初陣 201
放課後、二人は学院近くのカフェで打ち合わせと言うことで会うことになった。
燐は全く乗り気でないが昇級がかかっているため仕方がない。
カフェの中は放課後の解放感に心を踊らせる学生で込み合っており、忙しなく騒音に包まれていた。
「これからバディを組むことになったのだけれど、正直お互いの事を私達は全く知らないわ。だからまず自己紹介をしましょう。」
そう言うなり自己紹介を始めようとした燐を彼は止めた
「いい、あんたのことは知ってる。戦士に頼らずに一人で戦うとかいってる魔術師だろう?お前は自分が思っている以上に有名だ。」
燐は少し驚いた。自分から話し出すとは思っていなかったし、以前助けたときもそんな雰囲気に見えなかったため少し燐はだじろぐ。
「そ、そうなの?じゃあ貴方の事について教えて?」
燐がそう言うと彼はゆっくり口を開いた。
「俺の名前はシュタルク・ブリッツ戦士科1年だ。」
それだけ言って彼は口を閉じた。
燐はそのまま十秒ほど待ったが、それ以上の言葉を彼が話す気配はなかった。
「え?それだけ?他にはないの?」
「それだけあれば十分だろう?」
そう言ったきり彼は、口を閉じたまま何も言わない。
その反応に燐は少し苛立った。むうと顔にしわを寄せて少し前屈みになりながら捲し立てる。
「ねぇ、それじゃあ何も分からないじゃない。どんなことができるとかどれぐらい強いかとか言ってくれないと。ねえ聞いてる?」
「うるさいな。何もないし何も話したくない。」
燐は更に苛立った。自分が乗り気でもないのに歩み寄ろうとしているのだ。それなのにこの態度は無いだろう。
「そう言わないで教えてちょうだい。これから一緒に戦うのよ?」
それでも燐は心を押さえて話した。
もともとせっかちな燐は正直怒り狂っていまいそうだったが。
「一緒に戦う必要など無いだろう。お前は一人で戦うと言っていたじゃないか。なら一人で戦えばいい。それだけだ。俺に構うな。」
堪忍袋の緒が切れるというならばそれは今だろう。。燐は怒りを押さえきることができなくなり、コップをブリッツに向かって投げ捨てる。
ブリッツは首を傾けるだけでかわしたがそれがさらに燐を苛立たせた。
「そう言えばそうだったわね。私がどうかしていたわ。私一人で戦います。貴方はどこかで逃げてればいいわよ。」
「ふん、別に構わん、俺だってお前のような女願い下げだ。所詮お前が試験を受けるためだけのバディだ。試験が終わるまでの間名前だけ貸してやる。」
ふたりはそうやって視線をぶつける。文字通り火花が散りそうなほどの気迫に両者は退かない。
ブリッツの常識外れな失礼加減に燐の怒りは絶頂を迎えていた。もはや冷静さなど欠片も残っていない。燐はありったけの怒りを一言にのせて叩きつける。
「死ね!!」
そのまま燐は店をあとにした。