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#28 100

「未来、先生」


「テストは、どうだったのぉ?」


戸惑っている俺に構わず、未来は教室の黒板の前に立った。どうやら、黒板消しやチョークなどの掃除をしにきたらしい。


「まぁ、いつもどおりです」


俺はさっきまで座っていた椅子の前で立ちながら、未来の言葉に返事をする。


「確か大将君って、いつも成績とってもよかったわよね? すごいよねぇ。先生尊敬しちゃう」


あはは、と笑いながら未来は俺に背中を向けながらそう言った。


「…今年、」


そこまで言ってしまって、自分の失態に気付いた。未来に成績のことを言ってみろ。あの生徒を大事にする未来のことだ。もしかしたら、俺の家にやってくるかもしれない。


それだけはどうしても避けたかった。


「今年、どうしたの?」


案の定、俺の途切れた話を続けようと未来は質問を投げかけてきた。


「いえ、何も。現代文のテストは難しかったですよ」


あはは、と軽く笑いながら俺はその場に座った。


「今回はちょっと難しかったかもね。けど、大将君なら大丈夫よ。一生懸命勉強していること、先生は知っているんだから」


「あ、ありがとうございます」


それから数分間、俺と未来の間に沈黙が流れる。この沈黙を俺はどうしても好きになれない。かといって、俺から何か話題を振るか? そんなことを考えていると、未来は口を開いた。


「それにしても、今回も龍之介君が、学年一位かしらねぇ」


チョークの粉を掃除し終わったのか、未来はこっちを振り向いた。


「そ、そうですね」


振り向いた未来の顔を、俺は見ることは出来ず俯いてしまう。あの純粋な笑顔を今の俺は見ることが出来ない。


「大将君」


未来が教壇を降りて、近づいてくるのが分かる。俺の心はもうバクバクで、今傍に寄られたら正直抱きしめる衝動を抑えることは出来ないと思う。今、俺の体未来の温もり、優しさ、そして安心感を求めているから。


「いつも…」


また、一歩近づいてくる。


「ありがとうね」


未来…俺に“ありがとう”は言っちゃいけないんだ。そんなこと言われる筋合いが無いのだ。


「いえ、そんな、こと、は」


だめだ! 目を、あわしちゃいけない。


「そんなこと無いこと無いの! 大将君は、いつも先生を助けてくれているんだから」


ね? っと言いながら未来は俯いている俺の顔を覗き込んできた。


「み…く、先生」


しちゃいけない。分かっている。だけど、俺の理性はどこかへ吹っ飛んで行った。


俺の右手は、未来のほうへ少しずつ伸びていく。それに気付いてないのか、どうなのかは分からないが、未来はまだニッコリと笑ったままだった。



―――止まれ、止まれ!





そのとき、俺を助けるかのように学校中に響く放送音が流れた。


『諸戸先生、諸戸先生、職員室にお戻りください』


その放送を聞いて、未来は俺から少し離れていく。


「じゃあ、私職員室に戻るからね。あまり学校に残っていると、他の先生に怒られちゃうぞ!」


じゃあね、と言って未来は教室から出て行った。その間、俺は何も発することは出来ずに、ただその場に突っ立っているだけ。


未来が出て行って数十秒後、俺の理性が全て戻ってきた。


「俺…」


自分の行動に嫌気が差し、右手で思いっきり太ももを殴る。


「何、やってんだよ」


鞄に手をかけて、出口へと足を進ませる。悲しみを堪えながら、自分の最悪さを感じながら。


後日のテスト返し、俺の成績が確実に上がるだろう点数を全てのテストで取っていた。現代文に関しては、トップ成績といえる満点だ。


龍之介におめでとう、と言われたが全く嬉しくない。むしろ、悲しくなった。


『100』


その数字を見ると、俺の心はきしむ音がする。俺が未来を裏切った、証なのだから。








そして、そのテストが終わると、皆が待ち望んでいる夏のビッグイベントが待っている。


「明日から、夏休みだから、交通事故などには十分と気をつけてください」


教壇の前、つまり席が一番前である俺の前で未来は、夏休みでの注意事項を述べていた。


「あと、九月初めのほうに実力テストも…」


その後も色々と話している未来の顔を、いまだに俺は見ることはできなかった。


あのテスト以来、俺は未来に会うことが出来なかった。未来はテストが終わってやっと遊べる時期だというのに! と叫んでいたが、俺は家の用事ということで会わないようにしていた。


しかし昨日、恭平さんからのメールがきた内容は、実に今の俺には残酷なものだった。









『夏休み暇やろぉ? またいつもの6人で遊びに行こうや!』



いつもの6人というのは、龍之介と未来も含まれているらしい。ということは、絶対に未来は反対するだろう。


『未来は、反対すると思いますよ?』


と俺が返信すると、数秒で恭平さんから返ってきた。


『そんなへまを俺らがやると思うかぁ?』


ニシシ、と笑い声が聞こえてきそうなこのメール。まさかとは思うが…いや、そんなことはないだろう。


俺は考えながらメールを打っていると、俺の返信を待たずに恭平さんから再びメールが。


『まぁ、拒否権はないからな! っちゅうか、もう行く場所も日時も決まってるねん。その日だけあけといてくれたらいいわ』


…は? としか言いようが無かった。


その後に続く文章によると、どうやら泊まりらしい。生徒と一緒に遊びに行くのさえ、未来にとっては駄目なことなのに、それ+泊まりだなんて。あの未来が許すはずが無い。


とりあえず、未来にメールしてみるか。


『未来ぅ? 恭平さんたちと夏休み遊ぶって聞いた?』


未来とは会ってはいないが、電話やメールは毎日のようにしている。そうじゃないと、学校での俺の精神が耐えられなくなるからな。


数分後、未来からメールが返ってきた。


『うん! 楽しみだねぇ。ちょっとドキドキしてきちゃった! 早く水着買いに行かなくちゃ』


どうやら、遊びに行くことは知っているみたいだ。もう美智子と果歩の強引さに、未来もとうとう諦めたのか。


『楽しみだな。じゃあ、今日は寝るね。おやすみ』


とメールを送って俺は、ベッドに倒れこんだ。








「大将」


はっと、意識を現実に連れ戻す。


「大将」


いつの間にか、学校は終わっていて教室には目の前の人物以外、誰も居なくなっていた。


「あ、れ…龍之介?」


俺の傍に立っていたのは龍之介だった。まぁ、学校で話しかけてくるのは、龍之介か未来だけ。


「帰ろう」


今日は、一緒に帰る約束をしていなかったはず。何かあるのだろうか?


俺は声には出さず、肯定の意味を表した。




















また、一日空けての更新申し訳ございません。

ハイペース更新が、私の売りなのに…(?


言い訳をしますと、今作者はテスト勉強という悪魔と戦っておりまして、さほど頭がいいわけでもないのに

IT系の学校へ進んでしまったわけですよ。


一回、試験で50点以下を取れば、2000円支払いをして再試験という設定になっておりまして、金の無い作者は一生懸命勉強をしている”つもり”です。


ということで、小説の更新ペースがガクッと落ちちゃいましたが、一応二日一回の更新を最低ペースにしたいと思います。


夏休みに入れば、優雅な休息が待っている。それまで、しばしお待ちを…。



感想などいただけたら嬉しいです。

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