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#29 そして、事件は起きる

「わりぃ、わりぃ! 直接色々と言いたくてなぁ!」


俺の目の前には、私服の恭平さん。


あの後、龍之介に付いてきて欲しいと言われ、付いてきた先がこのカフェだったのだ。俺達が着いたときには、もう恭平さんは席でくつろいでいた。


「はぁ、なんでしょう?」


学校帰りの俺はもちろん、学生服。俺の隣には、来て早々頼んだジュースを飲んでいる。


「それにしても、その姿の大将と、この姿の大将の変わりっぷりは面白いなぁ」


ニシシと笑いながら、肘をついて俺の顔を覗き込んできた。その笑顔を俺はじっとにらみ返して、本題へと入る。


「それで、言いたいこととは?」


恭平さんは面白くなさそうに、背もたれに背中を預けて、手を上に伸ばす。


「え〜あ〜! あんなぁ、5、6、7日と空けといてくれへん?」


上を向きながら俺の顔を見ようとしない。


「え、いきなりですか!?」


「まぁ、大将に拒否権はないんやけどな。大将がその日空いてることも知ってるし」


「な、なんで!?」


俺が軽く叫ぶと、小さな声でうるさいなぁと言いながら、再び恭平さんは机に肘をつく。


「大将の側近の人に聞いたねん。家庭教師や塾とかいってへんのやろ? 夏期講習みたいなんも無いみたいやし。な? いこぉや! ってか決まってるから、変更は受付へんけど!」


拒否権が無いのなら、何のためにここに呼んだんだと叫びたい。


「まぁ、今から本題にはいるんやけど…」


「今からかい!!」


って、思わず関西弁でツッコミを入れてしまった。なんという不覚。


「おぉ、いいノリやん! でも、まだまだやな。そこはな…」


と、ツッコミに対する説明をしようとしている恭平さんを止め、本題へと入らせた。


「そんな焦るなやぁ。えっとな、この事未来ちゃんには言ったか?」


今の俺にはその質問の意図が全く理解できなかった。数日後、その言葉に意図があることを思い知らされることに鳴るのだけれでも。


「え? はい。そりゃもちろん。何故かウキウキでしたが。もう、龍之介のこととかも諦めたんですかね?」


そう言うと、恭平さんは頬を軽く膨らませ、空気を噴出した。


「ちょ、笑わせるなや!」


「はぁ…?」


「まぁ、うん。諦めたらしいのぉ、らしいのぉ」


といいながら、笑うことをやめない恭平さん。何で笑っているのかは俺にはさっぱりだ。助けを求めるために龍之介のほうを見るが、ジュースをずるずる吸っているだけだった。


「それだけですか?」


「あ、いやいや! そんな訳ないやろ」


じゃあ、とっとと本題に入れよと言いたかったが、何かとお世話になっている恭平さんだ。そんなことは口が裂けてもいえない。


いきなり真剣な顔になった恭平さん。もう、何を言われるのか分かった。


「…テスト、どうやった?」


やっぱり。


「よか、った…です」


罪悪感が再び降り注いできた。テストという言葉を聞くと、どうしても最初に浮かんでくるのがあの事件。


未来を裏切った、あの事件。


「そっか…。まぁ、夏やからな。テストのこととか忘れて、ぱっと、遊ぼうや!」


ぱぁぁっとな! と言いながら、恭平さんは手を大きく広げた。多分、この旅行も、俺に対する優しさから来ているのかもしれない。


未来とこのまま気まずい関係のままにならないようにとの、恭平さんの心から。







そして、事件は起きる。



8月5日火曜日。



未来は、俺達が泊まる宿谷の前で叫んだ。


「な、な、な、なんでー!!!」


未来の叫び声で、周りの人から俺達が注目されている。そんなことも気にせずに、未来は大声で果歩に怒鳴りつける。どうやら未来は龍之介が来ることを知らされていなかったらしい。


「なんで、なんで…」


そう、俺達の会話全てが…


「小泉君が居るの!?」


…噛み合っていなかったのだ。


「え、言ってなかったっけ?」


エヘッって顔をして、未来にそういう果歩。未来はもうやりきれない顔をして、俺を睨みつけてきた。


「悠は知っていたの!?」


「いや、その…龍之介が来るってことは…」


俺はあたふたしながらそう返答をすると、未来は俺の胸をポスポス音を立てるように殴ってきた。


「なんで、教えてくれなかったの!?」


「いや、知っていると思って…」


そういうと、未来はうつむいてしまった。どうやら、俺達の会話全てが噛み合っていなかったことを理解したらしい。


「…帰る」


まぁ、そうなるよな。


未来は鞄を手に持ち、駅の中へと入っていこうとした。


「ちょ、待って! 未来!」


果歩は未来の腕を掴むと、その場に留まるように説得し始めた。


おかしいとは思ったんだ。


今日の集合場所、時間と共に未来たちとは別だった。恭平さんいわく、女の人たちには色々と準備があるから、と言われその場は納得したが、よく考えてみるとおかしいことばかりじゃないか。


「ごめんな、未来」


果歩の説得を受けながら、呆然としている未来に俺は近づいていった。俺は知っていたのに、気付いてあげられなかった。


「ごめん」


俺がもう一度謝ると、未来は首を両サイドに振った。


「悠は悪くないもん」


「いや、でも…」


未来は大きくため息をついて、果歩の顔を再び睨みつけた。


「今回だけは許す。だけど、もし次こんなことがあったら、私帰るからね!」


ぷいっとそっぽを向いて、宿谷へと入っていった。未来は何よりもこの旅行を楽しみにしていた。この雰囲気をこれ以上壊したくなかったのだろう。


未来の後についていき、格部屋に分かれて荷物を置いた。どうやらこの宿谷は二人部屋が最高らしく、三人同じ部屋に泊まることはできないらしい。


ということで、俺は龍之介と同じ部屋になると聞かされ、部屋へ案内された。


405と書かれた部屋のドアのぶをまわす。鍵はかかっていなかった。龍之介は先に到着しているのだろうか?


玄関の奥にある襖を開けると、そこには思わぬ光景が待っていた。


「「え」」


二人の男女の声が重なり合う。


「「なんで」」


目の前にはいつも見ている、あの人が座っていた。


「未来!?」


「悠!?」


まさか、俺達…はめられたのか!!!


恭平さんがいると思われる部屋へと俺は迷わず走った。こんな事があっていいわけが無い。正直、一緒の部屋なのはすごく嬉しいのだが、俺が大将だって知られそうで怖いのだ。


「恭平さん!」


俺は声をあげて、恭平さんの名前を呼んだ。


「お〜だい…、悠かぁ!」


一応気を使ってくれているのだろうが、そんなことお構い無しだ。俺は恭平さんの傍まで一直線に足を運び両手で肩を掴んだ。


「な、何を…してくれているんですかぁ!!」


俺は、旅館中に響き渡るのではないかと思うぐらい、大きい声を張り上げた。





















テストも無事終わり、本日から夏休み生活となります。

怠けず、作者がしっかり生きていけば、しっかりと執筆をさせていただきたいと思います。


作者にとって、読者様の声が何よりも嬉しいです。


感想等、お待ちしております。





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