


今の俺の全てなんだ。


分かってくれないかもしれない、もしかしたら拒絶されるかもしれないというのに俺は…


どうしても未来に会いたい。


今、未来に会って言葉を交わしたい。


未来と出会って買った本。


恋愛完全マスター。


俺はあれに助けられてきたと思っていた。だけど、違う。結局は俺が決めたことだったんだ。


俺がしたことだったんだ。


恋愛を完全にマスターできる奴なんて居るわけがない。


恋愛ってものは不安定で、何が起きるか分からない。


結局は二人が何をするか、二人がどう思うか。


恋も愛も、全て共通するのはそのこと。


相手のことをどれだけ尊重できるかって事だ。


俺は未来を尊重できなかった、だから失敗した。


本なんて関係ない、もう今からは俺がぶつかる、そのままの俺が。


受け止めてくれ、お願いだから。


未来。


笑ってほしい、もう一度。


俺の前で、お前の笑みを見たい。一緒に語り合いたい。


なんたって俺は…



「未来!」



なんたって俺は未来のことが…



「未来!!」



なんたって俺は未来のことをこの世で一番…

















「未来!!!!!!!!!!!」


















愛しているんだから。









「ゆ、、、う?」


「未来、大好きだ!!!」


離れることはもう逃れられないのかもしれない。


「俺、お前を裏切ったこと後悔してる! 本当に後悔してる!」


それでも俺は未来を愛し続ける。


「許して欲しい…」


「え、な…んでここに…?」


「考えた、色々考えた。未来と出会ってからのこと、これまでのこと。だけど、もう後ろは振り向かない。後悔はするだけした」


「ゆ…う」


「大好きだから、それは変わらない! 未来のこともう裏切らない、こんな辛い思いさせない」


「悠」


「好きだから! 大好きだから!」


「悠!」


「だから、みく…」


言葉を遮ったのは、未来の温もりだった。未来が俺に抱きついてきたのだ。


「もう一度会いに来る、今度は大将として」


俺の手はそっと未来を包んだ。


「お前を幸せにしてみせる」


涙を流している未来の声が、俺の耳に届いた。


「大好きだよ」


俺はそっと未来にキスをした。





















次回が最終話となります。

ここまでお付き合いくださって、ありがとうございます。

感謝の気持ちでいっぱいです。





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