第2話 可愛いあの子の名前をゲット!しかし、先は長いようです
さてさて、痛みが無くなって腹の傷も消えたということは、死ぬ危険が無くなったということだ。
ならばやらなければならないことをどんどん消化していこう。
というわけで、やらなければならないことをしていこう。
それは、リリたん似の女の子ルートに入り、イチャラブすることだ!
というわけでまずはリリたん似のこの子と和解することだ。
というか、早く和解しないと俺の心が死ぬ。
よし、とりあえず名前から知らないとね。
「あの~、君の名前を教えてほしいんだけど?」
その瞬間、その場にいた全ての人がポカーンとした表情を浮かべ、俺を凝視した。
あれ、俺、変なこと言った?
リリたん似の女の子がプルプル震えだしたと思ったら、顔がどんどん真っ赤に染まっていき、憤怒の表情に変わった。
「ふふっ、あはははははははは!!!!!」
リリたん似の女の子が狂ったように笑い始めた。
顔は全然笑ってないのですごく怖いです。
「貴様は私に全く関心が無かったのだな。脅威ですら無かったということか?まぁ、仕方ないか。あれほど見事な一撃が決まったにも関わらず討滅できていないのだからな・・・」
いえいえ、関心は滅茶苦茶ありますよ?
脅威ももちろん滅茶苦茶感じてます。
だって脇腹に剣ぶっ刺されてたんですもん。
でも、それ以上に君と仲良くなりたい。
「ふん、良いだろう」
リリたん似の女の子が一歩下がり剣を天に掲げた。
「我こそは女神フェミルの加護を受けし者ルシア!」
ルシアは剣を振り下ろし、剣先を俺に向けた。
「貴様を滅ぼす者の名だ。しっかり覚えておくが良い!!」
おおお、ルシアか!!
良い名だ。
さてさて、名前がわかったことだし、一番気になってることを質問してみよう。
と思ってたらいきなり斬りかかってきたよ、この子。
可愛いけど非常に物騒。
俺は紙一重で躱しつつ、冷や汗を垂らしながら質問した。
「なんでルシアたんは俺に襲い掛かってくるのかな?」
その瞬間、また場の時間が停止したかのように、全員の動きがピタリと止まり、何言ってるんだコイツという視線が俺に向けられてきた。
俺、おかしなこと言ってないはずなんだが・・・
「魔物が人々を襲い、何人もの人が死んでいる。私の故郷の人達も、幼馴染も、何人もの人が魔物に襲われて死んだ。魔王、全ては貴様が魔物を指揮し、人々を襲い、苦しめているからだ!!」
なんか全て俺のせいにされてる?
「俺が全ての元凶と?」
「そうだ!」
「つまるところ、俺が死ねばすべて解決されると?」
「そうだ!!」
うーん、ルシアが言っていることは事実なのだろうか?
正直この子感情が先行しすぎてて決めつけてるだけの様な気がしてならない。
「おい、そこの爺さん、ルシアたんが言っていることは事実か?」
声をかけた爺さんは「爺さん・・・」としょんぼりしながら呟いていた。
が、気を取り直しすまし顔に直り求める答えを返してくれた。
「はっ、いえ、そのような事実ございません。人族の間で広まっている噂話にすぎません。そもそも魔物は魔力溜まりの影響を受けた動物の体内に魔石が形成され変化してしまったものでございます。我々が産み出したものでは無いのに、我々が産み出したものとされ、それを使役していると実しやかに噂されております。我々も人族と同様に奴らに襲撃されておるというのに・・・」
ふむ、良かった。
どうやら誤解を受けているだけのようだ。
これなら誤解を解けばルシアたんルートに進められそうだな。
「魔族の言うことなど信じられるものか!!」
が、どうやら思っているほど簡単に進めそうにない。
「何を言うか!そもそも我々は人に興味など持っておらんわ!我々は能力、技術、全てにおいて人族を凌駕しておる!!何より貴様らは我々の事を勘違いしておる。を我々魔族は魔術に精通し、巧みに魔術を扱えることから魔族と名乗っておるだけだし、魔王様にしてみても貴様らは魔物を使役し人々を苦しめる魔族の王として魔王と呼んでおるようじゃが、魔術を司る王にして魔族を導く王という意味で我々は魔王様と呼んでおる。貴様らは邪悪な存在として見ておるようじゃが、根本が違うのじゃよ!!」
魔術を司る王か。
滅茶苦茶かっこ良いじゃないか!!
中世ファンタジーに魔王かぁ、王道と言えば王道だな!!
とニヤニヤしてたら血気盛んなルシアたんが斬りかかってきた。
「私たちの勘違いかどうかは魔王、貴様が死ねばわかる!!」
うん、ルシアたんマジ物騒。
とりあえず殺しとけば良いやという考えは是非とも直していただきたいものですね。
間違ってたらリセットできないんですよ!!?
とりあえず斬りかかってくるのを止めてもらわねば!
「とりあえずルシアたん!」
「馴れ馴れしい!!」
心が折れそうです。
気を取り直して提案してみる。
「どうやら魔物は共通の敵のようだし、手を取り合って共闘できるんじゃないかな?」
あわよくば君と仲良くなりたいです。
「・・・」
お、こちらをじっと眺めて様子を観察してきてる。
どうやら一考してくれているようだ。
斬りかかってこなかった分、一歩前進した気がする。
「・・・先ほどの手応えからして貴様を殺すのは無理そうね。わかったわ、国王にそのことを伝えてみるわ」
ルシアはそう言うと俺に背を向けて王の間から出ていった。
さて、俺もゆっくり考え事をしたいな、というか現状を整理して把握したい。