#20 心が跳ねた
友人より、恋人。
恋人より、友人。
――――貴方は、どちらを選びますか?
「そ、そんな…」
彼女の告白を聞いた俺は、黙って入れなかった。
「好きな人同士、付き合うのが普通でしょう!」
いつの間にか怒鳴ってしまっていた。
「ごめんなさい…」
未来先生は、今にも泣きそうな顔をしている。相当、考えた末の結果なのだろう。…多分。学校で、何の関係もない俺に素性を少し明かしてしまうほど、動揺していたのだ。
「……」
もはや、どう答えればいいのか分からなくなっていた。
美智子を裏切れない。今ならば、そんな未来先生の気持ちが痛いほど分かるからだ。この状況を例えられる友人が、俺にも出来たから。中学校までの俺なら、未来先生の心境を分かりはしなかっただろう。
…だけど、俺のその考えに心を除く全てがついて来られなかった。
「嫌だ…」
涙がこぼれそうなほど、胸が痛い。
「未来…好きなんだ」
好きなんだ…。
思わず呼び捨てにしてしまった。思わず呟いてしまっていた。
「ここで、俺が引いたら、未来はもう会ってくれない…」
「……」
――――――好きという言葉を。
「会えないなんて、考えられない」
そう言った瞬間、俺の右目から涙がポロっと零れたのを感じ取れた。
「…え」
それに一番驚いたのは、俺だった。
「何で…」
無意識に俺の放つ言葉に、未来は同様している。
「涙が…」
止まらなかった。やむことはなかった。
俺の心のダムが、溢れてきた…。
「出てきたんだ…」
戸惑う俺に、暖かいものが覆いかぶさった。
「え…」
「うっ、うっ…」
そして、俺の頭上から聞こえてきたのは、未来の泣き声だった。
「み…く」
未来は、俺を好きだといった。それだけでも驚くことなのに、その未来は俺を抱きしめている。
そんな未来が…愛おしい。
心が跳ねた。
な…んだ?
これは何だ…?
コレハナンダ…?
『恋は、突如やってくるものです。気付いたときには、もう心は動かされているものですよ』
キヨ爺の言葉が、リフレインしてきた。
こ、心・・・動く?
「うっ…」
いまだ聞こえてくる未来の泣き声。
―――――ドクンッ。
「な…んで」
俺はそう呟きながら、手を自分の目に持っていく。
…やはり、濡れている。確かに、涙を流している。
そして、その手を次は胸に持っていく。
…やはり、震えている。確かに、いつもより激しい。
最後に俺の手は、彼女の頬へと動いた。
…やはり、愛おしい。確かに、俺は――――――
そのまま俺は、涙で顔がしわくちゃになっている未来と口付けを交わした。
――――――俺は未来を心から好きになっている。
「うぅっ、うっ…」
目の前で泣いている彼女をギュッと抱き寄せる。
「辛いよな…辛いんだよな…ごめんな…」
そう呟きながら俺は、彼女と一緒に泣いた。ずっとずっと、俺は抱きしめていた。一緒に居たかったから。未来は俺の腕の中でそのまま寝ていったけれども。
「未来」
いつの間にか、空は明るくなっていた。あぁ、初めてだな。親に黙って、自宅以外で夜を過ごすなんて。
そんな事を考えていると、俺の腕の中にいる未来がもぞもぞっと動き出した。
「ん…」
「おはよ」
俺がそういうと、未来は驚いた表情で俺の顔を見た。
「な、な、何で悠さんが!? え、あ…そっか」
自分で言っているうちに納得したらしい。それでも、未来の顔は真っ赤になっているが。
「学校は大丈夫? 何時から行けばいいの?」
現在の時刻は、朝の5時すぎだ。目の前の時計で確認したから間違いない。
「8時に集合だから…7時半に出れば間に合うの」
まだ、眠気が完璧に取れていないのか、ウトウトしている表情を見せている。こんな状況で寝ていたんだ。すっきりと眠気が取れているほうがどうかしている。
「ベッドで寝てくる?」
「ちょっとだけ…」
そう言って、未来は自分で立ちベッドへと向かっていった。
…さて、どうしようか。
このままここで過ごしてしまえば、確実に学校には遅れてしまう。だからと言って、目覚ましすらかけていないだろう、彼女を放っていくのも気が引ける。これで彼女が学校に遅刻したら、俺のせいだ。
俺はすくっと立ち上がって、彼女の元へと歩み寄っていった。
ベッドには、寝息を立てながら寝ている未来がいた。
「寝るの早いな…」
俺はそう呟きながら、彼女の頬を撫でた。
って、こんな事をしている場合じゃないな。
俺はベッド脇にある目覚まし時計に手を伸ばして、6時半ぐらいにセットし、『家の鍵はポストの中』というメモを残したら、未来の家を後にした。
学校に遅刻してしまったら、俺が大将だってことがバレてしまう可能性が出てくる。ちょっとでも、そういう危険なことは回避したいからな。
「ばいばい…」
俺はドアを静かに閉めて、鍵をポストの中に入れておいた。
道を歩く。
空はまだ思ったよりも薄暗くて…
未来から離れた俺の体は、もう未来の温もりを求めていた。
昨日、私の師匠(僕の思い込みですが)である五十崎由記様が本を出版なされました。
『らしく。』という小説です。
多分、小説家になろうさまでもお知らせがあると思います。
でも!!
それよりも先に言っておきたかったんです!
って、先に言っちゃってよかったのかな?駄目だったら教えてください><
とりあえず、詳しくは私のblog(http://plaza.rakuten.co.jp/mlq84s/)か小説家になろう様か五十崎由紀さんのblog(http://www.ikazaki.com/?NW=3tCgnYtFcVXTDN)をご覧になってください。
ちなみに、表紙画像URL載せておきますね。
http://ikazaki.up.seesaa.net/image/350.jpg
↑ 携帯からだと見れないかもしれません。