出会い 107
後日私は学院長の部屋に呼び出された。
入り口の前でシュンとすれ違った事から先日の事件に関することだろうと予想がついた。
シュンは燐と目を合わせるとすぐさま目をそらし、小さく舌打ちして去っていく。
彼を打ち崩した燐にとっても彼と語ることは既になにも残っていない。
学院長室に入ると事件の被害者の少年と学院長、秘書の3人が待っていた。
「こんにちは燐さん。予想はついているでしょうけど、先日の事件について聞きたいのです。話してください。」
ニコニコとはにかんでいる学院長は燐にとってはある種の天敵とも言える。
腹の底が見えない彼女の振る舞いは燐の警戒心を一層駆り立てる。
「私に聞いても何も新しい情報なんて無いですよ。彼が殴られているのを見て、それが気に入らなかった私が制止に入ったのですが、シュンが聞かなかったので力ずくで止めただけです。」
そうですかと学院長は言っただけであっさりこの話は終わったように感じた。
「ところで燐さん、パートナーは決まりましたか?見たところバディ登録の痕跡が学院のシステムにはありませんが…」
燐の言葉を聞くなり学院長はこっちが本題とばかりに私を見据える。やはり学院長はニコニコとはにかんでいる。
「何度も言ったはずです私は一人で戦うと。」
やれやれといった感じで学院長は私の話を聞いていた。
「それじゃあバディは組んでいないのね。それでは昇級試験を受けさせることはできません。」
「だから私は一人で戦うと何度も言っているではありませんか!」
どちらもこの一点張りだ。これでは話は進まない。そう思っていた時、学院長は呆れたといった感じで口を開く。
「それではこちらで選んだ戦士とバディを強制的に組ませます。ブリッツ君貴方はこれから燐さんとバディを組みなさい。」
そう言われて燐はそこに突っ立っていたブリッツをみた。
学院長の決定には驚愕した。
私がバディを組むですって?しかもこの虐められっ子と?
「学院長それは…」
「燐さん」
私の声を遮ったのは学院長の秘書だった。
「学院の規則では昇級試験はバディで受験するものと決まっているのです。いくら貴女が駄々をこねてもルールはルールです。守れないなら貴方の昇級は認めません。あなた一人を特別扱いしてくれるほど世界は甘くはないのですよ。」
燐にはもう押し黙るしかなかった。
そしてその沈黙を学院長は承諾と読み取ったようだ。
「それではそのように登録しておきます。試験は三日後。それは貴女も知っていますね?始めて組むバディなのですから打ち合わせは入念に行っておくといいですよ。」
燐はやりきれない思いでいっぱいだった。自分一人で戦うと、強くなると決めていたのに。こんなことで戦士とともに戦うことになるなんて。