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えしん  作者: 心情を綴ったハンドルネームはだいたいすでにある
9/11

検証

――三階・図書室

「やっぱり雰囲気あるなあ」

「こういうところでやるのは初めてだ」

「なあ、やめにしないか」

そう切り出したのは前宮だった。

「言い出しっぺが何を言ってるんだ」

そして案外乗り気な原樫。

「うう、わかったから、順番お前先だろ。

早く行けよ」

「途中で帰ってきたらわかるからな」

何故か偉そうな円方。

そう、彼らは肝試しをしようとしていた。

順番は、円方、前宮、原樫の順。

一番上の行ける所まで行ってなにか目印をつけるそうだ。

「んじゃあ、行ってくるから五分後に出発しろよ」

円方は上に通じる階段を駆け上がっていった。

「…あれはすぐにバテるな」

「ああ」




おっす、俺円方。

もうすぐ十階か。

この肝試しの目的地は最上階。

そしてなぜここにしたか、順番を一番にしたかというと…

「おっいい感じの鎧発見」

他の人を驚かすことができるからだ。

そして、ここは一本道だから絶対通る。

というか案外鎧が重い。

「わっとっと

…あちゃー」

頭の部分を落としてしまった。

まあ、下は絨毯だし、広いからそんなに響かないだろう。




「コォン コン」

「ひぃ」

………

「気にしないでくれ」

「聞かなかったことにしておく」

思わず声を出してしまった。

俺は前宮、あだ名はセールスマンだ。

わかってる。

キャラ完全に矛盾してるって。

馴れ馴れしい態度なのに臆病て。

そもそもなんでこんなことになったんだっけ…

---二時間前

「おやぁ、原樫さぁん。

奇遇ですねえ、部屋に帰るところですかぁ」

"めんどくさいやつに会ってしまった"とでもいう顔をしている。

「おやおやぁ、まさかそのまま寝るんじゃないでしょうねぇ」

「そうだが」

「えエエエエエエエエ、この状況で?

みんなでお泊りなんてなかなかないですよぉ」

"察した、お断りします"という顔だ。

かまうものか。

「ということでトランプしよう、夜鬼もいるし」

「お断りします」

「それをお断りだーっ、さあこっちだ」

トランプは楽しかった。

大富豪では何故か夜鬼が異様に強かったが。

なんで五回連続でジョーカー二枚とも回ってくるんだ?

それ以外の時でも絶対一枚は持ってたし。

もう一枚が絶対原樫がとってるし。

というか都落ち採用してるのに一回も適用されなかったし。

まあいいや。問題はその後だ。

夜鬼が鶴の一声を発した。

「十時ぐらいだし、美容時間だからもう寝ようかな」

「あっ、ちょっとまっ」

「んじゃ」

瞬間移動で姿を消す。

「てほしかったなあ」

「どうする、三人だと少ないから解散か」

すぐさま原樫に賛成しておけばよかったんだろうとは思う。

「何勘違いしてる。まだ俺の遊ぶ計画は終了してないぜ」

「何を言ってる、お前の遊び道具は全部出尽くしたじゃないか」

「こういう夜の定番、肝試しだ」

「肝試し?」

「図書室に言って、屋上に着くまで一人で階段を登るんだ」

「図書室?はっ、あの時」


円方「図書室行くかもしれないんで(鍵を)貸してください」


「円方のやつ、そこまで考えて…」

「さあ行くぜ、鍵を持って!」

「よっしゃ行くか!」(行きたくねぇ!)

---現在

うん、そうだな。

あそこで止めるべきだった。

なんで行くかって言ったんだ。

「前宮、そろそろ五分だ」

はあああああああああああ手遅れだああああ

行きたくない、いきたくない

怖えよ、誰だよ肝試しなんて創立したやつ

帰りてえええええええ

「おっけー、行ってくる☆」

「ああ」




「前宮無理してんなー」




足が震える。

そろそろ九階か?

