第4回 パワフルな女主人や勝気なメイドを書こうとしている人へ
本題:おだまり、ローズ!~子爵夫人付きメイドの回想~
出版社:白水社
著者:Rosina Harrison
訳者:新井 雅代
監修:新井 潤美
値段:2400円+税
お薦め度 5
一言紹介
ただの少女が子爵夫人の侍女まで上り詰める御都合ストーリー(実話)
この本は実在した女性使用人、Rosina Harrioson(以下、ローズ)が普通?の少女だった頃から晩年までを振り返ってまとめた自伝です。
農村暮らし、都会での屋敷暮らし、Astor(以下、アスター)家との出会い、そして世界大戦を経て、執筆時の今をまとめており、実に破天荒な生きざまを晒しています。
「この時代で一介の使用人が主人に対して口答えなんて許されない」
そんな意見もあるかと思います。実際、この時代は階級区分けがはっきりとなされていたそうです。
しかしローズは、自分が悪くないと思ったなら引き下がらず女主人のレイディ・アスターへだって反論、反撃をします。蹴られそうになったら足を掴もうともします。
もちろんこんなやり取りがどの屋敷でも一般的に行われていたわけではありません。
それもこれも英国淑女の型には収まらないレディ・アスターと、同じく使用人の型には収まろうとしないローズだからこそ起きたある種の化学反応だと思います。
そんな2人について監修者のあとがきを引用すると
「レイディ・アスターとローズの口論や揚げ足の取り合い、互いをやりこめようとするバトルなどが、いわば典型的な淑女とメイドのあいだではまったく起こりえないとまでは言えないが、ここまでするのは、やはりこの二人だからこそだとはいえるだろう。(P361)」
という言葉が、二人の関係をよくあらわしていると思われる。
ローズがレイディ・アスターと一緒にいることで起きたトラブルは些細なトラブルから警察沙汰、時には人身事故まで「え、これ創作でしょ?」と言いたくなるほど遭遇いたします。
その生涯殆どを捧げることとなったアスター家家の使用人図もあるので、屋敷運営にどれだけの人数が必要なのかを参考とするのもいいかもしれません。
もちろん自伝ということ、それから主人に対する敬意などから、多少の美化や隠ぺいはあるでしょうが、それを補ってもなお、ライトノベルやゲームのような生き方をしたメイド、Rosina HarrisonとLady Asotorの物語についてぜひ手にとっていただきたい。