第5回 パスタについて知りたい方へ
本題:パスタの歴史
出版社:原書房
著者:Silvano Serventi / Franciose Sabban
訳者:清水 由貴子
監修:飯塚 茂雄 / 小矢島 聡
値段:3800円+税
お薦め度 3
一言紹介
異世界に乾燥パスタがあるのは不自然じゃない!むしろ普通!
タイトルからもわかるとおり、パスタに関するアレやコレをまとめた1冊。
パスタの定義…
第3回『パンの文化史』において『パンの定義』が『焼いたパン』に狭まることになりましたが、この本において『食用パスタ』を
『「食用パスタ」とは、軟質小麦粉もしくは硬質小麦のセモリナ粉に、水またはその他の液状物質を混ぜたものに対して、家庭、職人、もしくは工場レベルで、一連の作業を加えた物を指す。作業には、材料を混ぜる、捏ねる、生地を切り分ける、成形する、乾燥させて保存するといった工程が含まれる。こうして乾燥保存したパスタは、沸騰した湯で茹でてから食べる。』(P8)
と定義している。
この定義なら『シュペッツレ』や日本の『すいとん』はパスタに属することになりますが、ジャガイモを多量に混ぜ込む『ニョッキ』、ジャガイモや緑豆などのデンプンから造られる『冷麺』などは定義から外れることになります。
しかし、パスタ法や『マカロニ類の日本農林規格』から考えるに、もしそれらを入れるとなると『麺類の歴史』になるため、その定義は当然の内容だと思う。
内容について…
舞台はヨーロッパを中心とし、しかし中国の麺料理にもきちんと解説をしている。
内容は誕生(記録に残される)について、手作りから工業生産への変化、その種類、その時代々々での扱われ方、それぞれの機械について、生パスタと乾燥パスタとの比較、と幅広く紹介してくれている。
パスタというと『イタリア軍が砂漠でパスタを茹でていた』という都市伝説を思い出す人は多いかもしれませんが、この本では一切触れられていないのは意外でした。
それからこの本には当時の小麦粉に関する具体的な数字、P48とP82には統制価格の最高価格、P79とP81には罰金についてチョロッと書かれていますが、他の物価については触れられていないため、それはそれで探す必要が出てきます。
難点…
気楽に作品を作ろうとしている場合、そこまで深く造りこむ必要はなかったりすることが多いため評価が低くなったが、麺大国を登場させたりする場合には必須となるだろう1冊。
しかしその内容はオーバーキル感は否めない。
また『パンの文化史』でも触れられていなかった『水車による製粉代(税)』は本書でも触れられていない。
(具体的な数字・割合については『世界経済史(講談社学術文庫)』(P144)などに登場しますが、こちらの文体は固いので今後紹介するかは未定です)
お薦め…
互いが互いを食いつぶすことはなく、お互いに競い合って現在にいたる生パスタと乾燥パスタの攻防戦の歴史が意外と深く、興味深かった。
そして第5章『工業生産の時代』(P132-173)では職人が機械を受け入れるまでの流れが書かれていますが、これは『現代技術チート』を持ちこんだ際に起きうる内容です。
読んでいて特に気になったのは第八章5項『やわらかいパスタから硬いパスタへ』(P260-266)のゆで加減について、当時の医学知識と合わせて紹介している。
(『パンの文化史』における『十字模様』と同様に、食事情と医学・宗教は密接していることをこの書では忘れてはいない。)
そしてこの手の本では殆どといっていいほどにお決まりですが、『パスタの歴史』でもそれらの例に漏れなく、監修者『飯塚 茂雄』と訳者『志賀 勝栄』が『パスタ』についてちょろっと語っている部分が好きです。
これを読んでいたら終始、茹であがったマカロニにチーズと香辛料たっぷりかけて食べたくなりました。
みんなでパスタを食べよう(ダイレクトマーケティング)




