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えしん  作者: 心情を綴ったハンドルネームはだいたいすでにある
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悪食

ある少年は思案していた。

どの選択が一番いいか…

この選択に後悔はないのだろうか?

彼は自分が持っている情報全てを使って考えていた。


時は2081年10月4日11時0分0秒。

彼の名前は 原樫(はらかし) 誠司(せいじ)

14歳。

近くの学校で科学を利用した出し物を出す行事が行われると聞き、友人6人誘ってきたまではいいが、実際にどんなものが立ち並んでいるかを見ると、彼が知っている出し物ばかりであった。

彼はあまり目立ちはしないものの、いわゆる天才と呼ばれる存在だった。

ペットボトルロケットは今年自由研究で特集したばかりで、手作りモーターは小学校の時にやっていた。

パラボラ、特殊繊維、指紋検出は10歳の時に仕組みを理解しきった。

しかし、彼を幻滅させたのは期待していた有名校の出し物が弾力を利用したちゃっちいおもちゃだったことである。

しかもかなり細かく研究したことがあった。

最悪である。

当然、知っているものを二度楽しむことは難しく、彼は「こんなの初めて見た」と驚いている2人を差し置いて解散した。

もちろん彼は家に帰るつもりでいたが、帰り道で家の方向が同じ友人に引き止められ、丁度良い機会なのでゲームセンターで遊ぶことになった。

元々夕方に帰る予定であったので、予定が無く、暇だったからだ。

そうしてコンビニに着いたのはいいが、財布の中身を確認すると、

1000円札1枚。

1円玉3枚。

あとぐちゃぐちゃになったレシート4枚。

1003円。

ゲームセンターは入場すれば一時間いくらでも遊び放題なのだが、それで890円かかる。

すると昼ごはん代には消費税抜きで100円、

つまり110円のものしか買えず、3円しかお釣りが来ない。

安さに定評のあるガリンコちゃんアイスでも消費税込で66円である。

つまりこういうことだ。

一つしか買えない。

幸い、そのコンビニはパン全品100円(税抜き)キャンペーンを実施していた。

ならばパンを買うしかない…と考えたのだが種類が多い。

キャンペーンのせいで二倍増しで60種類。

昼ごはんにどのパンを買うべきか。

それで僕は深く悩んでいた。

果たしてどのパンがこの場合最適なのだろうか。

一瞬、"一旦帰ればよいのでは?"という妙案が浮かんだが、友人を待たせることを考えると良い案とは言えない。

そうだ、お金借りればいいんじゃないか?と考えた僕だったが――


友人一「お前の鞄ベコベコだな」

友人二「今日は科学の出し物だろ?作ったもの持って帰れることがあるから少し余裕を残してある。

今日は弁当と水筒と電車用の電子カードしかもってない」

友人一「途中で何か買いたくなったらどうするつもりだ…?」


――あっ、これ無理だ。

しかも後ろから「早く決めてよ」と言って急がせる。

非常に厳しい状況だ。

とりあえず、一つしか買えないのであれば量で選んだらいいだろう。

原樫は定期テストの数学の問題を解く以上に頭を回転させていた。


原樫が天才と言われる由縁はその記憶力にある。

学校で社会科の問題を解く分には残念な原樫だが、ネットで見た膨大な知識をその脳に蓄積している。


インターネット上で見たコラムにたしかこのコンビニの一番重いパンが載っていた。

5位がチョベリグパン4位がデカエッグパン3位が爆弾パン2位が豪班。そして1位が...

や...や...

やそきばパン!!

違うやきそばパンだ!!

ここのコンビニのやきそばパンだけ桁違いの大きさと重さをもっている。

どこだ焼きそばパン!!

僕は心の中でそう叫んだ。

盛り盛り焼きそばパン、100円(税抜き)300グラム。売り切れていた。

ネットの力は恐ろしいとつくづく感じた。

友人が眉をひそめている。急がねば。

最終手段だ。目をつぶって一周回る。

そして目をつぶったまま指を指して決め――


ゲームセンターに着いた。


「ずいぶん思い切ったな…」

苦笑いで友人が言う。

目をつぶる前にどこからどこにパンが並んでいるか把握すべきだった。

選んだものは弁当だったのだが、元から安かった。

昔懐かし日の丸弁当(税込100円)。

当然変えたかったのだが、友人のこれ以上待てないという強い気迫と店員の

(友人さん急いでるっぽいしここは手っ取り早く会計を済ましてあげよう)

といういらない配慮によって買ってしまった。

後悔している。

ゲームセンターの横に休憩所(飲食オーケー!)と書かれた看板のあるところで食べることにした。

すると突然友人が

「あっ」

と言った。友人の弁当に目をやると、中身がもぬけの殻だった。

どうやら中身が入っていないお弁当箱を間違えて持ってきてしまったようだ。

「やっぱ解散で…いいよね」

そう言った友人を少し殴りたい衝動に駆られたが、元々自分がお金を持っていなかったせいでこんな状況になった上に、日の丸弁当だけではゲームをする元気が出ないだろうと考えた僕は、おとなしく承諾した。


僕はぼーっと考えながら歩いていた。

今日暇だなーとか、

この弁当どうすればいいんだ…とかだ。

すると突然車のクラクションが鳴った。

左のすぐそこまで車が近づいていた。

いつのまにか道路を歩いていたようだ。

今日やったこととコンビニのパンの陳列の仕方が頭をよぎる。

(轢かれて死ぬのか...)

そう悟った。

目の前が真っ白になり、意識を失った

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