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第2回 馬車が登場してくる作品を描く方へ

本題:新版 馬車が買いたい!

出版社:白水社

著者:鹿島 茂

値段:3200円+税

お薦め度 4


一言紹介

馬車にだってTPOがあるんです



 この本はタイトルのせいでただの馬車好きの本にしか見えない、それ自体は間違いではない。

 しかし、その内容はきちんとした馬車学の解説書であり、それと同時に当時のパリの暮らしを記した解説書です。


 もちろんこの本も読んでいくと、筆者が馬車を買いたいほど好きなんだ、という思いはよく伝わってくる。


たとえば


 本来は古本を買いに行ったところが、馬車のオークションがあると知って急きょそちらへ向かおうとしてみたり、(P263-264)

皇太子のご成婚パレードを「馬車見れる貴重な機会!」と心待ちにし、ご成婚のパレードで使われる馬車の種類を断言して予測してみたり(P260-262)する。

 そんな馬車好きな筆者が馬車だけではなく、馬車を中心としたパリ市民の暮らしについて色々と解説をしていく。


 また、この筆者は探偵よろしく、小説で馬車が登場する場面から、『筆者の埋め込んだであろうメッセージ』を読み解こうとしたりする。

 そして個人用の馬車だけではなく、乗合馬車や郵便馬車などにも当然のごとく触れている。


 読んでいて個人的に目をひいたのは、P271より始まる『巻末付録:馬車の記号学』である。

 こちらでは馬車の『形態と意味』について深く掘り下げている。

馬車を無蓋(屋根無し)・有蓋(屋根有り)、2輪と4輪、2人乗りと4人乗り、御者席の有無、従者用の立ち台(座席)などに分類したうえで、それぞれに込められたメッセージがあるのだ、とまるで紋章学かのように解説している。


 難点はこれを読むと、馬車を気軽に出しにくくなってしまうことがあげられる。


 文体は柔らかくて内容は非常に読みやすい、さらに表紙裏には馬車それぞれのイラストも添えられているため「アニメとかでよくみる馬車はこれに該当するのか」と理解を深めたり、「おっ、こんな形の馬車もいいね」などと発見することもできる。

 そのため、馬車をが登場する際にそういった意図や伏線を馬車描写こっそり仕込んでみることができれば、作品をよりマニアックな仕様に仕上げることができるだろう。

 そして絵をたしなむ人にはぜひ読んでいただきたい1冊。


 注意として、馬車の部品や操縦については殆どふれられていないため、そちらを調べたい方は別の本を読む必要が生じる。


 最後に、あくまでもこの本に書かれているのはパリの馬車であり、異世界の馬車とは別物であるため、異世界を舞台にした作品に対して「この場面でこの馬車はおかしいだろ!」という突っ込みは厳禁である。


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