第12回 商人について考えたい人へ
本題:食品偽装の歴史
出版社:白水社
著者:Bee Wilson(Beatrice Wilson)
訳者:高儀 進
値段:3000円+税
お薦め度 5
一言紹介
交渉だけが商人の仕事ではない
内容
第10回で紹介した『キッチンの歴史(河出書房新社)』と同じ著者であるBee Wilsonが、欧英米を中心とした食品偽装のあんなことやこんなことを記載している。
この本に書かれている内容については序章に
「前もって、本書が扱う範囲について二つのことを言うべきだろう。第一は、薬品については触れず、飲食物についてのみ書いているということである。」(P10)
「もう一つ。私は英国とアメリカのインチキ食品について不釣り合いなほど詳しく書いていると思われるよう。」(P10)
と書かれているとおり、その範囲に関わる内容が多様な食べ物に渡って、その偽装工作そのものと国や消費者の反応なども書かれている。
また、どうして食品偽装が受け入れられていたのか、消費者たちはそれを知らなかったのか?
そういったことも説明されており、有機栽培に関する考察も面白い。
お薦め
その収録されている偽装食品について全てリストアップしたいのだが、あまりにも多すぎるため今後の自分のためのメモの感覚で大まかに書きだすと、
大きく語られているものとしては『ワイン(P70-88)』『パン(P104-114)』『牛乳(P196-211)』
細かいものだと『肉や魚、チーズ、ココナツ、オレンジ(P135-136)』『胡椒(P48)』『茶(P48-50)』『偽装卵(P392-393)』
などがあげられる。
また、偽装工作以外ではコピペで有名なマーガリン(P211-220)や『トマトケチャップ業者の戦い(P253-264)』、『栄養強化(P295-303)』『人工調味料(P311-327)』についても書かれている。
そして偽装工作(欺瞞)を暴く為に奮闘した3名の科学者『フレデリック・アークム(P12-65)』『アーサー・ヒル・ハッサル(P155-192』『ハーヴィー・ワシントン・ワイリー(P220-267)』、そして本という形で告発した『アプトン・シンクレア(P220-253)』の活動報告
など、そしてそれ以外にも様々な食品偽装に纏わることが書かれている。
難点…
食欲を失いかねない内容ということと、欲を言えば第1回で紹介した『古代製紙の歴史と技術(勉誠出版)』のような簡易年表や索引などがあれば、と思ったぐらい。
そんな即品偽装を主人公がやるもよし、やられるもよし、見破りに行くもよし。
非常に読み応えがあり、そして挿絵が適度に恐怖を駆り立ててくる、そんな良き1冊である。
兎を鳥肉というのは食品偽装に当たるのだろうか?