第1話 こんにちは異世界、痛烈で素敵な歓迎ですね
「ぬふぅっ!!?」
脇腹に激痛が奔り、慌てて周囲を見渡すと、
「えっ、リリたん!!?」
そこには俺の好きなゲームのメインヒロイン、リリたんそっくりの女性が立っていた。
俺の脇腹に剣をぶっさして・・・
ナニコレ、ドウナットルンデスカ!!?
お腹めっちゃ痛い!!
というかここどこ!!?
俺の部屋こんなに広かったっけ!!?
てか床が畳から石になってるし!!
マジでどこなんだよぉぉぉぉぉ!!!!
てかお腹痛い、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!!
「魔王様!!」
見知らぬ爺さんの悲痛な悲鳴にも似た叫び声が耳に届いた。
声がした方を見たら額にユニコーンの角の様な物が生えてて、目がちょっと赤いところを除けばナイスミドルな爺さんだ。
その爺さんが鬼気迫った表情で「魔王様!!」って連呼してる。
俺の方向いて叫んでいるから俺の後ろの方にその魔王様とやらがいるのかと思い顔を向けてみるが誰もいない。
というか首を動かしたら腹に刺さっている剣が動いて痛みがぶり返してきた。
イタイヨー・・・
リリたんがいなければ泣き叫びたいところだ。
爺さんの方へ向きなおしたが、先ほどと変わらず爺さんは悲痛な表情で俺を凝視している。
「魔王様ってひょっとして俺の事?」
うぉぉおお、喋ると滅茶苦茶痛いわー!!
と思ってたら爺さんが唖然というか愕然とした表情になったと思ったら、今にも号泣しそうな表情になって叫んでた。
「何を仰られておるのですか!!お気を確かに!!」
OK、やはり魔王様というのは俺の事のようだ。
う~ん、転生・・・?
爺さんの存在自体がまさにファンタジーだし、俺自身も腹に剣ぶっ刺さってて死ぬほど痛いけど、なんというか余裕があるというか、何故かこの程度は死なないと感じてしまっている。
普通ならとっくに死んでててもおかしくない。
いや、夢か?
けど、この腹の痛みはリアルすぎる。
うん、とりあえず魔王様とやらが俺を指していることが判明したのは良いが、腹に剣が刺さってて非常に痛い。
さらにリリたんに似ていいる理想の女の子に刺されているという点でも痛い。主に心が。
とりあえず、剣を抜いてもらう、そうしよう。
「あの・・・」
剣を抜いてくださいと言おうとしたら、「あの」という言葉に反応して、リリたん似の女の子が、ポカーンとした表情から凛々しい表情に変わったと思ったら、憎しみを籠めた視線を向けてきた。
その視線を受けたショックで口を半開きにして呆然としてたら、荒々しく腹に刺さっていた剣を引っこ抜かれた。
引っこ抜かれた瞬間がめっちゃ痛かったけど、それ以上にリリたん似の女の子に負の感情をたっぷり込められた視線をぶつけられた事の方が遥かに痛かった。
「全然効いてないみたいね?」
苦々しい表情でリリたん似の女の子が呟いた。
いえいえ、それはもう滅茶苦茶痛かったですよ。
もちろん現在進行形で。
というかさすがリリたん似の女の子、声までリリたんに似て天使だった。
そんなことを考えていたら、いつの間にか腹の痛みが殆どなくなってきていることに気付いた。
腹の方を見てみると傷が無くなっていた。
そっかぁ、夢かぁと思いたいが、さっきの痛みが夢じゃないことを物語っている。
正直、夢であってほしかった。
いや、夢じゃないということはリリたん似の女の子といちゃラブできるチャンス!?
俺はリリたん似の女の子とゴールすることを固く心に誓った。