第5話 ルシアたんは女神の騎士らしい
さてさて、聖剣がどれだけやばい代物なのかちょっとドキドキだ。
だって俺ってすでに脇腹にぶっ刺された後だもの。
効果がじわじわ効いてくるような毒みたいなものだったら手遅れになる前に治療しときたいしね。
なので、
「聖剣の効果によるものかわからんが、記憶の一部が曖昧になっている。放置しておくわけにはいかないだろう。まずは聖剣について教えてくれないか?」
「聖剣についてですか。そうですなぁ、確かに魔王様のご様子はいつもと違いますからのう。ただ、聖剣を説明するなら、女神の騎士についての知識があるとよりわかりやすいと思われますのじゃ。魔王様、女神の騎士に関しての知識は残ってありますかな?」
女神の騎士?
いえ、全然知りません。
いやー、ファンタジーな世界だなーって思ってたけど、予想を遥かに上回るほどのファンタジーっぽいわ。
「すまないが、全く残ってないな」
残っていないというか、最初から持ってないです。
持ってたと思われる俺の転生先の魔王様の記憶はどうもさっぱり残ってないようだ。
「さようでございますか、まぁ、女神の騎士について簡単に説明しますと、女神の騎士とは女神に選ばれ、女神の加護を与えられ、魔王様に次ぐ力を得た人間の事ですじゃ。その女神の加護を与えられると同時に貸与されるのが聖剣と防具一式ですじゃ」
「ルシアたんはその女神の騎士に選ばれているってことで良いのかな?」
「そうですじゃ」
「その加護を与える女神とやらはこの世界の創造主と言われる存在なのか?」
「いえ、この世界そのものを創造した神は別らしいですが、そこから基盤を作り世界を形作ったのは女神さまですじゃ」
「創造した神は女神の騎士に関与とかしてないのか?」
「創造した後は別の世界を創造するために旅立ったそうですじゃ」
ふむ。
神様っているのかー、神様気取った痛い奴じゃないの?
まぁそれは置いといて、創造神は関与してないにしても、それの同僚っぽい女神様からは俺達に対してあまり良い感情を持ってないような気がするな。
魔王に次ぐ力を与えたってのは抑止力として与えたと考えれば平和的だが・・・
「女神の加護って簡単に与えられるものなのか?」
「ええ、世界に一人だけ与えられるという制限があるものの、付与は一瞬で終わりますのじゃ。なのでさっきの小娘を殺したとしても、その瞬間に別の人間が女神の騎士に変わるだけですじゃ」
「鍛錬期間とか必要無い感じか?」
「女神の騎士になった直後に前任の女神の騎士の戦闘に必要なものが全て継承されるので、ただの村娘だったとしてもいきなり世界最強の戦士になってしまうですじゃ」
「戦闘以外のものは継承されないのか?」
「継承されないものは前任者の意思や記憶、前任者の才能といったものですじゃ」
「それだと戦闘経験とかは継承されてないってことだよな?そのままだと戦えないんじゃないのか?」
「体に染み込む類の記憶は残るのですじゃ。剣の振り方や回避、反射などがそうですじゃ」
「本当に戦闘に必要なもののみが継承されるんだな」
ふむふむ、戦闘に特化した人間を簡単に作り出せるのが女神の加護か。
魔王が何か悪事を働いたらその都度、女神の騎士が現れているなら平和的なんだがなぁ。
「女神の騎士が俺を切りつけたってことは何か女神の怒りを買うことをしたか?」
「いえ、女神は常日頃から我々を敵視してますのじゃ。例え、女神の寵愛を受ける人間のために動いたとしても女神は我々を滅ぼそうとしますのじゃ」
「・・・なんで?」
「わかりませんのじゃ」
まだ滅ぼされてないが、それは女神自体がそれほど強力でないのか、我々が強いからなのか、それとも女神自体が本腰を入れて滅ぼそうとしてないのか・・・
いずれにせよ、神に敵対されてるとかあまりよろしい状況じゃないよなぁ。
んー神を気取っているってことはそこそこ力を持っていると考えられるから、貸し出される防具についても聞いておいた方が良いだろうなぁ。
だって、さっきのルシアたんとの会話から察すると俺の印象最悪じゃん。
殺せるならぶっ殺してやるって気持ちがヒシヒシと感じられたもの。
隙さえあれば襲ってきそうなので対策できるものならしときたいよね。