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あなざーすとーりー



#22の未来の視点です。







「悠さん…」


私は悠さんから貰ったクマの人形を手に取り、ベッドの上で寝転がっていた。


「でも、美智子を…」


裏切れない。それは絶対。


「ああ、何で私」


悠さんを好きになっちゃんだろ。


あの時、悠さんに優しくしてもらわなかったら。


あの時、悠さんに人形を貰わなかったら。


あの時、悠さんの笑顔を見なかったら。


あの時、悠さんに出会わなかったら…私は、



私は、恋をしていなかったのに。こんな気持ちにならなかったのに。



「悠…さん」


私はもう一度、悠さんの名前を呟いた。そのとき、私の携帯は大音量の悲鳴をあげた。


「…美智子?」


携帯を手に取り、ディスプレイを見ると『立花 美智子』と表示されていた。


どうしたのだろう。美智子はずっと私を…無視し続けてきたのに。ううん、そんなことは関係ない。


私は意を決して携帯電話を耳に当てた。


「もしも…」


最後まで言い切る前に、美智子は声を張って悠さんの名前を呼んだ。


「未来っ! 悠さんが! どうしよ! 倒れちゃって…あんた彼氏でしょ! なんとかしなさいよ!」


「え?」


「どうしよ、未来…どうしよ」


美智子の声がだんだん泣き声に変わっていくのが分かった。


しかし、どうして悠さんが美智子の家に? しかも倒れたってどういうこと?


今の私は混乱していた。


「未来!」


美智子の叫び声で私の心は少し落ち着くことが出来た。


「悠さんが、どうしたの?」


「いきなり…倒れちゃって、どうしよう!? 私が無理させちゃったのかな…未来とギクシャクしてたからかな…ごめんなさい。ごめん…」


「大丈夫だよ。それよりも、今からそっちに向かうから!」


私はそう言って携帯を切り、車のキーを手に取った。


数分後、私は美智子の家に着く。


「未来!」


インターホンを鳴らすと同時に、未来が勢いよく部屋から出てきた。


「大丈夫!?」


「私より、悠さんが!!」


あわてながら私を部屋の中に引きずり込む。


「悠…さん?」


目の前には、ぐったりと倒れている悠さんがいた。


「と、とりあえず、落ち着こう」


これは私自身に言った言葉。美智子は、頷いているけれども、全く落ち着けていない。


私はそっと屈んで、悠さんをじっくり観察した。


「すぅ、すぅ…」


「…へ?」


「すぅ、すぅ…」


何度も聞こえてくる悠さんの…寝息。


「悠…さん?」


揺すってみるが、目をあけるような仕草は見せない。


「と、とりあえず、何事もなさそうだけど…一応、あの診療所につれていくよ?」


私は美智子にそういうと、まだあわてている美智子は何回も頷いた。


「ちょっと、手伝って」


私は美智子に、私とは逆側の悠さんの方を持つように言った。そのまま私の車に乗せ、車を走らせる。


走行中も、美智子は混乱しているのか、私にずっと謝っていた。


診療所に着き、診療所の先生に手伝ってもらい悠さんを中へと運ぶ。


診断結果は…


「ただ、寝ているだけですね。もう、何日も寝ていなかったんではないでしょうか?」


先生はそういうと、少しここで寝かせてからご自宅へ帰ってもらうとしましょうと言い、悠さんは空き室へと運ばれた。


「未来…」


やっと落ち着いたのか、悠さんが寝ているベッドの横で座っている私を、部屋の外から美智子は呼んだ。


「美智子、ごめん」


今の私の状況に気付く。彼女でもなんでもないのに、悠さんにべったり引っ付いている私を、美智子は良く思わないだろう。


「いいの」


しかし、美智子から帰ってきた言葉は、否定を示す言葉だった。


「美智子?」


私は戸惑い、美智子の名前を呼ぶ。


「私ね、最悪な女だったね」


美智子は苦笑いしながら、そう言った。


「美智子は、最悪な女なんかじゃないよ! それ言うなら、私のほうが…」


そうだ、私のほうが最悪なんだ。美智子を応援するって決めたのに、悠さんの告白に動揺…嬉しく思っているのだから。


「ううん、未来はいい子すぎなのよ」


「え?」


「私ね、未来のこと大好きなのに、嫉妬しちゃったりして…未来のこと信じなかった。でも、悠さんが気付かせてくれたの。本当に…ごめん」


ボロボロ泣きながら私に抱きついてきた。


「裏切ったと思ってごめん。未来ごめんね…」


「ううん、いいの…」


そっか、美智子も私同様…苦しかったんだ。それだけが分かったから。


「未来」


涙を拭きながら、美智子は私の顔をじっと見てきた。


「悠さんは、未来にベタ惚れだから! もう、付き合っちゃえ!」


二ヒヒと笑いながら、美智子の目からは涙がこぼれ出ていた。


美智子…


「うんっ…」


私も涙が自然と出てきた。あふれ出てきた。止まらなかった。


「ありがとね…」


私はもう一度美智子をぎゅっと抱き寄せた。


「本当に、ありがとう」


それしかもう、私の口は動かなかった。


それから少しして、美智子が『私がいたら、二人がイチャイチャできないからねっ! 家に帰って自棄酒でもしてくるよ』と言って、病院を出て行った。


その美智子の後姿を見ながら、私はもう一度ありがとうと呟いた。


次の日の学校には休みの連絡をいれた。どうしても今だけは悠さんと一緒に居たかったから。


私はそっと、寝ている悠さんの寝顔を覗く。


本当に、カッコイイ…。


こんなにじっくり見たのは初めてだ。いつも、まぶしすぎて直視できなかったから。


そのまま私が悠さんの手を握ったとき、ゆっくりと彼の目は開いた。


「悠…さん」


半開きになっている悠さん目は、私の声で全て開ききる。


「み…く」


そうだ、この声だ。私の大好きな彼の声。全てをささげたい人の声。泣きそうな心を落ち着かせながら、私はニッコリ笑った。















次から第二章となります。

基本、未来と悠が付き合っている話です。

どうか、最後まで恋愛完全マスターとお付き合いください。

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