なにか物音とかしたら怖かったんだろうが、ずっと階段を登っているという単純作業のせいで

疲れが怖さを上回ってきた。

このままなら楽に肝試しを終われそうだ。

まあ、足がもったらの話だが。

何階まであるんだこの建物…

さて、九階。

なんかやたらと鎧多いな。

錆びたものや金色のもの。

「ひっ」

一つだけ首がないものがある。

ひたすら不気味だ。

「…何もないよな」

独り言を呟いていないと怖い。

十階か。

ここも鎧だらけだ。

ここの鎧は全部鉄のものらしい。

中には胴体と頭のデザインがまるで合ってないものもある。

なんとなく和んだ気も

「ガシャ」


人は本当に怖いと声が出ないらしい。

たった今確かめられたから確かだろう。

物音か…

いや、深く考えてはいけない。

どう考えても物音ではなく鎧がひとりでに動いた音だとかは考えては

「ガシャ」

「ァ…!」

声にならない。

腰が抜けて動かない。

手は動くので、なんとか後ろに進める。

階段だ…

手だけではどうやっても登れない。




「そろそろ五分経ったかな…?」




あれからというもの、全然音はしない。

落ち着いてきて、立てるようになり次第、すぐに登った。

なんだったんだあれは。

動くところを実際に見たわけではないが…

確かめに行きたくはないな。

さて、次の階はなにかものものしい雰囲気のアンティークが並んでいる。

リラックスも兼ねてここのものを見ていこうか。

というか原樫を待とう。偶然を装って。




俺、円方。

落ちた頭の代わりに下の階から鎧の頭を持ってくるという天才的な機転をきかせた。

これで下の階から雰囲気ばっちりだとか思ってた。

効果は抜群だったんだろうけど、前宮ってびびりだったんだな。

なんかかわいそうになったから途中でやめた。

それより本命は原樫だ。

いつもすました顔をしているが、こういう人に限って驚いたとき

本性が明らかになるとかってよくある展開だからだ。

「もそっ、もそっ」

じゅうたんを踏みしめる音が近づいてくる。

まずは音を出してみるか。

「ガチャ」

まるで驚かない。

「円方、おつかれ」

気づかれとる。

いや、かまをかけているのかもしれない。

あえて何も返事しない。

不思議そうな顔をしてそのまま登っていった。

無視か。

鎧の中も蒸し暑くなってきた。

そろそろ脱ごうか…?

「もそっ、もそっ」

おっと、次があった。

あれ、次…?

たしか二人しかいないはずじゃ






かなりの時間が経ったが、未だに落ち着かない。

五分ってこんなに長かったっけ。

「もそっ」

反射で隠れる。

足音はそのまま階段を登っていった。

…よくよく考えたらあれ原樫か。

追いかけなければ。

机の後ろから出たとき、もう一度足音が聞こえた。

後ろから。

あれ、原樫の後ろに人っていないはずじゃ…?

俺は後ろを振り向けなかった。

いや、振り向かなかったらなにも始まらない。

幽霊が怖いのとかを克服するきっかけになる。

321で振り返ろう。

3

2

1

…で振り返る。

「三、二、」






別に関係ないが、複数人が登場する話だと誰が誰か見分けるのってすごく難しいと思う。

僕、原樫誠司はそう思う。

屋上についた。

相当長かった。

数は数えていないが、二十階ぐらいか?

でも、ここにはそれに見合うだけの光景が広がっていた。

海は夜の色を映し、空と森はこの世の光と闇をかき集めたようだった。

なかなかこんな風景はみられないだろう。

月は…今日は出ていないみたいだ。

しばらく堪能したあと、あることに気づいた。

前宮に会っていない。

目印も見当たらない。

どこかですれ違ったか?

確認しに行くか。

重たい腰を上げると 誰かが喉をおさえて

息が

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